幸せ

藤野 朔夜

文字の大きさ
2 / 15

2 ※

しおりを挟む
「んぁ、あ……」
 声を我慢するとか、最初からさせてもらえないのは、雅哉はよくわかっている。
 雅哉がどう感じているのか知りたいからと、五紀は声を抑えるのことをさせてくれないのだ。
 わかってはいても、雅哉には恥ずかしいことで。
「ん。もう指三本入ってる。わかる?雅哉さん」
 そんな確認さえも、雅哉には羞恥心を煽って来るものでしかない。
「はっ、抑え、きかないとか、言ってたのは、どこのどいつだ」
 最初から、焦らされているではないかと、雅哉は思う。
 だが、この状態で五紀を睨んでも、煽るだけだと熟知している。
「久しぶりだからね、傷付けるなんて、したくないし。ほら、まだ苦しそう」
 なんて、五紀は言って。指の角度を変えて来るから、雅哉の身体はビクリと跳ねた。
「あ、はっ。も、だいじょ、ぶだと、わかってん、だろうが」
 それでも雅哉の言葉は、五紀に強気で。
 欲しいとねだっている様なものだけれど。これ以上焦らされても、辛いのはお互い様なのだけれど。
 五紀が自分で焦らしているにもかかわらず、がっつかれて困るのは雅哉だ。
「雅哉さん、俺のこと欲しいって、言って?」
 五紀の言葉に、雅哉は「は?」と呆ける。
 言ってるじゃないかと雅哉は思うのだが。あの言葉だけじゃ、足りないらしい。
 何度もされて、身体の開き方を覚えさせられた雅哉だ。今だって、圧迫感に苦しんでいるのではない。
 中のイイ所を擦られはするけれど。決定的な物が足りないのだ。
 灼熱の楔で、奥を付かれる良さを、知ってしまっている。だから、足りない。
 そう雅哉は思っている。けれど、それを言葉に出せと言われるのは、羞恥心が上回る。
「ひぁ……」
 焦れたのか、指の動きが早くなった五紀。
「ね、雅哉さん。指だけでイく?」
 そんなこと、五紀自身が辛いだけだろうに。
 けれど本当にしてしまいそうな五紀に、雅哉が焦る。
 前を弄られれば、たしかに指だけでイけるだろう。けれど、奥が欲しがっているのは事実で。
 ひく付く自分の身体が、心底恨めしい。雅哉は荒い呼吸の中で、なんとか言葉を探す。
 一度出した後で、五紀に抱かれるのは、相当に辛いのだ。雅哉自身が。イけるほど、回復しないのに、それでも快楽は来るから。
「出さないで、イきたいの?」
 どの道五紀に付き合うと、そうなることもしばしば有るのだが。最初からそれでは、本当に雅哉の体力では付いて行けない。
「じらす、な。早く、欲しい……」
 出て来た言葉は率直過ぎて。ねだってる内に入るかどうかも怪しい。
 けれど。
「んあ……くっ」
 いきなり五紀の指がズルリと抜かれ、あてがわれた熱。
「ひっ、あ、あぁぁ……」
 いきなり過ぎるだろう。とか、雅哉は思うけれど。
 本人が抑えが効かないとか言っていたとおりで、熱い楔は雅哉の最奥まで一気にうがたれた。
「い、つき……おま、え……な……」
「ごめん。雅哉さん。でも大丈夫そうだね」
 謝っているようには聞こえない五紀の言葉。それでも、中が五紀のソレを、しっかりと感じて蠢いていることを、雅哉は知っている。
「はっ、すげーイイ」
 なんて、自分の上で言っている五紀を、雅哉は呼吸を整えながら見上げる。
「雅哉さん、顔溶けてる。イイの?」
 自身の顔がどんななのかは、雅哉は知りたくも無いけれど。
 それでもやはりこうされてしまえば、身体は素直に悦んでいるのだから、仕方がない。
「う、ごくのは、も、すこし、まて」
 さすがに一気に挿れられて、すぐに大丈夫になれるほどではない。
「この状態で、動くなとか、キツイんだけど」
 と言いつつも、五紀はしっかりと待ってくれるのを、雅哉は知っている。
 五紀本人が、抑えるのが本当に辛そうではある。のだけれど。
 たしかに先週が無かったから、二週間ぶりではあるので。ということは、雅哉の負担も、間を置いた分だけ多くなるのだ。
「すっげー中、動いてるけど?吸い付かれてるってか、吸い出そうとしてるみたい」
「言うな、馬鹿か」
 雅哉が顔を背けた瞬間だった。五紀が大きく動いたのは。
「っ、は、んあ……」
 文句も出ない。
 というか、出せない。
「我慢してんのに、雅哉さん、本当にもう、俺すぐイきそう」
 童貞のガキでもあるまいに。何を言っているんだか。
 と雅哉は心で思う。思うしか出来そうにない。
「ひ、やめ、前、さわ……ん、な!」
 慌てたのは雅哉で。今後そのまま五紀に付き合うなら、今イってしまえば辛くなる。
 だから、雅哉も我慢していたのだ。
「だって、最初は一緒にイきたいじゃん。大丈夫。雅哉さんが回復するまでは、待つから。今度は、ちゃんと待つから、ね、イって」
 そう言われてしまえば、雅哉は五紀の言葉を信じるしかなくなる。
 五紀だって、雅哉に無理強いはしたくないのだ。けれど、自分の熱を自分で抑えられないから。
 最初は一緒にイきたい。
 そう思っても良いだろう。と五紀は思う。
 その後に待つくらいは、出来る。気がする。
 一度上がった熱を、一旦下げれば、何とかなる。気がする。
 五紀はそう思いながら、自身と雅哉を追い詰めていく。
「い、あぁ、ん、ん……」
 抑えられない雅哉のいつもより高い声。
 あぁ、これがずっと聞きたかったと、五紀は思う。
 いつもよりも甘く高い声は、それだけで五紀を高める材料だ。
 雅哉本人は毎回声を出すのを嫌がっていたけど。あんまりにも五紀が毎回声を出せと言うからか、いつからか声を我慢しないでくれる様になっていた。
 うがたれて、乱れる雅哉は、本当に綺麗だと五紀は思う。
 雅哉は自身をオッサンだとか、オヤジだろとか言うけれど。
 引き締まっている身体には、贅肉は無いし。まだまだ綺麗にハリが有ると五紀は思う。
 どんな女より、雅哉が綺麗だと思うから。だから五紀は他に目移りをしたことが無い。
 雅哉にもさせない。
 というか、雅哉自身女にはさほど興味を持っていない。
 五紀が居るから、五紀以外とはこんなことをしようとは思ってもいない。
 もともと雅哉は一途だった。だから、五紀を受け入れてからは、五紀以外を考えたことは無かった。
「は、い、つき、あ、も、イく」
 雅哉も我慢していたのだから、こんな風にされてしまえば、すぐにイくのは当たり前で。
 抱かれる悦びを知った身体は、五紀以外受け付けないだろうと、雅哉は思う。
 こんな風に名を呼ぶのは、五紀だけで良いと。そう思っている。
 けれど。
 自身の年齢を顧みて、これで良いのかとも思うのも事実で。雅哉はだから自分をオッサンだとか、オヤジだとか、何かにつけて五紀に言うのだ。
 それでも良いという答えを期待して。
 その答えが無くなれば、この関係も終わりなのだろう、と。
「は、本当、雅哉さん綺麗。俺も我慢限界」
 イこ?と。
 言葉どおりに、五紀の指が、楔が、雅哉を上り詰めさせる。
 ドクリと爆ぜたのは、どちらが先だったのか。
 余韻で、しばらくは動けそうにはない。
 お互いに息が荒い。
 フワリと雅哉を抱き込む様に倒れて来た五紀の体重を思い、雅哉は知らず笑みがもれる。
 いつから、こんなにも五紀に絆されていたのかなぁ。などと雅哉は思いながら。眠気に抗って、なんとか五紀を抱き締め返す。
「眠そうだね、雅哉さん」
 五紀はすぐに雅哉の状態を把握する。
「眠くなるだろ。普通に」
 オッサンだからな、とは今は言わない。
 必要じゃ無いから。
「俺はまだまだイけるけど。雅哉さん回復するまでは待つって言ったからね。寝ないでよ」
 中に五紀を感じたままだ。抜かれていない。
「こんな状態で寝れるか」
「んー、中に挿ったままでも良いなら、寝て良いよ?」
「馬鹿か」
 こんな軽口も、二人の間で出来る様になったのは、本当につい最近だ。
「まぁ、まだ付き合ってもらうから、寝ちゃっても起こすけどね」
 起こし方の問題が有る。そう雅哉は思いつつ、眠気をなんとかやり過ごそうとする。
「んじゃ、会話してよ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

愛と猛毒(仮)

万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。 和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。 「……本当、バカだよな。お前も、俺も」 七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。 その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

有能課長のあり得ない秘密

みなみ ゆうき
BL
地方の支社から本社の有能課長のプロジェクトチームに配属された男は、ある日ミーティングルームで課長のとんでもない姿を目撃してしまう。 しかもそれを見てしまったことが課長にバレて、何故か男のほうが弱味を握られたかのようにいいなりになるはめに……。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...