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「フィンリー侯爵からのお祝いは届きました?」
モードリンがグレース妃に視線を向ける。
「ええ。殿下から伺っているわ」
「あの方、相当苦労なさったみたい」
話が思わぬ方向に向かい始め、私はカップをそっと下ろした。
零しかねないし、火傷しかねない。
過去のこととはいえ、まだ生々しく回想できる破談。
そのきっかけになったのはフィンリー侯爵夫妻の離婚だった。
勿論、だからと言ってフィンリー侯爵を責める理由は私にはないし、新たな王子の誕生を大貴族として祝うのは当然のことだった。
意外ではない。
「フィンリー侯爵のところに行ったスパイって、あなたなの?」
グレース妃が目を丸くして尋ねる。
即座にモードリンは否定した。
「いいえ。私では秘密にも何にもなりませんので。報告だけ」
「そうよね」
「それで、閣下がどうかなさったの?」
モードリンとグレース妃の会話にウォリロウ侯爵夫人が加わる。
秘密だけれど、とモードリンが人差し指を唇に宛がった。素晴らしく形のいい艶めく唇に。
「困った元奥様の火消しに随分奔走なさったようなの」
「……」
終わったことである。
併し、これは間違いなくハリエットの話だ。
胃が……
「元奥様は婚姻関係にある間に三件の訴訟で負けて、フィンリー侯爵は三件分の賠償金や慰謝料に加えて口止め料まで払ったそうなの」
「口止め料?」
グレース妃が我が事のように応対している。
「名誉を守る為でしょう」
ウォリロウ侯爵夫人が補足すると、モードリンが頷いて話を続けた。
「稀に見る困ったちゃんですよ。晩餐会という名のお誕生会を開かれて、満足なお持て成しもできなかったどころか、癇癪を起してお客様と揉めたそうです」
「……」
絶句である。
「パトリッジ伯爵夫人のコーデリア様からは、その件で侮辱罪で訴えられました。これがいちばんの痛手だったでしょう。何しろコーデリア様の御父上はマホーニー公爵ですから」
私の知らないところで、とんでもない事件が起きていたらしい。
「翌朝、ご機嫌が直らなかった元奥様は、遠方からいらっしゃって宿泊されたリヴィングストン侯爵のお嬢様ソレル様の大切なカナリヤを捻り殺す目的で鳥篭から盗み出し、気づいたソレル様によって命だけは取り留めたものの、カナリヤはお空へ飛び立ってしまったとか。文字通り、生きた状態で、羽で、空に」
「逃げるわよ、それは」
グレース妃はさすが王弟妃なだけあり、感想を述べる余裕があるらしい。
ウォリロウ侯爵夫人は腹立たしさと嫌悪を混ぜた長い溜息を洩らしている。
「唯一笑って聞けたのはアイルトン侯爵夫人のマントの件です。他意はなく、ただ『素敵だから着てみたかった』という理由で、到着して早々ご挨拶途中のアイルトン侯爵夫人のマントを脱がしてその場で着てくるりと回って見せたそうです」
「……マント……ふっ」
「!?」
唖然としていた私でも、ウォリロウ侯爵夫人まで笑う事態には反射的に驚いてしまう。
グレース妃が事情を呑み込めていない私に言った。
「アイルトン侯爵夫人はマントに並々ならぬ情熱をお持ちで、あれこれと工夫を凝らしてたくさん仕立てていらっしゃるの。いい趣味だけれど、あれは病気よ」
ハリエットはその情熱を注がれた特別なマントを我が物顔で奪い取ったと。
なるほど……
他人の大切なものをぶち壊さないと生きていけない宿命でも背負って生まれたのだろうか。
ここまでくると、腹立たしさを僅かに通り越して不気味ですらある。
「離婚もやむなしね」
呆れた様子でグレース妃が茶化した。
モードリンはお茶で喉を潤して更に続けた。
「フィンリー侯爵家の名誉を損ない財政を圧迫させたとして、フィンリー侯爵も元奥様を訴えました。これが示談になり、ブロードベント伯爵家はかなりの賠償金を支払ったそうですわ。ブロードベント伯爵家はもう長く持ちません」
自業自得とはいえ、壮絶な結末を迎えようとしている。
「……」
私はふと、マシューを思い出した。
情けをかけようとは思わないけれど、事実として、あのマシューが関与し続けるにはブロードベント伯爵家の窮地は大事すぎるし、荷が重すぎる。
同じ事を考えたのか、それでも私とは違う感情でグレース妃が不満を口にする。
「だからマシューはしつこくレイチェルに絡んでくるのかしら。レイチェルに許してもらえれば、馬鹿な幼馴染に肩入れした過去が帳消しになると思って」
「それは……」
ないと言えば、マシューを庇うことになる。
庇いたいとは思っていない。事実として、あのマシューにはそんな機転の利かせ方はできないだけだ。
意外にもモードリンがマシューを庇った。
「それはありません」
「どうして!?」
私より先に憤慨するグレース妃の頼もしさたるや、牝豹と呼ばれるだけのことはある。
けれど私としても、モードリンの否定の理由は是非聞いておきたい。
口を鎖していても秘密は明かされそうだったので、私は不用意に発言するのは控えモードリンを目で促した。
「実は……」
美しいモードリンも腑に落ちないような微妙な表情を浮かべる。
「素晴らしい女性との婚約を反故にした不幸なコルボーン伯爵家の令息が、元奥様のとばっちりを受けないよう働きかけたのもまた、フィンリー侯爵だったようですわ」
「……何故?」
ウォリロウ侯爵夫人が胡乱な声を上げる。
誰もがそれを知りたい気がする。
併し残念ながらモードリンは首を振った。
「わかりません。何かお考えがあるようですけれどね。でも、どうせ男の理由でしょう。男は男には甘いですから」
「許し難いわ……」
グレース妃が怒っている。
グルルとか、ガゥとか、言ってもよさそうな表情ではある。
「マシューとフィンリー侯爵に個人的なつながりはなかったと思います」
私は理性的な一言で口を挟んでみた。
モードリンが頷いた。
「そうみたいですわ。ただ、フィンリー侯爵がそのマシュー様を守る為にブロードベント伯爵を脅されたのも事実。それもかなりきつく。悪妻に振り回されたご自分と、レイチェル様を振ったおバカさんを重ねられたのかもしれません。それに……」
それに?
と、私たちはモードリンを食い入るように見つめ続く言葉を待った。
モードリンは笑った。
「フィンリー侯爵が口止め料を払ったから当事者以外は一連の訴訟を知りません。だから私たちが動いたのですもの。皆様が嫌うマシュー様には、困ったちゃんな幼馴染のおイタを知る方法がありませんの。未練ですわ」
だったら、それはそれで質が悪いのだけれど……
モードリンに文句を言っても仕方がないし、フィンリー侯爵に意見するなど以ての外だ。
「で・も」
モードリンが少女のようにキラキラした笑顔で私の方へと身を乗り出した。
「レイチェル様には新しい恋の御相手がいらっしゃるとか!」
この一言がきっかけとなり、マシューという靄は綺麗さっぱり晴れ渡り、私たちは清々しく恋の話題で盛り上がった。
てっきりディナーもご一緒すると思い込んでいたモードリンは意外にも早く腰を上げた。
国王付首席近侍マクシームのスパイの一人であることを示唆していたから、その役目で忙しいのかと思っが、違った。
モードリンの見送りに出た私は、噴水を背に佇む一人の男性を目にし、はっとした。
「エゴン!」
嬉しそうにその名を呼んでモードリンが男性に手を振る。
マクシームは私に向かって慇懃に御辞儀した直後、駆け寄ったモードリンとキスをして、腕を組み寄り添い合って夕焼けの街へと溶けていった。
「名前、エゴンていうのね……」
魂で結ばれた恋人。
モードリンがその恋人だったらしい。
「ロマンチックだわ……」
と、感慨に耽ったその時。
「!」
ノエル王子の元気な泣き声がセイントメラン城から降ってきた。
自ずと笑みを浮かべてしまう。
胸がいっぱいになる。
今ここに、私の幸せがあるのだ。
恋はまだ始まったばかり……
魂で結ばれているなら、私はトレヴァーと結婚するかもしれない。
でも今は、ノエル王子を抱きしめたい。
私は足早に持ち場へ戻った。グレース妃の傍らに。
モードリンがグレース妃に視線を向ける。
「ええ。殿下から伺っているわ」
「あの方、相当苦労なさったみたい」
話が思わぬ方向に向かい始め、私はカップをそっと下ろした。
零しかねないし、火傷しかねない。
過去のこととはいえ、まだ生々しく回想できる破談。
そのきっかけになったのはフィンリー侯爵夫妻の離婚だった。
勿論、だからと言ってフィンリー侯爵を責める理由は私にはないし、新たな王子の誕生を大貴族として祝うのは当然のことだった。
意外ではない。
「フィンリー侯爵のところに行ったスパイって、あなたなの?」
グレース妃が目を丸くして尋ねる。
即座にモードリンは否定した。
「いいえ。私では秘密にも何にもなりませんので。報告だけ」
「そうよね」
「それで、閣下がどうかなさったの?」
モードリンとグレース妃の会話にウォリロウ侯爵夫人が加わる。
秘密だけれど、とモードリンが人差し指を唇に宛がった。素晴らしく形のいい艶めく唇に。
「困った元奥様の火消しに随分奔走なさったようなの」
「……」
終わったことである。
併し、これは間違いなくハリエットの話だ。
胃が……
「元奥様は婚姻関係にある間に三件の訴訟で負けて、フィンリー侯爵は三件分の賠償金や慰謝料に加えて口止め料まで払ったそうなの」
「口止め料?」
グレース妃が我が事のように応対している。
「名誉を守る為でしょう」
ウォリロウ侯爵夫人が補足すると、モードリンが頷いて話を続けた。
「稀に見る困ったちゃんですよ。晩餐会という名のお誕生会を開かれて、満足なお持て成しもできなかったどころか、癇癪を起してお客様と揉めたそうです」
「……」
絶句である。
「パトリッジ伯爵夫人のコーデリア様からは、その件で侮辱罪で訴えられました。これがいちばんの痛手だったでしょう。何しろコーデリア様の御父上はマホーニー公爵ですから」
私の知らないところで、とんでもない事件が起きていたらしい。
「翌朝、ご機嫌が直らなかった元奥様は、遠方からいらっしゃって宿泊されたリヴィングストン侯爵のお嬢様ソレル様の大切なカナリヤを捻り殺す目的で鳥篭から盗み出し、気づいたソレル様によって命だけは取り留めたものの、カナリヤはお空へ飛び立ってしまったとか。文字通り、生きた状態で、羽で、空に」
「逃げるわよ、それは」
グレース妃はさすが王弟妃なだけあり、感想を述べる余裕があるらしい。
ウォリロウ侯爵夫人は腹立たしさと嫌悪を混ぜた長い溜息を洩らしている。
「唯一笑って聞けたのはアイルトン侯爵夫人のマントの件です。他意はなく、ただ『素敵だから着てみたかった』という理由で、到着して早々ご挨拶途中のアイルトン侯爵夫人のマントを脱がしてその場で着てくるりと回って見せたそうです」
「……マント……ふっ」
「!?」
唖然としていた私でも、ウォリロウ侯爵夫人まで笑う事態には反射的に驚いてしまう。
グレース妃が事情を呑み込めていない私に言った。
「アイルトン侯爵夫人はマントに並々ならぬ情熱をお持ちで、あれこれと工夫を凝らしてたくさん仕立てていらっしゃるの。いい趣味だけれど、あれは病気よ」
ハリエットはその情熱を注がれた特別なマントを我が物顔で奪い取ったと。
なるほど……
他人の大切なものをぶち壊さないと生きていけない宿命でも背負って生まれたのだろうか。
ここまでくると、腹立たしさを僅かに通り越して不気味ですらある。
「離婚もやむなしね」
呆れた様子でグレース妃が茶化した。
モードリンはお茶で喉を潤して更に続けた。
「フィンリー侯爵家の名誉を損ない財政を圧迫させたとして、フィンリー侯爵も元奥様を訴えました。これが示談になり、ブロードベント伯爵家はかなりの賠償金を支払ったそうですわ。ブロードベント伯爵家はもう長く持ちません」
自業自得とはいえ、壮絶な結末を迎えようとしている。
「……」
私はふと、マシューを思い出した。
情けをかけようとは思わないけれど、事実として、あのマシューが関与し続けるにはブロードベント伯爵家の窮地は大事すぎるし、荷が重すぎる。
同じ事を考えたのか、それでも私とは違う感情でグレース妃が不満を口にする。
「だからマシューはしつこくレイチェルに絡んでくるのかしら。レイチェルに許してもらえれば、馬鹿な幼馴染に肩入れした過去が帳消しになると思って」
「それは……」
ないと言えば、マシューを庇うことになる。
庇いたいとは思っていない。事実として、あのマシューにはそんな機転の利かせ方はできないだけだ。
意外にもモードリンがマシューを庇った。
「それはありません」
「どうして!?」
私より先に憤慨するグレース妃の頼もしさたるや、牝豹と呼ばれるだけのことはある。
けれど私としても、モードリンの否定の理由は是非聞いておきたい。
口を鎖していても秘密は明かされそうだったので、私は不用意に発言するのは控えモードリンを目で促した。
「実は……」
美しいモードリンも腑に落ちないような微妙な表情を浮かべる。
「素晴らしい女性との婚約を反故にした不幸なコルボーン伯爵家の令息が、元奥様のとばっちりを受けないよう働きかけたのもまた、フィンリー侯爵だったようですわ」
「……何故?」
ウォリロウ侯爵夫人が胡乱な声を上げる。
誰もがそれを知りたい気がする。
併し残念ながらモードリンは首を振った。
「わかりません。何かお考えがあるようですけれどね。でも、どうせ男の理由でしょう。男は男には甘いですから」
「許し難いわ……」
グレース妃が怒っている。
グルルとか、ガゥとか、言ってもよさそうな表情ではある。
「マシューとフィンリー侯爵に個人的なつながりはなかったと思います」
私は理性的な一言で口を挟んでみた。
モードリンが頷いた。
「そうみたいですわ。ただ、フィンリー侯爵がそのマシュー様を守る為にブロードベント伯爵を脅されたのも事実。それもかなりきつく。悪妻に振り回されたご自分と、レイチェル様を振ったおバカさんを重ねられたのかもしれません。それに……」
それに?
と、私たちはモードリンを食い入るように見つめ続く言葉を待った。
モードリンは笑った。
「フィンリー侯爵が口止め料を払ったから当事者以外は一連の訴訟を知りません。だから私たちが動いたのですもの。皆様が嫌うマシュー様には、困ったちゃんな幼馴染のおイタを知る方法がありませんの。未練ですわ」
だったら、それはそれで質が悪いのだけれど……
モードリンに文句を言っても仕方がないし、フィンリー侯爵に意見するなど以ての外だ。
「で・も」
モードリンが少女のようにキラキラした笑顔で私の方へと身を乗り出した。
「レイチェル様には新しい恋の御相手がいらっしゃるとか!」
この一言がきっかけとなり、マシューという靄は綺麗さっぱり晴れ渡り、私たちは清々しく恋の話題で盛り上がった。
てっきりディナーもご一緒すると思い込んでいたモードリンは意外にも早く腰を上げた。
国王付首席近侍マクシームのスパイの一人であることを示唆していたから、その役目で忙しいのかと思っが、違った。
モードリンの見送りに出た私は、噴水を背に佇む一人の男性を目にし、はっとした。
「エゴン!」
嬉しそうにその名を呼んでモードリンが男性に手を振る。
マクシームは私に向かって慇懃に御辞儀した直後、駆け寄ったモードリンとキスをして、腕を組み寄り添い合って夕焼けの街へと溶けていった。
「名前、エゴンていうのね……」
魂で結ばれた恋人。
モードリンがその恋人だったらしい。
「ロマンチックだわ……」
と、感慨に耽ったその時。
「!」
ノエル王子の元気な泣き声がセイントメラン城から降ってきた。
自ずと笑みを浮かべてしまう。
胸がいっぱいになる。
今ここに、私の幸せがあるのだ。
恋はまだ始まったばかり……
魂で結ばれているなら、私はトレヴァーと結婚するかもしれない。
でも今は、ノエル王子を抱きしめたい。
私は足早に持ち場へ戻った。グレース妃の傍らに。
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