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ぼくのおとうと
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あの後、僕はニナさんの家に引き取られた。養子にしてもらったのだ。
温かな家庭に身を置き、やっと小母が可笑しかった事に気付いた。
後で聞いた話、ニナさんとキイくんは、長い間、僕を助ける為に動いてくれていたそうだ。
そうして、無事命を繋いだ僕は、大学生になった。
「お母さん、ただいま」
学校から帰宅し、玄関から挨拶する。最初はぎこちなかったこの挨拶も、今や慣れたものだ。
「ヨウくん、おかえり。学校どう?」
「楽しいよ! 機械学は奥が深い……!」
「そう、楽しいなら良かった。お菓子持っていくから二階に上がってて」
今は大学で機械工学を専攻し、学習している。どれもこれも、全てはあの日に決めた。
「うん、ありがとー」
二階に上がり、いつもの様に扉を引く。すると、幼い少年が飛びついてきた。
「ユウくん、ただいま。良い子にしてた?」
「してたー! 良い子ってして!」
ニコニコと笑うこの少年は、僕の弟だ。血の繋がりはないものの、大切な弟である。
頭を優しく撫でると、ユウくんは満足気にはにかんだ。その笑顔のまま、室内に戻っていく。
そうして、いつもの場所に座った。
「キイくん、ヨウくん帰ってきたよ」
それは、キイくんの横だった。壁に凭れ掛かり、目も開かない、あの日のままのキイくんだ。
「キイくん、ただいま」
僕の、大好きで大切なキイくんだ。
*
実はあの後、やって来た修理屋により、感情や記憶のプログラムは消えていない事が判明した。
所謂、部品さえあれば、元のキイくんに会えるという事だ。
だが、肝心の部品が古いものだったらしく、多くが取り扱い中止になっていた。
だから僕は、今の道を選んだ。
無いなら作ればいい。自ら知識を蓄え、この手でキイくんを取り戻せば良い。
「僕、頑張るから。だから、もう少しだけ待ってて」
もう一度、会える日を夢見て。話せる日を願って。一生懸命、前に進むから。
キイくん、大好きだよ。
温かな家庭に身を置き、やっと小母が可笑しかった事に気付いた。
後で聞いた話、ニナさんとキイくんは、長い間、僕を助ける為に動いてくれていたそうだ。
そうして、無事命を繋いだ僕は、大学生になった。
「お母さん、ただいま」
学校から帰宅し、玄関から挨拶する。最初はぎこちなかったこの挨拶も、今や慣れたものだ。
「ヨウくん、おかえり。学校どう?」
「楽しいよ! 機械学は奥が深い……!」
「そう、楽しいなら良かった。お菓子持っていくから二階に上がってて」
今は大学で機械工学を専攻し、学習している。どれもこれも、全てはあの日に決めた。
「うん、ありがとー」
二階に上がり、いつもの様に扉を引く。すると、幼い少年が飛びついてきた。
「ユウくん、ただいま。良い子にしてた?」
「してたー! 良い子ってして!」
ニコニコと笑うこの少年は、僕の弟だ。血の繋がりはないものの、大切な弟である。
頭を優しく撫でると、ユウくんは満足気にはにかんだ。その笑顔のまま、室内に戻っていく。
そうして、いつもの場所に座った。
「キイくん、ヨウくん帰ってきたよ」
それは、キイくんの横だった。壁に凭れ掛かり、目も開かない、あの日のままのキイくんだ。
「キイくん、ただいま」
僕の、大好きで大切なキイくんだ。
*
実はあの後、やって来た修理屋により、感情や記憶のプログラムは消えていない事が判明した。
所謂、部品さえあれば、元のキイくんに会えるという事だ。
だが、肝心の部品が古いものだったらしく、多くが取り扱い中止になっていた。
だから僕は、今の道を選んだ。
無いなら作ればいい。自ら知識を蓄え、この手でキイくんを取り戻せば良い。
「僕、頑張るから。だから、もう少しだけ待ってて」
もう一度、会える日を夢見て。話せる日を願って。一生懸命、前に進むから。
キイくん、大好きだよ。
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検索からこちらにたどりつきました。あらすじが気になってしまい、一気に読んだのですがヨウくんとロボットの弟キイくんの会話ややり取りに優しさがあふれていて、希望のあるラストにとても感動しました…!素敵な物語をありがとうございます
羊原ユウさん!まずは、たくさん表示されたであろう作品の中から、この物語を選んで下さりありがとうございます🌱
あらすじ書くことを苦手としているので、気になったとのお言葉に早速大喜びしております🌸
更には最後まで目を通し(しかも一気読みをして下さった!?)こうして丁寧な感想を残して下さったこと、すっごーく嬉しいです!
端から端まで嬉しい言葉尽くしで、喜びが溢れて止みません……✨
幸せな気持ちを頂けたこと、心から感謝します✨
本当にありがとうございます!
本日、最新話を拝読しました。
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こちらも。終盤だから、という理由ではなく。
心に強く、残っております。
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