【R18】経験豊富そうに見えるけど、初心者です!〜額に輝く宝玉の縁〜

鶴れり

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《1》ちっぽけな決意

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 色とりどりのドレスが大輪の花のように咲いている。天使達が手を取りあう美しい天井画の下で、今日も舞踏会とは名ばかりの『魔力交換の相手探し』が行われていた。

 楽団の演奏に合わせて美しく舞う令嬢たちを茫と見つめていた。肩をすぼめ、小さくなって壁際に佇む。

 ――やっぱり何処へ行っても中間色の『石持ち』がモテるのね。

 今年二十四歳になったニナメルは前髪に触れようと無意識に手を伸ばして、額の中心に輝く石に触れた。
 そうだった、今日は前髪を上げていたのだった、と思い出して下を向く。
 いつも石を隠すために厚く閉じられている額は、今日だけは前髪をピンで固定して開放している。それはニナメルのちっぽけな決意表明でもあった。

 大陸の端に位置するこの王国では爵位持ちの貴族の約半数が、生まれつき額に珠のごとく輝く石を持って生まれる。
 海に囲まれた半島育ちの伯爵令嬢ニナメルも額に宝石を有する『石持ち』の一人だった。

 通常、石持ちは皆生まれたばかりの頃は、ヘマタイトのような漆黒色をしている。成人を迎え、様々な魔力と交わることで、その石の色は様々な色へと変化していくのだ。

 そして最上であるのがダイヤモンドのような透明な珠玉である。
 石の色が薄ければ薄いほど、神の加護が強いとされ、比例して魔力量も大きくなる。
 透き通った美しい石を持つ者は、歴代の王族や高位貴族でも数えるほどしかいない。そのような強大な魔力を手に入れた者は、法によって手厚く守られ、歴史に名を残すことになる。

 地位や名声を得ようと強欲に塗れた石持ち貴族たちは、日々競い合うように魔力交換に勤しんでいた。白や透明に近い淡い色味の石を有する事が、石持ち貴族のステータスであったのだ。

 ――せめて私も黄色や水色、黄緑のような色だったら……誰か一人でも私のことを見てくれたかしら。

 何度この額の石を疎んだだろう。


 ニナメルは生まれつきパールのように美しい真っ白な宝石を額に輝かせていた。

 黒以外の石を持って世に生を受ける者は、稀であるが一定数は存在する。しかし白石はここ五百年の歴史の中でも聞いた事がない。

 ニナメルの両親はニナメルの名誉と安全を守るため、十八歳の成人になるまで領地から一歩も出さなかった。前髪は常に目の上で厚く切り揃え、外に出るときは常に深々と帽子を被った。

「石の色なんて関係ないわ。真っ黒だろうと真っ白だろうと、ニナは私たちの大切な娘であることに変わりないのだから」

 両親はたくさんの愛情を注いでニナメルを育てた。成人を迎えるまでは不貞疑惑を持たれないように徹底的に情報を隠蔽し、万一にも誘拐や暗殺などの危険が及ばぬように、ニナメルの周辺警備は常に万全だった。
 そのおかげもあってニナメルは清いまま今年で二十四歳を迎えた。

 国の北にある田舎の半島が領地とはいえ、ニナメルは立派な伯爵令嬢だ。一人娘の為いつかは婿を迎え、血を紡いでいかなければならない。

「何も気負うことはない。当主の私が死んだ後は十分に暮らせるだけの財産をニナメルへ渡し、領地は国へ返還しよう。私たちはニナが幸せに暮らしてくれることが一番の願いだ」

 そう言って両親がニナメルを甘やかすものだから、ニナメルは二十三歳まで領地から一歩も出ることなく、鳥籠の中で慈しみ守られながら、隠れるように暮らしていた。

 しかしいつまでもこのままではいけない。両親に甘えてばかりで親孝行の一つもできていない。守られているだけの一人娘なんて、伯爵家の名に泥を塗るだけだ。そう一念発起したニナメルは、領地の舞踏会に参加するようになった。
 しかし何度舞踏会へ出席しても、皆ニナメルの額を見ると顔を引き攣らせて逃げていくのだ。
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