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第6章 ー精霊願の日編ー
クロスオーバー 幸運な少年の再生の物語
しおりを挟む空を走る船。
そういわれて皆が想像する造形の船はなんなのだろうか。
海の上なら実現はそう難しいことではない。
しかし空となると、たとえ魔法を用いても技術的には困難を極める。
だが密かに帝国はそれを完成していた。
動力は西の大国リグレルの魔術学院に保有されている魔力塊。
膨大な魔力が発せられており自然現象を起こす特殊な効果を持っていた。
長時間に滞空を保つためには風が必要だ。
だが海に走らせるような船では重量の限界ですぐに空から落下してしまうが、魔力塊を利用することによって船周辺だけにのみ浮き上げるほどの風圧を発生することができる。
その最初の搭乗に選ばれたのが八人。
初日。
最初に到着したのは三人グループ。
「ねぇ、ネロ。やっぱり私も着いてきても良かったのかしら? これでも盗賊団幹部だし帝国に足を踏み入れたら捕まらない?」
銀髪の、軽装な女性が警戒態勢で言う。
その隣で歩くのはネロと呼ばれる金髪の少年。
穏やかな口調で、心穏やかではない相棒に対して返事をした。
「帝国とリンカの盗賊団ってかなり親密な関係だったはずでしょ? 危ない取引関連だけどね……」
「否定はしないわ」
キッパリと認める盗賊団幹部のリンカ。
呆気なさすぎてさすがのネロも苦笑いは堪えきれなかった。
「もう、リンカさんったら。それじゃまるで私は悪い人ですよって自己紹介してるようなものだから辞めたほうがいいよ。本当は悪い人じゃないってことは大勢が知っていることだし」
ピンク色の長髪を揺らしながら上目遣いで注意するのはネロの恋人ジュリエットだった。
「恥ずかしいこと言うわねジュリエット」
「別に恥ずかしいことなんて言ってないよー? そう感じるのはリンカさんが純粋だからだよー」
ジュリエットの太陽のように気持ちよく心のモヤモヤでさえ照らし温かくしてくれる母親的な性格が健在だった。
———ネロたちこそが空を飛ぶ船の初搭乗者の一員である。
どこかでふと、誰かが目を覚ました。
懐かしい匂い。
懐かしい風。
そこは見慣れた遠い世界。
片手には手紙、もう片方には最愛の妻の手を握りしめていた。
男は起き上がる。
そして手紙に目を落とした。
それは空を飛ぶ船への招待状だった。
なにも覚えていない。
ここまでの経緯を、そして状況を。
青年はとりあえず自分の名前を思いだそうと、カッと頭が赤くなるまで考え込む。
そして呟いた。
———エミリオ
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