それゆけ!プロポーズ大作戦!!

有箱

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私、頑張ります!

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 翌日、いつも通り景を見送った。出勤時間は常々私の方が遅いため、これは習慣通りである。

 さあ、ここからが始まりだ。いつもと違う忙しい一日が始まる。忙しく、それでいてワクワクドキドキと楽しい日が。
 
 私の立てた計画はこうだ。と言っても、決して大規模なものではない。

 一言で言えば〝プロポーズと同時に手作りケーキをプレゼントしよう〟と言うものだ。渡すものを考え抜いた結果、最終的にケーキに落ち着いた。
 それも、二人が大好きなチョコケーキに。

 ちなみに、渡し方は跪いてと決めている。王子さまのイメージだ。
 高級腕時計や花束なんかも考えたが、金額よりも気持ちとの結論に至った。

 一見、簡単そうに思えるだろう。しかし、時間を要するのにはそれなりの理由がある。

 実は、計画を立てるまで、私は一度も菓子と名の付くものを作った事がなかった。買った方が美味いし安い。との概念を持ち続けており、作ろうとさえ思わなかったのだ。

 だが、テレビや職場での雑談などで、手作りが喜ばれるという話を聞き、敢えて挑戦を決めた。

 計画発足から今日まで、一応練習はした。だが、指折りが出来る程度の回数だ。
〝初心者でも失敗しない〟と謳われた本のレシピでさえ、私には難易度が高かった。一度目の挑戦は、物の見事に失敗した。

 それから挑む事数回、成功率は増えてきた。だが、失敗のリスクまでは拭えなかった。

 時間を要する理由はこれだ。満足の行く物が出来るまで作る為である。
 あの店よりも――とは言わないが、自分史上最高のものを渡したい。そこだけは譲りたくなかった。

 その為には、まず買い物である。調理場は共有場所なので、大量に買い溜めておく事は出来なかった。
 悟られないよう動くというのは、思いのほか大変なのである。

 さぁ、いざ行かん。スーパーへ。



 平日の朝という事もあり、店は混雑していなかった。途中、ケーキ屋に目が眩みそうになったが耐えた。
 そうして見事、買い物は終了。第一の予定は完了だ。

 続いて、間髪入れず洗濯機のスイッチをオン。そうしてから、調理に取り掛かる。

 本に記載された手順通り、一つ一つ丁寧に作業した。チョコレートを湯銭で溶かす作業も、焦がさないよう注意深くおこなった。

 丹念な作業が報われれば良いのだが、結果は五分五分で、何とも言えないのが悔しいところだ。

 オーブンで加熱している間に洗濯物を干し、部屋の掃除もする。今日はいつもより念入りに、どこもかもピカピカに磨き上げていく。

 途中でオーブンが鳴って、様子を見に行ったが膨らみが甘かった。心なしか、生地も焦げ付いている気がする。失敗だ。

 掃除の手を止め、再び挑戦。先程よりも念入りに、一つ一つ確認しながら作った。次のは手応えがある。

 そうこうしている間にお昼になって、一つ目の失敗ケーキをパン代わりに食べた。味は美味しかった。
 
 それからも、家事や夕飯の仕込みをしつつ、満足行くまで作り続けた。その最中に、改めてプロポーズの練習をしたり、一応断られた場合の反応も考えた。

 台詞についても、何度も考え直した。結果、一番最初に考えたシンプルなものに収まったが。

 ――などなど、多くの予定に追われ、熱中すること数時間。やっと一つ、合格ラインのものが完成した。

 膨らみも良くきめ細やかで、色味も丁度いい。これならば、最高のケーキが出来そうだ。

 大満足で時計を見る。すると、時刻は四時半を指していた。想像以上の進行に仰天する。

 どうやら、集中しすぎていたらしい。時刻を気にしながら行動していたはずだが、体感と現実がずれてしまっていたようだ。

 タイムリミットは二時間半。用事とチョコの約束がなかったら――そう思うと恐ろしい。それでもギリギリになってしまいそうなのに。

 時計を眺めて数秒、分単位で計画を練り直す。そうして、不慣れなご馳走の準備を始めた。
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