魔王と勇者の珍道中

藤野 朔夜

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調子に乗った後、更に乗る

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「ふふ。ワタルが可愛すぎる」
 だからいけないとか、後に付きそうなことを、俺の上に居たままでイシュさんは言う。
「俺が可愛いとか言うの、イシュさんだけだから」
「それで良いよ。誰かにワタルが取られたなんて、俺は本当に死にたくなるから」
 そう簡単に死ぬような魔族じゃないと思うんだけど。
 というか、俺は誰にも取られないだろう。俺なんかを好きだとか言うのって、イシュさんくらいだろ。本当に。
「で、いつまでこの体勢なんでしょうか?」
 恐る恐るだよ、もう。何をイシュさんが言い出すのか、わからないから。
「なんで敬語なんだい?ふふ。俺は初めて、誰かに触れられたんだよ?そんなに簡単にはい、終わりってならないよ」
 何ですと?!
 いや、あの……。
「え?」
「うん?」
「終わらない、の?っていうか、初めて?」
 は?嘘だろ?
「言ったでしょ。今まで俺の魔力に耐えられそうな人が、居なかったんだって。どうしても、こういう時の魔力は抑えられないからね。お飾りの王妃でも、どうでも良かったんだけれど。どうせ触れられないし。けれど、ね。ワタルは大丈夫だから。魔族は欲深いんだよ。俺は特にね」
 イシュさんの全身が、俺が欲しいと言う様に。
 触れ合ってる素肌が、熱を持つ。
「待って、これ以上は、あの、その……」
「駄目?」
 なんだか可愛く言ってるけど、イシュさんの下半身は可愛くない!
 っていうか、一回出したのに、全然萎えて無いし!
「俺はね、誰かを好きになっても、意味が無いんだって思ったから、感情全てを捨ててたんだよ。それがね、ワタルに会った途端、俺の感情は出て来たんだ。誰にもワタルを渡したく無い。俺のモノだって、言って回りたい」
 触れられ無い人相手に、恋愛してもイシュさんが辛いだけだ。
 だから、無意識に感情を封印したんだ。
 だから、今まで誰にも触れて来なかったし、こんな風に欲しいなんて、思わなかったんだろうな。
 だからこそ、さっきの暴走が有ったんだろうし。
 触れられる相手、というだけで、イシュさんには貴重なんだろう。
 その俺が、多分とはいえ好きだと、イシュさんの想いに答えた。
 これはアレだ。その……童貞が暴走しても仕方ない。うん。
 俺だったら、暴走してる。だから、イシュさんの気持ちもわからないでも無いんだけど……。
 これ以上は本当に、俺が自分を保てるかの問題で。
 まぁ、ここまでされて、俺のこと好きだって言われて。俺のこと独占したいって宣言されたらさぁ。俺のこの不安定な気持ちは、イシュさんが好きだって方向に流れてくわけで。
「イシュさん、ね、俺のこと、絶対に捨てないって、約束して」
 これでやっぱり俺じゃない、とかイシュさんに言われたら、俺の方が死ぬから。
「当たり前だよ。ワタルのことは、生涯俺が守るし、幸せにするよ」
 イシュさんは間髪入れずに答えてくれる。
 だったら、もう良いじゃないか。
 この世界に来て、イシュさんに出会って、俺は救われた。
 ここまでイシュさんに想われて、俺は喜んでる。
 触れられても、全く嫌じゃ無かったんだ。魔力の相乗効果で、とんでもなく気持ち良かったんだ。
 認めろよ。自分の気持ち。イシュさんに嘘は、付きたくない。
「イシュさんが、やっぱり俺は要らないとか言ったら、俺はその場で死ぬから。イシュさんの言葉に、偽りが無いなら、俺のこと、好きにして良いよ」
「ワタル?」
 もうさ、認めたんだよな。
「俺もさ、その……さんざん多分とかどうの、とか、言ってたけどさ。こうやってイシュさんに触れられて、嫌じゃ無いとか、その……とにかくさ、俺もイシュさんのこと、好き、なんだよ!」
 もうなんだこれ。これ告白?
 みたいな感じになったけど。
「最初から、ドキドキしてた。イシュさんの綺麗な顔とか、見慣れないからだ。なんてそんな理由付けてた。でもさ、認める。俺、ちゃんとイシュさんのこと、好きだから」
 ちゃんと言わないとな、とか。思って。
 言ったんだけど。イシュさんが呆けたみたいに俺のこと見てくるだけで、反応が無いから怖い。
 え、何?俺が好きだって言ったら、それで終わるとか、無いよな?
「ワタル!」
「ふへ?」
 ギュッと抱き締められて、すっごい変な声出た。
「どうしよう。ねぇ。ワタル。俺はここで死ぬんだろうか?」
 止めてくれ。縁起でも無い。
「イシュさんに死なれたら、俺が困るから止めて」
 こんな状態で、イシュさんが居なくなったら、俺のこの感情はどうしたら良いんだ。
「じゃあ、夢?俺は都合の良い夢見て、ワタルを抱き締めてる?」
 なんでそうなるんだ。
 あれか。俺がさんざん焦らしたのが悪いのか。
「いたたた。痛いよ、ワタル」
「俺の気持ちわかったんだから、いつまでも呆けてるなよ。俺だって、恥ずかしいんだからな!」
 イシュさんの髪の毛思いっきり引っ張ってやった。
 痛いんだから、夢じゃないってわかるだろう。
「どうしよう。こんなに嬉しいものが有ったんだ……」
 俺を抱き締めたまま、イシュさんはそんな風に呟いている。
 そっか。感情を持たない様に生きてたイシュさんだから、こんなことが初めてなんだ。
 っていうか、あれ?触れ合うのも初めてだよな?
「あ、のさぁ。イシュさん。その……言いにくいんだけど、シ方わかってる?」
 準備万端なイシュさんのモノは、凶悪で。さすがに流血沙汰は嫌だ。
 というか、そこまで行くのか知らないけど。
「うん?やり方くらいは、座学でね。それは良いんだけど。ワタル、ねぇ。本当に良いの?俺を好きになってくれてるの?」
 座学って……さようですか。
 それより、どうしようか。イシュさんが疑心暗鬼に成っている。いや、俺自身のせいか。
 グイッと腰を当ててやる。
 わかれよ。俺だって、一回出したけど、さっきからずっとイシュさんと触れ合ってるせいで、また元気に成ってんだよ。
 触れ合ったせいで、イシュさんのモノから先走りが垂れる。さっき唾液とかにはもっと魔力がこもるって言ってたけど。そうか、こういう体液が、魔力に満ちてるのか。
 だからだな。さっき一緒に絶頂した時、とんでもない快感に飲まれたのは。精液は余計に魔力がこもってるんだろう。
 先走りがイシュさんから垂れて、そのせいで俺のはもっと元気に成りましたけどね?
 どうするんですか?イシュさん。ここで止めるの?
 さっきは終わるわけが無いとか、言ってたけど。
「はぁ、ワタル。本当に、どうなっても知らないよ?」
 熱いイシュさんの吐息。
 あ、そうか。俺が触れても、イシュさんに俺の魔力が巡るんだった。
「だから、良いって、言った」
 恥ずかしいんだって。何度も言わせるなって。
 気持ちを込めて睨みつけたら、だらしない笑顔で返された。
 なんだろう。顔面崩壊してるレベルなのに。それなのに、その顔までも綺麗とか、ずるくない?
 あ、これが惚れた欲目?
 どうでも良い。
「ん、う、ふん」
 鼻から息が漏れる度に、変な風に声が出る。それが恥ずかしいけれど。
 さっきは触れるだけだったキス。
 今は、舌が入れられて、絡め取られてる。
 あぁ、やっぱり。イシュさんの魔力ヤバイって。
「ワタルの魔力、すごいね。ふふ。理性が崩れそう。でもそうなったら、ワタルがさっきみたいに怖がるだろうから。頑張って耐えるけど」
 これ以上、触れられ無くなるのは嫌だから。なんて。
 さっきみたいになられても、きっと俺は怖がるけど、嫌じゃ無いって言うんだろうなぁ。とか思ってみる。
 でも口には出さない。だって、本当に怖いから。
 怖いのは嫌だ。優しいイシュさんが良いんだ、俺は。
 我儘だろうか。
 俺がイシュさんの魔力に感じる様に、イシュさんも俺の魔力に感じてくれてるのが、本当に嬉しい。
 言ってやらないけど。
 俺のせいだろうけど、俺の気持ちを疑った、イシュさんが悪い。
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