FULLMOON

藤野 朔夜

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プロローグ

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  アメリカ……とある州。
  街は夜の闇が覆ってしまう事もなく、何色ものイルミネーションが煌めいている。

  そんなネオンの煌めきが届かない、路地裏の片隅。
  黒猫が飛び出して、音も立てずに街中の雑踏へ消えていった。
  闇と静寂が支配しているこの場所に、少年が酔い潰れて寝ているのか、壁に背を預けて座っていた。
  否……、酔い潰れて寝ているわけではなかった。
  その少年は、もはや物云わぬ躯と化していたのだ……。
  ーーあの猫は、この躯に驚いたのだろうか……。

  毎夜、この街に起こる不可思議な事件。
  いつから始まったのかさえ、もう誰にもわからないだろう。
  犯人を除いて……。

  一歩、路地裏の明かりの届かない場所に踏み込めば、毎夜、少年の犠牲者を一人、二人と出すのにもかかわらず、ネオン街は煌めき、そして人々は溢れかえっていた。
  今夜もまた、一人の少年の犠牲には気付かずに、街は明るい顔を見せていた。
 
  少年は独り、暗闇の中で自分が発見されるのを静かに待っている……。


「闇の住人には光がないんだ。光を持って生まれないからな。けど、無い物だから、欲しくなる。……無い物だけど、手を伸ばせば手に入るんじゃないか、ってトコに在ると、欲しいって欲望は生まれるよな。近くに在れば在るほど。……近くになきゃ気付かないから、そんな欲求は生まれないだろうけどさ。……それが、本当は手に入るべきものだったとしたら、なおさらだよな」

「俺は光が欲しくて、お前が欲しいと言ったんだ」 

「俺の時間軸と、お前の時間軸は違うから……。お前が生きてここにいれば、俺にとって待つことは苦痛じゃない」

「辛かったら、いつでも俺を呼べば良い」

  ーー自分は、生きてて良いのだろうか……。
  絶えず襲う、不安。
  けれども、彼がくれた生命を、自分で途絶えさすなんてできなくて……。
  彼は私を光だと言ってくれたけれど。この身は既に闇の住人だから。 

  自分の気持ちを確かめるためにも、あなたと離れる道を選んで……、でも、すぐにでもあなたの名前を呼んで、傍に居てほしい、傍に居たいとすがってしまいそうで。
  あやふやなまま、あなたにただすがって生きるだけの子どもではもういられないから。だから、だから……。
  あと少し、あと少しだけ……。
  口をついて出そうになるあなたの名前を飲み込んで。
  なんて意地っ張りなんだろう。ただの駄々をこねている子どもだ。あの頃と、何も変わらない。なんて自嘲して。
  それでも、あなたがくれた言葉一つ一つが大切で、忘れられなくて。
  だから、早く……早く、私を見付けて。
  なんて。矛盾してる。

「俺には、お前がいなくなるッて事が、耐えられなかった」

  そう言って、あなたがくれた生命だから。
  だから、私は今も生きていられる。
  あなたが私を必要だ、と言ってっくれるから。

  僕は、一度死んだのだ。
  そして、彼のために生を得た。
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