恐ろしい仮面の王妃様 ~妹に婚約者を奪われた私が国王陛下に愛されています~

希猫 ゆうみ

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12(フィオナ)

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「ああ、そうだとも!この顔しか取り柄のない従順な女の価値がわかるか?イデアの妹という事だ」
「それは、どういう……?」
「ああ!揃いも揃って……愚鈍は母親譲りだと思っていたが、今や父親の方も怪しいな」
「も、申し訳ありません」

訳が分からない。
フランクリン様が激高しながら私を蔑み、あの女を褒め称え、母は狼狽し、父は謝罪している。

こんなの、おかしい……

「あれは金の卵だった。まだ目に触れられていない財宝だった。私が所有するよりも更に高貴な男へ嫁がせた方が価値があった。だからこそ妹と結婚して縁戚関係を結ぶ方が良策だったんだ!」
「なっ……!?」
「僕の計画が台無しだ!くそっ!!」

吐き捨てるように言って拳を振り下ろすフランクリン様を愕然と眺めながら、私はポロポロと涙を零し、心からの問いかけをする。

「私を愛して下さったのでは……?」

すると思いがけない罵倒が返された。
身も心も凍り付くような、冷たい言葉。

「愛だと?そんなものはない。馬鹿か」
「……」

言葉を失う。
正しく作り直されたはずの世界が、一瞬で暗黒に支配される。

「なんだ。可愛いと褒めただろう。それで満足できないか?」
「……」
「だいたい君にそれ以上の何がある?」

立ち尽くしていた足から力が抜けて、私はその場に座り込んだ。
フランクリン様は呆れ果てたといったような溜息をつくと、父に向かって忌々しそうに歯を剥き出し暴言を吐く。

「娘の教育を間違えたな」
「申し訳ありません……!その、イデアの方に注力していたので……」
「我々をより高みへと導くはずだった天からの梯子を、貴殿はみすみす蹴り倒したのだ。反省しろ!」
「申し訳ありません!ですが……っ」

父は縋るように続ける。

「一介のシスターで終わるなと命じて送り出しました。イデアは必ず教会の権威を掌握します。そうすれば我々は神を味方につけたも同然です」
「は?神などいない」

フランクリン様の怒りが振り切れ落胆に変わった瞬間だった。
フランクリン様は見開いた目を宙に漂わせ誰にともなく呟く。

「蛙の子は蛙という事か。イデアが奇跡だった」
「……」

そして今ここは地獄。
私は愛されて姉を蹴落とし選ばれたのではなく、姉の利用価値の一部として有効活用されただけだった。

イデア
イデア
イデア

あの女はいつまでも付き纏う呪いのような亡霊のような悪夢。
いっそ姉妹ではなく他人として生を受けていたならば、これほど苦しむ事もなかったのに。

「……フィオナは、どうなるのですか?」

母が乾いた声で尋ねた。
私はぎくりと肩を揺らし、フランクリン様を仰ぐ。

私は……この人に愛されてはいない。
絶望と恐怖が荊のように私を締め付けた。果ての無い拷問を宣告するようにフランクリン様は言った。

「結婚するとも」
「……」

愛のない結婚。
蒼褪め硬直している母を見れば、私がそれから免れる事は不可能だと理解せざるを得ない。

「まだ終わったわけじゃない。イデアは死んだわけではないのだから」

フランクリン様は自らにそう言い聞かせているようだった。
そうでなければ私との結婚は耐えられないとでも言うように。
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