魔王と勇者の珍道中

藤野 朔夜

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朝は眩しい!

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 眩しい!
 日本の遮光カーテンはすごい物だったと、今気づく。
 朝日って、眩しいんだな。
 っていうか、かなり健康的じゃない?暗くなったら寝て、朝日で目覚める!
 だがしかし、俺は寝ぼけ眼でボーっとしている。うん、すがすがしい朝にふさわしくはないと、わかってるんだけど。
 科学の発達した世界で生きていたら、朝日と共に起きるのは、とても辛い。
 だが、眩しくて、寝てもいられない。つらい。
「おはよう、ワタル。ほら、これで顔を拭いてごらん」
 はう、イシュさんの笑顔は、朝日より眩しい!
 渡されたタオルは、水で濡らしてあって、顔を拭くとスッキリした。あー、お風呂が恋しい。
 王宮に居た時も、お風呂なんて入れなかったけど。嫌ーな顔した魔法使いが、清浄って唱えてくれたから、一応は綺麗にはなってたけど。
 嫌な顔するくらいなら、お風呂を貸してくれたら良いのに。とか思ってたなぁ。まぁ、体力作りで走らされて、剣に振り回されてた俺が、しっかりお風呂に入れたかどうかは別として。
 汗とかすっ転んで、ボロボロに汚れた服を次の日に着てたのも、嫌な顔された。いや、だからさ、そんな顔するなら、服ぐらい貸せよ。とか思いながら、重い身体でなんとか洗濯だけはしてた。次の日に乾くか不安だったけど。多少湿ってたって良いやって、着てたけど。
 そういや、水は渡されてたんだよな。もしかして、魔法でお湯を作るのが普通とか?知らんけど。タオルさえなかったから、シャツで身体拭いたよ、俺は。
「ワタル?」
「イシュさん、俺ねー、初めて朝日が眩しいって知ったー」
 まだ呆けてる頭は、口の回転も遅くする。
「そうだね。冒険者や旅商人でもなければ、野宿なんかしないからねぇ。ワタル、スッキリする魔法を覚えよう。身体をスッキリさせたら、目が覚めるかもしれないよ」
「んー、それって、清浄ってやつー?」
 俺は特に意識していなかったけれど。
 清浄って俺が言った瞬間、身体にフワリと魔力が巡った。
「うん?あれ?」
「おや?」
 タオルを取り落とした俺と、目を見開いたイシュさんは、数秒間そのまま停止した。
「うん。なるほどね。簡単な生活魔法は、どういうものかを理解していたら、ワタルは無意識でも発動出来るのかもね。驚いたなぁ」
 先に停止から立ち直ったのは、イシュさんで。
「王宮の魔法使いが、嫌な顔しながらやってくれて、体験してたからかな」
 取り落としたタオルを拾いつつ、俺は何とか返事をした。
 身体は拭けたけど、頭はどうしようもなくて。だから毎日魔法使いは嫌な顔しながら清浄してくれてたわけで。
「そうかぁ。本当は、お風呂に入れれば、一番だけどね。身体も綺麗になるし、疲れも取れる」
「あ、こっちにも、お風呂ってあるんだ!」
 わーい。なら、いつかは入れる様になるかもしれない。まだ王都に近い位置だから、宿は取れないけど。田舎の方に行ければ、きっと入れる!
「ワタルはお風呂が好きなのかな?」
 俺の食いつきがすごかったからか、イシュさんはまたびっくりしてる。
 日本人はお風呂大好き、温泉大好きなんだよ。
「俺の居たとこはね。毎日お風呂に入るのが習慣だったんだ。そんで、温泉っていうのも有って、色々な効能の有るお湯が、湧いてて。んと、他の国ではお風呂文化ってそんなに無かったりするけど、俺の国はすっごいお風呂好き文化だったんだよ」
 俺の下手くそな説明を、イシュさんはニコニコと聞いてくれる。
 俺の心は見てもいない、この世界のお風呂に向かってる。フワフワしてるよ、俺。
「ワタルはお風呂好きかぁ。なら頑張って、お風呂入れる田舎まで、歩こうね。公衆浴場とか、うまくいけば部屋にお風呂付の宿が取れるかもしれないよ」
 公衆浴場っていうのは、銭湯みたいなのだろうか。
 ワクワクしてきてしまう。
「本当は、転送魔法でワタルを送れたら良いのだけれど。どうしても、転送魔法みたいな大きな魔法は、魔法陣を使うからね。俺はそれを消す為に、こっち側に残らなきゃいけないから……。ワタルが一人でも大丈夫って言うなら、別なんだけれど」
「イシュさんと一緒が良い!俺の歩くスピード遅いかもしんないけど。一人とか、怖いから。あ、精霊は居てくれるかもしれないけど。やっぱり、イシュさんと一緒が良い」
 もはや俺は、鳥の雛の気分だ。
 あれだよ、最初に見たものを、親だと思うって、あれ。
 まぁ、この世界で一番最初に目にしたのは、あの王宮の人たちだけど。
 この世界で最初に俺に優しくしてくれたのは、イシュさんだから。イシュさんにくっついて回ってしまっても、仕方ないと思うんだ。
 イシュさんが面倒だって言うなら、頑張って独り立ちするけど。今はまだ無理です!
 威張って言うことでもないけどね。
「ふふ。大丈夫だよ。今のワタルをそのままどこかに送るなんて、しないからね。心配しないで」
 良かったー。
 でも今の俺ってことは、俺が一人でも大丈夫になったら、イシュさんと別れることになるのかなぁ。
 待って待って。俺はほら、元の世界に帰るのが目標だから。いつかはさよならするんだよ。
 あーでも、昨日の夜も思ったけど、俺って帰りたいって、考えて無いんだよなぁ。
 なんでだろう。あんなに帰りたかったはずなのに。
 親が心配してるかも、とかいっつも考えてたはずなのに。
 友人は探してくれてるだろうか、とかも考えてたのに。
 今はどうだろう?
 イシュさんという保護者が出来て、安心してるからなのか。この世界でも生きていけるとかって、思ってるからかな。
 でもいつかさよならするなら、それは俺が元の世界に戻る時が良い。
 なんて、都合良いこと考えたりしてて。
 イシュさんに面倒かけてるって、自覚は有るんだけど。
 本当は、ずっと離れたく無いんだ。
 元の世界に帰れなくても、独り立ちなんてしたく無い。帰れなかったら、ずっとイシュさんと居たい。駄目かな。こんなに依存してたら。
 なんでここまで依存してるのか、よくわからないけど。やっぱり一番に親切にしてくれた人だからかなぁ。あ、人じゃないんだ。
 イシュさん魔王だった。忘れるけど。だって、優しいんだよ。俺の知識に有る魔王は、悪の王様だから、悪い奴だった。
 でも、目の前に居るイシュさんは、悪の王様どころか、とっても優しい人なんだ。
 人間の俺にも優しいイシュさんは、現代日本で悪の権化の様に書かれる魔王とは違うんだ。
 人間を滅ぼそうなんてしていないし、世界征服をしようとしてるわけでもない。
 むしろ、俺をこの世界に呼んだ王様の方が、悪の王様だよなぁ。
 呼んどいて、そのままポーイってされた俺は、いつまでも根に持ちます。恨んで憎んで、俺がこの世界を壊してた可能性が有った、っていつかしらしめてやりたい。
 そんな時は来ないと思うけど。
 イシュさんに救われた俺は、恨みや憎しみを霧散させたから。
「ワタルの結界は、綺麗にまだ残っているね」
 フッと、意識がイシュさんに戻る。
 俺最近よくずーっと考え込んでるな。前はこんな考える人間じゃなかったのに。
「あ、本当だ。ありがとう。精霊の皆。ええーっと、結界はまだ張っておいた方が良いの?」
「そうだねぇ、朝ご飯食べ終わったら、解いてもらおうか」
「イシュさんー、俺は解いてもらう方法を知りません」
 そうなんだよね。張れたのは、本当に嬉しい。朝までしっかり残ってるのも嬉しい。
 でも、解き方は?考えて無かったよ。
「ふふ、精霊にありがとう、もう良いよ。って言うだけだよ」
 おー、なるほど。精霊に頼んだ結界だから、精霊に言葉で教えたら良いんだ。
 やっぱ、今の俺には精霊魔法が一番なのかも?
 意思を持ってる精霊だから、言葉が交わせる。だから、俺の魔法は成り立つ。
 うん。まだまだ精霊に頼っちゃうだろうけど、お願いします。心の中で、しっかりお願いしたら、周りに居た精霊が答える様にくるくると回ってくれた。
 朝日が眩しい中での精霊のダンスは、すっごいキラキラ輝いてて、綺麗だった。
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