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第二十話
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「……葉月……?」
そこにいたのは紛れもなく葉月だった。しかし、手首から多量の血を流して倒れている。付近には、鋭利なナイフが落ちていた。
反射的に駆け寄り起こそうとするが、体に触れる事すら出来なかった。
幾ら想像だとしても、あまりにも残酷すぎる。
葉月が自殺するなんて、惨すぎる。
¨私は、司佐くんの本に救われたんだよ¨
ふわりと、幾度と無く掛けてくれた温かな言葉が心に落ちてきた。この言葉を僕は何度思い出しただろう。目の前で起こっている惨状と、言葉とが自然に嵌り合った。
これはシュミレーションだ。
けれど、そうだ、有り得ない事じゃない。
その瞬間、湧き上がった。本能が感情を取り巻いて滾る。
やっぱり消えたくない。生きていたい。記憶から、世界から消えてしまうのは怖い。今までの人生を、大切な一場面を、あの言葉の数々を、やっぱり捨てられない。捨てたくない。
「お願いだ! とめてくれ! やっぱり消えたくないんだ! 生きたいんだよ!」
やっと今気が付いた。彼女が救われる事によって、救われていたのは自分自身だった。
「……お願いだよ……お願いだ……嫌だよ……」
けれど、気が付くのが遅すぎた。せめて、心からの感謝を葉月に捧げたかった。もう一度やり直せるなら、前を向いて歩いてゆける気がするのに。
それなのに、全部消えるなんて。
目の前が真っ暗になり、感じていた何もかもが消え去った。相変わらず博士の声は聞こえず、その他誰の相槌もない。その内頭がぼんやりとしてきて、思考が働かなくなってゆくのを感じた。
それでも尚、僕は叫ぶ。消えたくない、消えたくないと。
君にこの思いを伝えたい、と。
――――悲しい笑顔の葉月がいて、今朝方見たようにヒラヒラと手を振っている。
『また、生まれ変わったらその時は』
そう言っているような気がした。
そこにいたのは紛れもなく葉月だった。しかし、手首から多量の血を流して倒れている。付近には、鋭利なナイフが落ちていた。
反射的に駆け寄り起こそうとするが、体に触れる事すら出来なかった。
幾ら想像だとしても、あまりにも残酷すぎる。
葉月が自殺するなんて、惨すぎる。
¨私は、司佐くんの本に救われたんだよ¨
ふわりと、幾度と無く掛けてくれた温かな言葉が心に落ちてきた。この言葉を僕は何度思い出しただろう。目の前で起こっている惨状と、言葉とが自然に嵌り合った。
これはシュミレーションだ。
けれど、そうだ、有り得ない事じゃない。
その瞬間、湧き上がった。本能が感情を取り巻いて滾る。
やっぱり消えたくない。生きていたい。記憶から、世界から消えてしまうのは怖い。今までの人生を、大切な一場面を、あの言葉の数々を、やっぱり捨てられない。捨てたくない。
「お願いだ! とめてくれ! やっぱり消えたくないんだ! 生きたいんだよ!」
やっと今気が付いた。彼女が救われる事によって、救われていたのは自分自身だった。
「……お願いだよ……お願いだ……嫌だよ……」
けれど、気が付くのが遅すぎた。せめて、心からの感謝を葉月に捧げたかった。もう一度やり直せるなら、前を向いて歩いてゆける気がするのに。
それなのに、全部消えるなんて。
目の前が真っ暗になり、感じていた何もかもが消え去った。相変わらず博士の声は聞こえず、その他誰の相槌もない。その内頭がぼんやりとしてきて、思考が働かなくなってゆくのを感じた。
それでも尚、僕は叫ぶ。消えたくない、消えたくないと。
君にこの思いを伝えたい、と。
――――悲しい笑顔の葉月がいて、今朝方見たようにヒラヒラと手を振っている。
『また、生まれ変わったらその時は』
そう言っているような気がした。
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