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42(カール)
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「リムマーク大公国の王子様は必ずしも同じダンスを嗜まれているとは限りませんが、今姫様がすべきなのは基礎を身に着ける事です」
息を弾ませて、薔薇色の頬で、封印された無垢な乙女の笑顔を覗かせて、イデアはシャーロットに指導を始めた。
「まずは御辞儀から。さっき見ていましたね?ダンスに誘われたら──」
幸せだった。
もちろん私は生ける教材としてイデアとダンスを踊ったのだと肝に銘じているが、私はイデアに触れ、イデアの息遣いを感じ、しなやかさや華麗な姿を誰よりも間近で観察する機会に恵まれた。
私は教材だ。
邪な想いは抱いたりしない。
「こうです。そう、背を丸めないで」
「はい」
シャーロットが素直にイデアから吸収していく様子も感動的だが、今はイデアと初めてのダンスを踊った幸せを静かに噛み締めていたい。
「殿下」
イデアだけが私の楽園へ踏み込める。
私の夢を破ろうと、イデアこそが私の夢。永遠の輝き。
「妹君ですが、これはレッスンですので」
「ああ。シャーロット、気色悪いかもしれないが深く考えなくていい。私は人間ではない」
「えっ?」
練習相手が半分は血を分けた兄である事より、私の選んだ言葉にシャーロットは驚いているようだ。イデアは動じなかった。
「そうです。姫様、相手は踊る人形です」
「品質は保証する」
「は、はい……」
シャーロットは素直だ。
宮廷へ連れて来られた当初からは想像もつかない今の姿に、私は嬉しさと驚きを隠せない。それもこれも全てイデアの功績だ。
イデアは強く、正しく、美しく、眩しい。
太陽と称するに相応しい令嬢だった。
しかもベールを取った。
真昼の太陽は直視できないが、陽の光に照らされた神々しいイデアは眩しくても恍惚と見惚れていられる。私は神とイデアに感謝せずにいられない。
「よ、よろしくお願いいたします」
シャーロットは乗馬の時以上の緊張を見せたが、私が手を差し伸べると冷静にイデアの教えを反芻している表情でぎこちないながらも上品にダンスに応じる。
初めてのダンスでも私のリードによくついて来た。
「いいですよ。もう一回」
「は、はい!」
イデアに懐き努力するシャーロットの姿には本当に胸が熱くなる。シャーロットを叱咤激励するイデアの姿にも胸が熱くなる。美しい光景だ。
「殿下」
その後、私はシャーロットからイデア、イデアからシャーロットと相手を変え延々と踊り続けた。
逞しい村育ちに乗馬まで習得させた今のシャーロットは細身ながら体力があり、相手をする私も心地よい疲労を感じるほどレッスンに励んでくれた。
この時間が永遠に続けばいいのになどと、儚い願いが胸を過る。
だが私たちは確実にこの日々を終わらせるためにこうして励んでいるのだと忘れる事はできなかった。
シャーロットは去る。
もし幼き日に引き取ることができていたら、私たちは優しい思い出を積み重ねることができただろうか。それこそ見果てぬ夢か。
「殿下、もう一回」
「はい」
イデアに命じられ姿勢を正す。
シャーロットが宮廷で育っていたならば、イデアという教育係は不要だったのだ。
過ぎた事に〝もしも〟はない。
私たちに今与えられたこの日々が、楽しく優しい思い出になるように。
そう願わずにはいられなかった。
息を弾ませて、薔薇色の頬で、封印された無垢な乙女の笑顔を覗かせて、イデアはシャーロットに指導を始めた。
「まずは御辞儀から。さっき見ていましたね?ダンスに誘われたら──」
幸せだった。
もちろん私は生ける教材としてイデアとダンスを踊ったのだと肝に銘じているが、私はイデアに触れ、イデアの息遣いを感じ、しなやかさや華麗な姿を誰よりも間近で観察する機会に恵まれた。
私は教材だ。
邪な想いは抱いたりしない。
「こうです。そう、背を丸めないで」
「はい」
シャーロットが素直にイデアから吸収していく様子も感動的だが、今はイデアと初めてのダンスを踊った幸せを静かに噛み締めていたい。
「殿下」
イデアだけが私の楽園へ踏み込める。
私の夢を破ろうと、イデアこそが私の夢。永遠の輝き。
「妹君ですが、これはレッスンですので」
「ああ。シャーロット、気色悪いかもしれないが深く考えなくていい。私は人間ではない」
「えっ?」
練習相手が半分は血を分けた兄である事より、私の選んだ言葉にシャーロットは驚いているようだ。イデアは動じなかった。
「そうです。姫様、相手は踊る人形です」
「品質は保証する」
「は、はい……」
シャーロットは素直だ。
宮廷へ連れて来られた当初からは想像もつかない今の姿に、私は嬉しさと驚きを隠せない。それもこれも全てイデアの功績だ。
イデアは強く、正しく、美しく、眩しい。
太陽と称するに相応しい令嬢だった。
しかもベールを取った。
真昼の太陽は直視できないが、陽の光に照らされた神々しいイデアは眩しくても恍惚と見惚れていられる。私は神とイデアに感謝せずにいられない。
「よ、よろしくお願いいたします」
シャーロットは乗馬の時以上の緊張を見せたが、私が手を差し伸べると冷静にイデアの教えを反芻している表情でぎこちないながらも上品にダンスに応じる。
初めてのダンスでも私のリードによくついて来た。
「いいですよ。もう一回」
「は、はい!」
イデアに懐き努力するシャーロットの姿には本当に胸が熱くなる。シャーロットを叱咤激励するイデアの姿にも胸が熱くなる。美しい光景だ。
「殿下」
その後、私はシャーロットからイデア、イデアからシャーロットと相手を変え延々と踊り続けた。
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シャーロットは去る。
もし幼き日に引き取ることができていたら、私たちは優しい思い出を積み重ねることができただろうか。それこそ見果てぬ夢か。
「殿下、もう一回」
「はい」
イデアに命じられ姿勢を正す。
シャーロットが宮廷で育っていたならば、イデアという教育係は不要だったのだ。
過ぎた事に〝もしも〟はない。
私たちに今与えられたこの日々が、楽しく優しい思い出になるように。
そう願わずにはいられなかった。
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