幸せを見付けたので、お姉様に婚約者を差し上げます。

プラネットプラント

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気まずい時間

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 わたしが呆気にとられている間に、ブライアンは手を振って「じゃあな」とばかりに部屋を出て行った。
 ドアの閉まる音で、わたしはクリフトン卿が部屋にいることを思い出した。
 ブルーグレーの瞳と目が合う。
 こっちを見ているクリフトン卿は、冷めているだろうお茶のカップを前に座っている。お茶を楽しんでいたというのは、気を遣ってくれて言っただけ?

 二人きりで、ドアまで閉まった状態。密室だ。親族でもない殿方と密室にいることは、好ましくない。
 好ましくないけど、今の状況でそれを言い出すのもどうかと思う。
 クリフトン卿の額の縦皺。
 待たせて機嫌が良くないクリフトン卿に密室のことを指摘するなんて、自ら怒られに行くようなものだ。
 元々、ブライアンが同席するはずで、今は少し席を外している。守るべき評判も、婚約者の家の中だし、多少の時間なので、大丈夫じゃないかと思う。そうじゃないと、婚約者の弟であるブライアンの面目が潰れる。

 評判は気にしなくていいけど、気まずい。
 とっても、気まずい。
 不機嫌なクリフトン卿と何を話せばいいのか。

 待たせておいて、共通の話題も思いつかない。
 気まずい時間しかない。

 ブライアンとの会話を思い出してみよう。
 クリフトン卿はブライアンとじゃれあって、それでお茶の話題になって・・・。
 いや、その前にわたしに挨拶をして・・・。
 あ。クリフトン卿に挨拶返してない。
 話題どころか、挨拶を返していなかった事実を思い出す。
 どうしよう?!

「ご、ごきげんよう。クリフトン卿。お待たせして、ごめんなさい」

 とりあえず、挨拶を返さなかった非礼を詫びる。

「構わない。招待しても来ることは期待するな、とブライアンが言っていたんだ。たかが数分ぐらいは気にしなくていい」
「期待するな?」

 招待しても来ることは期待するな、とは、どういうことなのか? わたしはオウム返しに聞いた。

「何度、君を招待しても、ミラー家に来たのはダヴェンフィールド家夫人と君の姉ばかりだったそうじゃないか。そのせいで、ミラー家は君を招待することは止めたそうだ」
「・・・え?!」

 聞こえているのに、クリフトン卿の言葉がうまく理解できない。聞こえた言葉を何度か頭の中で再現して、やっと理解できた。

 ミラー家はわたしを何度も招待していた?
 でも、来たのはお母様とお姉様だけ?
 わたしは来てない?

「嘘?!」

 ミラー夫人はわたしなんか呼んでない。
 わたしは婚約者の家にすら招待されなくて、お母様とお姉様だけが出かけていた。

「嘘ではない。ブライアンはそれがあるから、お茶会に呼んでも、君は来ないんじゃないかと言っていた。以前、ミラー夫人と2人だけのお茶会に招待しても、君は来なかったそうだ」
「そんな・・・?!」

 2人だけのお茶会。ミラー夫人はわたしに招待状を出していた・・・。
 わたしはお母様とお姉様に嘘を吐かれていた?

「でも、・・・そんなの知らない」

 なんで?
 なんで、わたしへの招待を隠したのか?
 お姉様はダヴェンフィールド家の次期当主で。お母様は現当主夫人で。
 なんで、ミラー家に嫁ぐわたしにミラー家からの招待を隠して、自分たちだけ行っていたの?!
 隠す理由がわからない。

 わたしに招待状が来ることなんて、少なかった。
 社交界に出るようになってできたお友達からの招待状くらいだ。
 今回のミラー家の招待状は異例中の異例。初めて届いた招待状だった。
 ブライアンから領地経営の勉強をさせてくれるって言われて、招待状が届いただけで喜んでしまって、口実にしたお茶会の主旨すら頭から抜け落ちてしまった。

 結婚の準備。

 当事者であるわたし抜きでは始まらないお茶会で、初めてミラー家の招待状がわたしの手に渡った。

 わたしに紹介状が届かないようにしたのは誰?
 お母様?
 婚家が嫁の教育をすることが当たり前だと考えていることを知らなかった今朝までなら、お母様だと思った。けれど、お母様ではない。
 お母様は不出来な娘が何とかなる機会を潰したりはしないだろう。

 筆頭執事?
 わたしが教養不足になって、筆頭執事に何の利益がある?

 それとも、別の誰か?
 侍女? 従僕? メイド?
 嫌がらせや仕事の鬱憤晴らしに?

 一体、誰が・・・?
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