ボクの父さんはダメおやじ

５-２（最終）

　驚きの新事実に、体が硬直した。透明人間を続行し、続きに耳を傾けてしまう。

「そしたら、正人を大変な目に合わせてしまうかもしれないものね」
「ああ。それに君も。何がなんでも君たちだけは巻き込むわけにはいかないのに……大反省だよ」
「愛してくれているものね。私のことも、正人のことも」

　非現実すぎる話に付いていけなかった。けれど、場面が冗談ではないと言っている。だから、きっと全ての話が真実だ。

「ああ。可愛くて愛しい、かけがけのない妻と息子だからな。ここで君とあの子に会わなければ、地球に住もうなんて思わなかっただろうなぁ」
「そうね。正人を守るためにも、今まで以上に気を引き締めて頑張ってよね！　お父さん！」
「全力で努力します……」

　父さんが異星人であることも、多分僕と血が繋がっていないことも。それから、僕を心から愛していることも。

　…………知らない振りをしよう。
　結論は自然と心に収まった。そっと部屋に戻り、布団をかぶり直す。

　真実が明るみになった世界を想像してみた。
　きっと家族全員、酷い質問攻めに合う。父さんは施設かどこかに送られて、帰ってこられないかもしれない。母さんは父さんが大好きだから、きっと悲しむはずだ。
　僕と母さんは父さんを待ちながら、この家でひっそり暮らすことになるだろう。騒ぎもなく、ただただ静かに。
　想像したら、空虚感に恐ろしくなった。

　経緯はよく分からない。けれど母さんと父さんが、僕にとっても代えのない存在であることは確かだ。だから僕は――。

　隣の部屋から、近所迷惑級の物音が聞こえた。父さんの悲鳴と、母さんの呼び声も後を追いかける。

　あのダメ親父を守ってやろう。母さんの為にも、息子の僕が。そう決めた。