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屋敷と馬車
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どこにも出かけたくない。今すぐ、部屋に戻ってベッドの中で眠っていたい。
けれど、折角、ブライアンが領地経営勉強会をしてくれると言ってくれたのだ。この機会を見過ごすわけにはいかない。
領地経営を学びたかったのは、お姉様と同じように殿方の話題についていく為だ。
お母様の心の内を知って、それでもお姉様と同じようにしていればお母様やお父様に愛される、フェルナンドともっと一緒にいられる、などとは思わない。
何の為に勉強するのか?
そんなこと、今はどうでもいい。
使用人たちにとって私はダヴェンフィールド家の娘だとは思われていない。
ただ、それだけのことだった。
元々、ダヴェンフィールド家に私の居場所はなったかもしれない。
それだけのことだ。
今すぐ、ここから離れたい。
それだけだった。
口実にできるミラー夫人のお茶会の招待が有難かった。ブライアンがミラー夫人を通じて送ってくれた招待状のおかげで、用意してもらった馬車ですぐに離れられる。
ミラー家へは馬車で行かなければいけない。上流階級の王都での移動手段は馬車だ。殿方は馬に乗る場合もあるけど、淑女は道など歩かないので知らない。馬車に乗っている時ですら、投石される危険があるので窓から外を見ることもない。隣近所などのごく近い家なら、今回のブライアンの招待のようにごく親しい仲での、非公式な集まりにだけ徒歩で行くこともできる。
むしろ、王都内の公園に徒歩で出かけただけでも評判を損なう。侍女を連れていなければ淑女としての体面などない。
そういえば、連れていく侍女を選んでなかった。
今まで一度も一人で社交に出かけたことがなかったから、外出に侍女が必要だってことも忘れていた。
今からローズやミナに声をかけるのも億劫で、私は若い執事が用意した辻馬車に乗り込んだ。
実の親や住んでいる家から逃げ出して向かう先が婚約者の家だということに笑いがこみあげてくる。
もっといえば、婚約者本人ではなく、婚約者の弟であるブライアンの招待で、だ。
口実の招待状を書いてくださったミラー夫人は婚約者の母親で、婚約しているフェルナンドと私を入れ替えたほうがいいくらい、我が家と婚約者の家は違う。
スペアにすらならない邪魔者だと言ったお母様と、社交の場でフェルナンドや家族に置き去りにされている私を気遣ってくれるミラー夫人。
私とフェルナンドは生まれた家を間違えたんだと思う。私がミラー家に生まれ、フェルナンドがダヴェンフィールド家に生まれたら、それぞれの家族とぴったり合う。
ダヴェンフィールド家の外はとても優しい。
フェルナンドに煮え湯を飲まされたクリフトン卿ですら、私に助言してくれるほど優しい。
運が良いことに辻馬車の馭者は裕福な家の屋敷に出入りする方法を知っていた。
人が集まっている王都では、屋敷も領地の館の十分の一以下の広さ。だけど、そこは上流階級。お金に余裕のある者は門の内側に馬車回しがある屋敷に住んでいる。
我が家の紋章を付けていない辻馬車は馭者がダヴェンフィールド家の名を告げて、門番に通してもらう必要がある。
門番も今日の訪問客の家名と紋章を知らされているので、すぐに通してくれた。
招待状様の効力である。
「お嬢様、もうすぐ着きますぜ」
馬車が止まり、馭者が馭者台から飛び降りて扉を開けてくれる。
目の前に広がる屋敷はただの屋敷のはずなのにダヴェンフィールド家家とは違って、温かな印象をしていた。
けれど、折角、ブライアンが領地経営勉強会をしてくれると言ってくれたのだ。この機会を見過ごすわけにはいかない。
領地経営を学びたかったのは、お姉様と同じように殿方の話題についていく為だ。
お母様の心の内を知って、それでもお姉様と同じようにしていればお母様やお父様に愛される、フェルナンドともっと一緒にいられる、などとは思わない。
何の為に勉強するのか?
そんなこと、今はどうでもいい。
使用人たちにとって私はダヴェンフィールド家の娘だとは思われていない。
ただ、それだけのことだった。
元々、ダヴェンフィールド家に私の居場所はなったかもしれない。
それだけのことだ。
今すぐ、ここから離れたい。
それだけだった。
口実にできるミラー夫人のお茶会の招待が有難かった。ブライアンがミラー夫人を通じて送ってくれた招待状のおかげで、用意してもらった馬車ですぐに離れられる。
ミラー家へは馬車で行かなければいけない。上流階級の王都での移動手段は馬車だ。殿方は馬に乗る場合もあるけど、淑女は道など歩かないので知らない。馬車に乗っている時ですら、投石される危険があるので窓から外を見ることもない。隣近所などのごく近い家なら、今回のブライアンの招待のようにごく親しい仲での、非公式な集まりにだけ徒歩で行くこともできる。
むしろ、王都内の公園に徒歩で出かけただけでも評判を損なう。侍女を連れていなければ淑女としての体面などない。
そういえば、連れていく侍女を選んでなかった。
今まで一度も一人で社交に出かけたことがなかったから、外出に侍女が必要だってことも忘れていた。
今からローズやミナに声をかけるのも億劫で、私は若い執事が用意した辻馬車に乗り込んだ。
実の親や住んでいる家から逃げ出して向かう先が婚約者の家だということに笑いがこみあげてくる。
もっといえば、婚約者本人ではなく、婚約者の弟であるブライアンの招待で、だ。
口実の招待状を書いてくださったミラー夫人は婚約者の母親で、婚約しているフェルナンドと私を入れ替えたほうがいいくらい、我が家と婚約者の家は違う。
スペアにすらならない邪魔者だと言ったお母様と、社交の場でフェルナンドや家族に置き去りにされている私を気遣ってくれるミラー夫人。
私とフェルナンドは生まれた家を間違えたんだと思う。私がミラー家に生まれ、フェルナンドがダヴェンフィールド家に生まれたら、それぞれの家族とぴったり合う。
ダヴェンフィールド家の外はとても優しい。
フェルナンドに煮え湯を飲まされたクリフトン卿ですら、私に助言してくれるほど優しい。
運が良いことに辻馬車の馭者は裕福な家の屋敷に出入りする方法を知っていた。
人が集まっている王都では、屋敷も領地の館の十分の一以下の広さ。だけど、そこは上流階級。お金に余裕のある者は門の内側に馬車回しがある屋敷に住んでいる。
我が家の紋章を付けていない辻馬車は馭者がダヴェンフィールド家の名を告げて、門番に通してもらう必要がある。
門番も今日の訪問客の家名と紋章を知らされているので、すぐに通してくれた。
招待状様の効力である。
「お嬢様、もうすぐ着きますぜ」
馬車が止まり、馭者が馭者台から飛び降りて扉を開けてくれる。
目の前に広がる屋敷はただの屋敷のはずなのにダヴェンフィールド家家とは違って、温かな印象をしていた。
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