美少女の顔に触りたい、月曜日

睡眠丸

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番外編

バレンタインはすぎたけど(2)

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「僕、結構マリちゃんに好かれていると思ってたんですけど。この前一緒に遊園地行きましたし」
「は、え? いつ?」
「そこは、まぁ、男女間のことなんで内緒です」
「いや、え、えーー……」

 小菊は不服そうに僕を睨んだ。

「それ、お姉ちゃんにいった?」
「いえ、別に言ってませんけど? いやぁ。マリちゃんたら、どうやらネットスラング的な僕と仲良くって。最近の子供ってまじまんじですね」
「もー意味わかんない」

 呆れたように小菊はいい、頬杖をついた。
 図書委員様がそんな、だらっとした態度でいいのか。

 小菊が何も言わなくなったので、黄色い真四角の箱を開けることにする。

 中に入っていたのはチョコレートだった。
 ……溶かしてハート型に固められたチョコレート。少々装飾過多気味で、チョコの上にはアラザンやらシュガーパウダーやらが盛りだくさんだった。

 見栄えは可愛くある。
 これぞ、女子高校生の手作り! といわれたら「なるほどなぁ」と言うレベル。
 可もなく不可もなく……失礼か。

「これ、僕にですか?」
「嬉しいでしょ?」
「親衛隊にもあげたほうがいいんじゃないですか?」
「もう配った」

 さすが小菊。

「というより、作ったチョコレートを床にばらまいたら群がってきた」
 さすが小菊。
「効率的な方法で配ったんだね」

 プラス思考で褒めておいた。
 皮肉の通じない少女のような少年は、にっこりほほ笑んだ。

「まぁ、これは後で食べるとして」
「だから、無理だって」

「何も話してないですけど」
「お姉ちゃんからのチョコはないよ」

「……なんでそんな断言を?」
「だって、部屋になかったんだ。チョコレートとか、お菓子が入っていそうな箱が」

 なる……ほど。
 さっきからの小菊の強気発言は、そういった根拠からきているのか。
 というか、姉の部屋を漁るな。

「でも、隠しているかもしれないじゃないですか」

「ううん。お姉ちゃんいない時に、マリとボクで探したけれど、本当になかった。今日の朝も、特に変わったものを鞄に入れてる様子はなかったし、なんなら昨日もおとといも何かを作ってる様子が見えなかった。だから、今日、もし帰り道にお姉ちゃんに会っても、チョコレートはないと思った方がいいね」
 
 なんでそんなに愉快そうなんですか、小菊。
 頬をつねりたくなる衝動を、慈悲で抑え込んだ。

「あ、もしかして、多々良家のサプライズとかですか? 全員でだまして、結局僕にチョコレートをくれるんでしょう?」

「そんな君を喜ばすなんて面倒なこと、三人で協力してすると思う?」
 しないとおもうー。

 頭の中の僕は素直だった。
 ため息しか出ない。それか涙。体中の悲しみを表すものがあふれ出てくる。

 これが、涙? 僕、泣けたのか。
 ううううう。


「まだ僕じゃダメなんですか……小椿さん。こんな人格いっぱいの面倒な男じゃだめなんですか……。小椿さんが望むなら、ブラジルまで井戸を掘るのに」
「どっから出てきたのその発想は」

 小菊の突込みが耳に入らない程ショックを受けていた。
 ああ、こんな人格飽和人間でも、小椿さんからチョコを貰える―ーーなどと勘違いしていたからだ。
 
 だからショックを受けている。
 
 自分の身の程を知るべきだった。僕は、小椿さんに施しを貰えるような人間じゃなかった。

「チョコ、もう一個いる? 義理だけど……?」
「いるます」
「いるんだ」

 慈愛のチョコレートを一つ、口にいれた。

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