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過ぎいく夏
そして、お持ち帰りしてください
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待ち合わせにしている梅木町駅の改札口は一つだけ。乗り降りの人も多いし、私と夏川先輩のように改札口で待ち合わせている人も多いので、待ち合わせの相手を探すのも一苦労する。
これが平日でなかっただけ幸運。平日のこの時間帯は他社線への乗換駅でもある梅木町駅は乗り換えで利用する人の数は多い。乗り換えで利用する他校の生徒の中には制服のまま、港側(ベイエリア)の遊園地に行く姿もある。
「ねえねえ。あの人、かっこ良くない?」
「うそー! かっこいい!」
「ほんとだ!」
女子高生らしきグループの騒ぐ声がうるさくて、そちらを見ると、すぐには見つからないと思っていた夏川先輩の姿があった。
うちの学校の有名人である夏川先輩にこんな反応をするので、彼女たちが他校の生徒だということがわかる。
そのグループ以外にも、別のグループやOLっぽい女性も夏川先輩のことを見ている。王子様は学外でも大人気だ。
当の本人は今日も一度、家に帰ったようだ。私服のオフホワイトのサマーセーターと薄茶のズボン姿で服装から見てもいつも通り爽やかそうに見える。
ただ、部活中のように笑顔はない。
かっこいいんだけど、我関せずといった風で、親しみは感じない。
黙ってたら、本当にかっこいいんだけど、中身がわかっていると溜め息しか出なくなる。
嫌だなあ。
話しかけたくないなあ。
「誰かわかる?」
「う~ん、知らないなあ」
「制服着てないから、どこのガッコかもわからないなあ」
他校の女子高生グループの反応を見ただけでも、声をかけたくなくなる。
回れ右をして、歩いて来た道を戻って家に帰りたい。
校内だけでも嫉妬が怖いのに、校外でも敵ができそう。
夏川先輩の彼女はよくこんな状態を我慢できたなあ。
と思って、思い出せる夏川先輩の彼女は彼女持ちに平気で手を出す初代浮気女とあの小動物系ビッチの二人。
・・・あの二人なら大丈夫だわ。
アレと同じようなDQN女としか付き合っていなかったとしたら、歴代の夏川先輩の彼女にとって校内だろうが、校外だろうが、女の嫉妬なんてどこ吹く風だったんだろうなと頷けてしまう。
だって、あの二人だよ?
自分に自信満々で、他人のことなんか一つも気に留めてない人たちだよ?
自分に都合が悪いことなら威嚇攻撃しまくって、追い払うのが普通だと思っている自己中だよ?
無理だ。
絶対、無理だ。
私には真似ができない。
「一人なのかな?」
「誰か待ってるんじゃない?」
「どうする? 誰か待っているなら、声かけられないよね?」
「誰か待ってても、声かけたっていいじゃん」
お願いです、話しかけてあげてください。
そして、お持ち帰りしてください。
遊園地に連れて行ってくれても構いません。
ここから、連れ出してください。
そうしてくれたら、私は家に帰っても娘婿に欲しがってるお母さんに叱られずにすみます。
他校の女子高生グループが夏川先輩に声をかけるかどうか様子見をしていたら、夏川先輩と目が合った。
「実花ちゃん」
笑顔を向けられて近寄って来られると、思わず一歩下がってしまう。
「来てくれたんだね。ありがとう」
「来たくなかったけど、お母さんが・・・」
夏川先輩を見ていた女の子たちの視線が突き刺さって来る。
「なんで、あんな子が」って聞こえてるから。聞こえるような声で言わないで。
ただでさえ少ない精神力がなくなる。
「そうだ! あそこの子たちが夏川先輩と話したそうにしてましたよ!」
「それで?」
あんなにキャーキャー言われて、熱い目線を向けられているのに夏川先輩は気にも留めていないみたいだ。
「それでって・・・」
「じゃあ、行こうか。話しかけられる前にさっさと行こう」
夏川先輩は私の答えも聞かずに歩き出す。
夏川先輩の家への道順は一度来たことがあっても、それはあいつに連れられてのことだったから気にしていなかったし、夏川先輩が送ってくれた帰りも暗くなっていたから、覚えていない。
改めて梅木町駅から向かう方向は雑誌のデートコースに載せられている海側じゃなくて、学校と同じ山側だった。この山側は早くから開港された影響で外国人居留地として有名で、商人の住居や大使館だった異人館と呼ばれる洋館が今も残っていて、観光客向けに公開されている。
港側には開港当初、外国との取引用に立てられた建物が今も残っていて、異人館同様、文化財に指定されている場所と客室から夜の海を楽しめるスタイリッシュなホテル、日本で一番センスのいいショッピングセンター、それにコンパクトな遊園地などがあって、老若男女が楽しめる場所になっている。
梅木町駅の周辺はそんな異国情緒を残した地域だ。
私の最寄り駅には海側に中華街(一部、南米やら地中海の国の店もあるのでラテン系含む移住者の街)、山側は古くから繁華街として賑わう地域、それに小高い山には無料の市立動物園がある。
スタジアムなどのスポーツ施設はあっても、それ以外の施設やプールはないけど、それも何駅か先にあるので、スポーツファンでもなければ水泳部でもない私にはなくてもいい。
遊園地はあいつと一緒に行ったけど、物足りないと思ったら、都心にも30分ちょっとで出られるし、百貨店がないのを除けば、この辺りは何もかも揃っている。その百貨店も2駅ほど先の大きな駅に何軒もあるし、この辺りは本当に恵まれている。
これが平日でなかっただけ幸運。平日のこの時間帯は他社線への乗換駅でもある梅木町駅は乗り換えで利用する人の数は多い。乗り換えで利用する他校の生徒の中には制服のまま、港側(ベイエリア)の遊園地に行く姿もある。
「ねえねえ。あの人、かっこ良くない?」
「うそー! かっこいい!」
「ほんとだ!」
女子高生らしきグループの騒ぐ声がうるさくて、そちらを見ると、すぐには見つからないと思っていた夏川先輩の姿があった。
うちの学校の有名人である夏川先輩にこんな反応をするので、彼女たちが他校の生徒だということがわかる。
そのグループ以外にも、別のグループやOLっぽい女性も夏川先輩のことを見ている。王子様は学外でも大人気だ。
当の本人は今日も一度、家に帰ったようだ。私服のオフホワイトのサマーセーターと薄茶のズボン姿で服装から見てもいつも通り爽やかそうに見える。
ただ、部活中のように笑顔はない。
かっこいいんだけど、我関せずといった風で、親しみは感じない。
黙ってたら、本当にかっこいいんだけど、中身がわかっていると溜め息しか出なくなる。
嫌だなあ。
話しかけたくないなあ。
「誰かわかる?」
「う~ん、知らないなあ」
「制服着てないから、どこのガッコかもわからないなあ」
他校の女子高生グループの反応を見ただけでも、声をかけたくなくなる。
回れ右をして、歩いて来た道を戻って家に帰りたい。
校内だけでも嫉妬が怖いのに、校外でも敵ができそう。
夏川先輩の彼女はよくこんな状態を我慢できたなあ。
と思って、思い出せる夏川先輩の彼女は彼女持ちに平気で手を出す初代浮気女とあの小動物系ビッチの二人。
・・・あの二人なら大丈夫だわ。
アレと同じようなDQN女としか付き合っていなかったとしたら、歴代の夏川先輩の彼女にとって校内だろうが、校外だろうが、女の嫉妬なんてどこ吹く風だったんだろうなと頷けてしまう。
だって、あの二人だよ?
自分に自信満々で、他人のことなんか一つも気に留めてない人たちだよ?
自分に都合が悪いことなら威嚇攻撃しまくって、追い払うのが普通だと思っている自己中だよ?
無理だ。
絶対、無理だ。
私には真似ができない。
「一人なのかな?」
「誰か待ってるんじゃない?」
「どうする? 誰か待っているなら、声かけられないよね?」
「誰か待ってても、声かけたっていいじゃん」
お願いです、話しかけてあげてください。
そして、お持ち帰りしてください。
遊園地に連れて行ってくれても構いません。
ここから、連れ出してください。
そうしてくれたら、私は家に帰っても娘婿に欲しがってるお母さんに叱られずにすみます。
他校の女子高生グループが夏川先輩に声をかけるかどうか様子見をしていたら、夏川先輩と目が合った。
「実花ちゃん」
笑顔を向けられて近寄って来られると、思わず一歩下がってしまう。
「来てくれたんだね。ありがとう」
「来たくなかったけど、お母さんが・・・」
夏川先輩を見ていた女の子たちの視線が突き刺さって来る。
「なんで、あんな子が」って聞こえてるから。聞こえるような声で言わないで。
ただでさえ少ない精神力がなくなる。
「そうだ! あそこの子たちが夏川先輩と話したそうにしてましたよ!」
「それで?」
あんなにキャーキャー言われて、熱い目線を向けられているのに夏川先輩は気にも留めていないみたいだ。
「それでって・・・」
「じゃあ、行こうか。話しかけられる前にさっさと行こう」
夏川先輩は私の答えも聞かずに歩き出す。
夏川先輩の家への道順は一度来たことがあっても、それはあいつに連れられてのことだったから気にしていなかったし、夏川先輩が送ってくれた帰りも暗くなっていたから、覚えていない。
改めて梅木町駅から向かう方向は雑誌のデートコースに載せられている海側じゃなくて、学校と同じ山側だった。この山側は早くから開港された影響で外国人居留地として有名で、商人の住居や大使館だった異人館と呼ばれる洋館が今も残っていて、観光客向けに公開されている。
港側には開港当初、外国との取引用に立てられた建物が今も残っていて、異人館同様、文化財に指定されている場所と客室から夜の海を楽しめるスタイリッシュなホテル、日本で一番センスのいいショッピングセンター、それにコンパクトな遊園地などがあって、老若男女が楽しめる場所になっている。
梅木町駅の周辺はそんな異国情緒を残した地域だ。
私の最寄り駅には海側に中華街(一部、南米やら地中海の国の店もあるのでラテン系含む移住者の街)、山側は古くから繁華街として賑わう地域、それに小高い山には無料の市立動物園がある。
スタジアムなどのスポーツ施設はあっても、それ以外の施設やプールはないけど、それも何駅か先にあるので、スポーツファンでもなければ水泳部でもない私にはなくてもいい。
遊園地はあいつと一緒に行ったけど、物足りないと思ったら、都心にも30分ちょっとで出られるし、百貨店がないのを除けば、この辺りは何もかも揃っている。その百貨店も2駅ほど先の大きな駅に何軒もあるし、この辺りは本当に恵まれている。
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