【R18】御曹司とスパルタ稽古ののち、蜜夜でとろける

鶴れり

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《49》がむしゃらに(2)

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 新しい年が始まる。
 いつもより少しだけ胸を高鳴らせて出社し、自席についた。

 零れてしまわないようにカフェラテを机上に置いて、分厚いコートを脱ぐ。

「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」
「住吉さん。こちらこそよろしくお願いします」

 次々と出社してくる企画部社員に新年の挨拶をして、始業へ向けて準備を始める。

「深谷さん、今年こそは戦力になれるよう頑張りますので、よろしくお願いします」
「ふふ、白木さんはすでに立派な戦力だよ。今年もよろしくね」

 深々と頭を下げる新入社員の白木の肩をポンと叩く。

「住吉さんや深谷さんには迷惑かけっぱなしでしたので、今年は時間配分に気をつけていきたいと思いますっ」
「時間厳守、だもんね」

 締切の鬼の口癖を真似てみる。
 クスクスと笑い合いながら、白木は「あ、そうだ」と瑛美の耳元へ顔を寄せた。

「これ、まだ秘密事項なんですけど。人事の同期から聞いて、清澄部長が三月末で退社されるそうなんです。新しい部長、誰になるんですかねぇ……」
「そう、なんだ……」

 なんとか相槌をうつが、瑛美の体はピシリと固まったままだ。

(大和が、退社……? 副業に本腰を入れるということなのかな……。彼女なのに、私何にも知らされていないや)

 ズンと肩に重石が乗ったように、気持ちが暗くなる。

「みんなおはよう。今年もよろしく。始業時間になったら始めるからなー」

 出勤してきた大和は少し疲れている様子はあるものの、穏やかに朝の挨拶をしていた。

 他の社員が返事をするのに混じり、瑛美も小さな声を出す。

(やっぱり、私は頼りない存在なのかな……)

 大和の相談相手にすらならないほどなのだろうか。確かに有意義なアドバイスができるかといえば自信はないし、話を聞くくらいしかできないかもしれない。
 けれど、やっぱり彼女なのだから。大和が決めたことは本人の口から聞きたかった。

(大和のばか……)

 決して口に出す勇気はない愚痴を、心の中で呟く。

 気分が下がりながらも、なんとか邪念を振り払ってパソコンの電源をつけた。
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