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「朗報をお持ちしました」
テレザ夫人の訪れにカルメット侯爵家は沸き立った。
ただでさえ当主であるランスへの訴えが元から消滅したとあって活気に満ちていたのに、伝説の女傑テレザ夫人が直々にやってきて、しかも朗報まで携えているのだ。
お祭りである。
「なんです?騒がしいですね」
テレザ夫人は眉を顰めていた。
しかし思い出してくれたらしく、珍しく笑顔を浮かべランスにこんな挨拶をしてくれた。
「おめでとうございます、カルメット侯爵」
夫も快く応じる。
「こちらこそ。あなたが政治的に手を回してくれたと聞きました」
「奥様は少し大袈裟なのです。私は特に何も」
「いえ、義理の父が……」
「ああ」
テレザ夫人の威厳溢れる相槌がだんだん好きになってきた私だ。親戚が訪ねてきたかのように心の枷を取り払った完璧な笑顔になってしまう。
そしてなんといっても、テレザ夫人が笑顔で応じてくれるのだ。時代は変わった。私の頬を打った出会いが嘘のように私たちは今、世代を越え信頼と友情で繋がっている。
「もちろん、その件で参りました」
例の私が破り捨てた嘆願書に絡み、私の両親とテレザ夫人の間で何やらあったらしく、気づいたらノアム侯爵の身辺を探る秘密の調査団に父も参加していた。
夫婦の仲直りと調査に参加する旨に加え、やっと娘の結婚祝いを届けてくれたのはつい先日のこと。
「思ったより早く証拠を掴めました。陛下がとても協力的で、公爵家を動かしてくださったのです」
テレザ夫人はランスとミレーユの血縁関係を知らない。
知らない人間の目には、国王陛下と公爵家の正義感として映るようだ。いいことだ。
テレザ夫人が目の奥に鋭い閃光を宿しながら、可憐な乙女のように笑った。
「酒の密売を押さえましたよ。つまり、当然ながら脱税です」
「思ったより酷い」
心の声が口から出ていた。
本当にろくでもない親子だ。
続いてテレザ夫人は深刻な表情になり言葉を濁した。
「あなたには愉快とは思えないでしょうが、訴えの却下を受けたノアム侯爵は御子息について、やはりあれは本人が酔って転んだだけだと言い出したようですよ……そして、また酒を浴びて転び、完全に記憶を失ったそうです」
「……」
「え!?」
言葉を失っているランスに代わり、私は心の声を解き放った。
テレザ夫人は意に介さず、ランスに年長者の笑みを向けた。
「いずれにせよノアム侯爵家は終わりです。ノアム侯爵はまだ罪が暴かれたと知りませんが、いざ逮捕された時、御子息をどうするのでしょうかねぇ……」
返す言葉もない。
私たち夫婦の心証を察したらしいテレザ夫人は話題を変えた。微妙な変化だけれど効果は絶大だった。
テレザ夫人が人差し指を立て虚空を睨む。
「ジュリエッタも今、気が狂ったふりをして逃げようとしているのです。許しませんよ。私の城で息子をほったらかしナヴァーラ伯爵と密室に篭っていた日々を私は決して忘れません」
彼女の精一杯のお茶目だと受け止めた私は、しっかり笑顔で応じた。
「まあ!」
意味のある言葉は捻り出せなかったが、まあ充分だろう。
その後テレザ夫人は庭園を散歩した後、私たちと優雅にお茶をして、やはり颯爽と馬に跨り夕陽の中に溶けていった。
テレザ夫人の訪れにカルメット侯爵家は沸き立った。
ただでさえ当主であるランスへの訴えが元から消滅したとあって活気に満ちていたのに、伝説の女傑テレザ夫人が直々にやってきて、しかも朗報まで携えているのだ。
お祭りである。
「なんです?騒がしいですね」
テレザ夫人は眉を顰めていた。
しかし思い出してくれたらしく、珍しく笑顔を浮かべランスにこんな挨拶をしてくれた。
「おめでとうございます、カルメット侯爵」
夫も快く応じる。
「こちらこそ。あなたが政治的に手を回してくれたと聞きました」
「奥様は少し大袈裟なのです。私は特に何も」
「いえ、義理の父が……」
「ああ」
テレザ夫人の威厳溢れる相槌がだんだん好きになってきた私だ。親戚が訪ねてきたかのように心の枷を取り払った完璧な笑顔になってしまう。
そしてなんといっても、テレザ夫人が笑顔で応じてくれるのだ。時代は変わった。私の頬を打った出会いが嘘のように私たちは今、世代を越え信頼と友情で繋がっている。
「もちろん、その件で参りました」
例の私が破り捨てた嘆願書に絡み、私の両親とテレザ夫人の間で何やらあったらしく、気づいたらノアム侯爵の身辺を探る秘密の調査団に父も参加していた。
夫婦の仲直りと調査に参加する旨に加え、やっと娘の結婚祝いを届けてくれたのはつい先日のこと。
「思ったより早く証拠を掴めました。陛下がとても協力的で、公爵家を動かしてくださったのです」
テレザ夫人はランスとミレーユの血縁関係を知らない。
知らない人間の目には、国王陛下と公爵家の正義感として映るようだ。いいことだ。
テレザ夫人が目の奥に鋭い閃光を宿しながら、可憐な乙女のように笑った。
「酒の密売を押さえましたよ。つまり、当然ながら脱税です」
「思ったより酷い」
心の声が口から出ていた。
本当にろくでもない親子だ。
続いてテレザ夫人は深刻な表情になり言葉を濁した。
「あなたには愉快とは思えないでしょうが、訴えの却下を受けたノアム侯爵は御子息について、やはりあれは本人が酔って転んだだけだと言い出したようですよ……そして、また酒を浴びて転び、完全に記憶を失ったそうです」
「……」
「え!?」
言葉を失っているランスに代わり、私は心の声を解き放った。
テレザ夫人は意に介さず、ランスに年長者の笑みを向けた。
「いずれにせよノアム侯爵家は終わりです。ノアム侯爵はまだ罪が暴かれたと知りませんが、いざ逮捕された時、御子息をどうするのでしょうかねぇ……」
返す言葉もない。
私たち夫婦の心証を察したらしいテレザ夫人は話題を変えた。微妙な変化だけれど効果は絶大だった。
テレザ夫人が人差し指を立て虚空を睨む。
「ジュリエッタも今、気が狂ったふりをして逃げようとしているのです。許しませんよ。私の城で息子をほったらかしナヴァーラ伯爵と密室に篭っていた日々を私は決して忘れません」
彼女の精一杯のお茶目だと受け止めた私は、しっかり笑顔で応じた。
「まあ!」
意味のある言葉は捻り出せなかったが、まあ充分だろう。
その後テレザ夫人は庭園を散歩した後、私たちと優雅にお茶をして、やはり颯爽と馬に跨り夕陽の中に溶けていった。
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