悪癖

二一

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捕獲

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 腕が痛い。背中も腰も尻も。至るところが裂傷の痛みに悲鳴を上げている。
 逃げなければ、殺されてしまう。エレベーターのボタンを連打し、何度も後ろを振り返った。髪を振り乱した妻が追いかけてくるかも知れない。
 小さな音とともにエレベーターが扉を開く。中にはだれも乗っていなかった。いたのなら助けを求めようと思ったのに。こんな大雨では出かける人間もいないのだろう。
 とにかくここから出て、そう、駅でタクシーを捕まえよう。そのまま大学まで行けば、事情を話してタクシー代金を借りることができる。
 一階までの数秒が果てしなく長く感じた。
 エレベーターの扉が開いた瞬間、鈍い身体で駈けだした。
 が、その身体は数メートルもいかないうちに、大きな身体に抱きとめられた。
「こんな雨の日にどこへ行くの?」
 嫌と言うほど聞き覚えのある声に心臓が止まりそうになった。
「は、離してくれ……頼む」
 奥歯がカタカタと嫌な音を立てている。
「ケガをしているね。手当てしなきゃ」
 それだけ聞けば優しい提案に、いらないからと必死で首を振った。
「おいで」
 まるで手荷物のように抱き上げられ運ばれていく。必死で手足をばたつかせてもビクともしない。
 怖い、怖い、怖い――。
 一階は空き室だらけで誰も住んでいない。
 住んでいないはずだった。
 ガチャン。
 重い鉄の扉が閉まる。
「陽。ピーチウォーターは?」
「ごめん。自販機行く途中で先に弦さんと会ったから」
「ふーん。まぁいいや」
 生活感のない部屋だった。抱えられたまま廊下を奥へと運ばれる。同じ間取りであれば、そこはダイニングスペースになっているはずだ。
 それは予想通りで、空っぽの部屋の真ん中に二人暮らしには大きすぎるテーブルが置かれていた。
「弦さんの手当てをしなきゃ」
「俺は早く遊びてぇんだけど?」
「仕方ないね。じゃあ、手当てしながら遊ぼうよ」
 ガタガタと全身が恐怖で震えている。叫びたいのに声さえでない。もはや、自分の身体すら、自分ではどうにもできなくなっていた。
 大きなテーブルに載せられると、すかさず両手足を抑え込まれた。
「暴れると危ないからね」
 ジッとしてて。優しげな声がつぶやく。
 だけど、それは注意を促すものじゃない。むしろ、暴れられないようにするからという決定事項だ。
 両手足が大きく拡げられ固定されていく。さながら、磔の刑罰を受けているかのようだ。
「ハハ。アンタんちの虫と一緒じゃん」
 意地悪な声が笑う。
 動けないように針で刺して、それから、その身体の隅々までを開いて観察する。
「月。ケガを見たいから服、脱がしてあげて」
 ナイフを手渡された月が、これ見よがしに光る刃先を首元にあてた。ヒュッという情けない音が喉から漏れる。
 皮を剥ぎ、全身をくまなく晒す。
「キズだらけだね」
 酷いなぁ。大きな手が、傷をひとつひとつ撫でていく。
「ここ、すげぇパックリ割れてる」
 指先が腕の擦過傷を拡げた。痛みに動けない身体が跳ねる。
「肉ってキレーな色だよな。ピンクでやらしい色」
 月がその剥き出しの肉に舌を這わせる。恐怖で痛みさえも消えていくような気がした。
「なぁ、陽。なにして遊ぼうか?」
「そうだね。弦さんなら実験ごっことかどうかな?」
 どこをどうすれば、どんな反応を返すのか?
「いいな、それ! アンタ、ドMだし、どこまで感じるのか試してやるよ」
 喉がヒューヒューと情けない空気を吐き出している。
「まずは、こことかどうかな? 女の子なら気持ちよくなれるんだけど」
 強い指先が乳首を捻っては捏ねている。それは、痛みよりもくすぐったさが強く、逃げられない身体を必死にくねらせた。
「ちっせぇから、もうちょっとデカくしねぇと感じないんじゃないか?」
 優しい指先を押しのけた指が、引きちぎらんばかりに乳首を抓って引き上げる。今度は痛みにその身体をよじらせた。
「じゃあ、しばらくコレで抓んでおこうか」
「イッ……! あぅ……っ」
 二つの乳首に痛みを感じて叫んだ。そこには何の変哲も無い洗濯ばさみが止められている。その洗濯ばさみを意地悪な指が左右に揺らした。
「痛い! 痛いから……ぁ……取ってくれ……頼む……」
「陽。次は、どこにする?」
 懇願は聞こえないとばかりに無視されて、二対の目がジッとその身体を見つめていた。
「男が気持ちいいのはやっぱりコッチじゃない?」
「チンコ縮こまってるぜ? だって、コイツもうメスじゃん」
 下腹部で楽しげな相談が繰り広げられている。
「あ、突っ込むより突っ込まれるほうがいいなら、こういうのは?」
 台所のほうで棚の開ける音が聞こえる。すぐに戻ってきた手が、恐怖に縮んだペニスを持ち上げた。
「この穴にも突っ込んでみようぜ?」
 なにをされているのか一切見えないながらも、急所を押さえられた恐怖心がどんどん膨らんでいく。
 冷たい感触がペニスの先に押し当てられた。
「ゃだ……や、やめ……ッヒ――!」
 冷たい金属が尿道口へと差し込まれていく。ビリビリとした痛みが奥へと入り込んだ。足の付け根がガクガクと震えている。
「あと、イクの禁止な?」
 軽やかな声が命令を下し、ペニスの根元と陰嚢を紐で強く縛っていった。
「イ、ギッ……ア゛ア゛……嫌だ、嫌……痛いぃ……もう止め……」
「これだと、お尻のほうが見えないね?」
 優しげな手のひらが、そっと尻の下へと入っていく。その手が、双丘の谷間に忍び込み、まだ鈍く痛むその窄みを軽く撫でた。
「ちょっと腫れてるね」
「そりゃ、昨日あんだけ擦られたもんなぁ?」
 また突っ込んでやろうか。そう訪ねられて必死に首を振った。
「擦られんのはヤだってさ」
「じゃあ、どうしようか。この中のほうが弦さんは気持ちよくなれるんだけどなぁ」
 思案するような声が遠ざかって、すぐにまた戻ってきた。
「これなら気持ちよくなれるかな?」
 その問いかけに、もうひとつの声が甲高く笑った。
「いいんじゃね? 気に入ってくれるだろうよ」
 いいことを思いついたとばかりに笑い合う双子が、また全身をなで回している。
「ちょっと入りづらいから片足上げさせてね」
 左足首の紐が解かれ、膝が小さく曲げられる。その膝をまた固定され、拡げられた。そうまるで片足を上げて翼を広げた鶴のようだ。
「腫れてるからオイルをたくさん……」
 見えないところで何が行われているのか、ひたすら恐怖だけが襲いかかる。
 やがて、尻の穴に何かが押し付けられた。
 それは、硬くて丸い――。
 つぷん。
 なにかが尻の中に押し込まれた。圧迫感に思わず息を止める。
「上手に食べられたね。えらいえらい」
「まだまだ、足りねぇってパクパクしてやがるぜ?」
 ぽっかりと開かれたそこを、乱暴な指先が捏ねていく。ヒクヒクと腹に力が入るたびその塊が奥へと入り込んだ。
「何……抜いて……ねぇ……」
「次のも上手に食べられるかな?」
 ふたつめの圧迫が、今度はすんなりと口を開かせる。
 ゴリ……奥のひとつが、また深くに潜り込んだ。
「ぁ、ぁ……やめ……でなくなる、から……なぁ」
 恐怖に震える頭が優しく撫でられる。
「大丈夫だよ。だってココ、出すのも上手にできるでしょ?」
「ほら、もっと食えよ」
 今度は勢いよく押し込まれ、衝撃に息が止まった。
 腹のなかにいくつもお塊が詰め込まれ、動くたびにそれらがゴリゴリと移動する。
「ヒィィ……ッ……ア゛ぅ」
「ふふ。おなかがゴロゴロなってるね」
 温かい手のひらが下腹部を撫でた。それだけで、奥深くが痺れたように熱くなる。
「アッアッ……やぁぁ――」
「あ、ちょっとイイとこ当たった感じ?」
 双子が笑う。そう、まるでゲームでもしているようだ。
「やめっ……いやだ! もう無理ぃぃぃっ」
 さらに次の塊が押し込まれ、苦しさにもがいた。ゴリゴリと塊同士がぶつかっている。
 ぐぷ……。
「あ……あ……アヒ……ヒ、ギ……」
 はち切れんばかりに広げられた尻の穴が、ギシギシと軋んでいる。その奥は、さっき押し込まれたペニスの金属を震わせた。
「アー……ア、あぅぅ……」
「ふふ。赤ちゃんみたいでかわいいね」
「せっかく食ったんだから出すなよ?」
 窄みから逃げ出そうとする塊が、容赦なく押し込まれる。その刺激に耐えきれず悲鳴を上げた。
「あ、こっちも膨らんできたね」
 洗濯ばさみで挟まれた乳首を引っ張られ、また絶叫が喉から吐き出された。
「今日はここもズボズボしてやるからな」
 ペニスに差し込まれた金属が、上下に動かされる。それは、なんの液体か滑りをもちながら嫌な音を立てた。
 自分のものとは思えない叫び声がまき散らかされる。
「タマもパンパンじゃん」
 陰嚢を何度も握られ、ペニスの中を擦られ、尻の塊を押し込まれる。
 絶叫、絶叫、絶叫。
 痛み、苦痛、恐怖。
「ハハッ、気持ちいいのかよ? チンコ勃ってるぜ」
 嘲笑うようにペニスを扱かれ、また痛みに叫んだ。
「ヒグッ……痛、い……! 痛いぃぃぃ!」
 頭の中が爆発しそうだ。
 痛みがどんどん腹の奥へと溜まっていく。
「痛い? それだけ?」
 優しい声が耳元で囁く。そして、温かい手のひらが下腹部を柔らかく撫でた。
 途端に、痛みのなかに熱が生まれる。
「ねぇ、痛いだけ? ここ、気持ちよくなってるみたいだけど」
 紐で縛られたペニスの根元を、ゆるゆると撫でられる。それだけで、全身に痺れが駆け抜けた。
「熱ぃ……出したいぃ……」
 涙と鼻水にまみれながら欲を訴える。腹に溜まったマグマが今にも爆発しそうだった。
「いいぜ、こっち擦ってやるからイケよ?」
 笑い混じりの許可が下され、そしてこれまでよりも激しくペニスの中を擦られた。
 電気ショックを与えられたように身体が跳ねる。濁音だらけの悲鳴が絶え間なく吐き出される。
 不意にペニスの中から芯が抜き取られた。
 強烈な熱が駆け上る。
「ッアアッ――! ヒィィィ!」
 自由にならない腰を持ち上げ、熱い液体をまき散らしながら達した。全身がガタガタと震え続けている。
「気持ちよすぎてお漏らしするなんて、悪い子だね?」
「悪い子にはお仕置きだよなぁ?」
 縛られたテーブルの上は水たまりになっている。
「も、タスケ……何でもする……何でもするから……ァ……」
「なんでも?」
 その甘い確認に必死で縋り付くように頷いた。
「なんでもってことは、俺たちのペットになるってことだけど?」
「そんなの、無理……なん、で」
 涙で視界がぼやけている。
「ペットにならないなら、実験ごっこを続けるよ?」
「ペットってアンタはどうやってた? 実験に使ったヤツはどうなった?」
 歌うようにリズムをつけた問いかけが、耳に押し込まれていく。
 ペットは飼うものだ。飼育ケースに入れて、エサを与え、湿度を管理して大事に――。そして、実験はメスで体を開いてその奥深くまで――。
 ゾクリと背筋が冷えた。
 今の自分は実験体だ。
「あ、あ、あ……そんな……酷い……」
「酷いの?」
「なんで?」
 アンタだって同じじゃないか。頭の中で誰かが嘲笑っている。
 さぁ、どうする?
 優しい声が繰り返す。
「……なる」
「え?」
「ペットに……なる……から……助けてくださ……ぃ」
 奥歯がカチカチと鳴っている。
「いい子だね」
 優しい手が頭を撫でた。
「ちゃぁんと言うこと聞けたらご褒美な?」
 両手足の拘束が解かれ、身体が床へと下ろされる。腹のなかに詰められた塊が、またゴリゴリと動いた。
「まずは、お漏らしのお仕置き」
「四つん這いになって、ケツを上げな」
 嫌だということはできなかった。従えないのなら、殺されてしまう。
 ゆるゆると膝に力を入れ、言われた通りに尻を高く上げた。
「もっとだ」
「これ以上は、むり……」
「足を開け」
 ああ、なんて格好だろう。これではペットというよりも残酷な剥製だ。
「20まで数えたら許してあげるよ」
「え? ……ッッ!」
 優しい声がそう宣言するなり、尻に鋭い痛みを感じた。皮膚を叩く高い音が部屋に響く。
 2回、3回……。
「ほら、数えなきゃ終わらねえぜ?」
「っい……ッチ――に……ぃ!」
 一定速度の平手打ちは、容赦なく尻を叩く。
「ッロック……ぅぅあ……なな……アアアッツ」
 ぶたれる衝撃が、腹のなかの塊へと伝わっていく。ビリビリと別の痺れが下腹部へと溜まっていった。
「じゅ……に……っさん……」
「聞こえねぇよ。ほら、12から」
 12、13――。
 どこか遠くで破裂音が響く。
 16、17。
 痛い、熱い……キモチ、イイ。
「……っに、じゅ……っ……アアッ――ッ」
 膝が震え、自分を支えることも出来ずに突っ伏した。
「ケツ叩かれてイクなんて、マジで変態じゃねぇか」
「かわいいよ」
 何度も叩かれた尻を撫でられ、またその痛みに呻いた。
「ほら、もう出していいよ?」
 これも――。
 優しい指先が、腹のなかの塊を押す。
「出、す……?」
 どうやって?
「力めよ。クソするときみたいに」
「そんな……」
 そんな屈辱を、人に見られながらなんて到底。
「できない?」
 できないなら、やらなくてもいいよ。
 優しい口調は残酷な選択肢を突きつける。
「待って……やる、やるからぁ……」
 尻を掲げ、腹に力を入れる。羞恥に顔が熱くなった。
「ぁ……う」
 嫌なガスの音とともに、ひとつめの塊が床に落ちた。それはコロコロと転がって目の前を通り過ぎる。
 それは、ゴルフボールだった。
 あと何個だ?
 また、腹に力を込める。
 ゴト、ゴト……。
 長く力んだせいで息が上がっていく。まだ、腹の奥には塊が残っていた。
「ほら、もうちょっと頑張れ」
「早くしろよ。このままチンコ突っ込むぜ?」
 ペチペチと尻をはたかれ、また恐怖に震えた。
「やるから、待って……お願い……」
 震えながらも力を込める。それなのに、最後のひとつはなかなか出てこなかった。
 じわじわと塊が移動する。肉壁が膨らみ、その出口に盛り上がる感触があった。あと少しだ。
「はーい。時間切れー!」
 残酷に宣言するなり、腰が捕らえられた。
「奥までゴリゴリできるから、楽しめよ?」
 言うなり、それが突き立てられた。出口の近くまで移動していたゴルフボールが一気に奥へと押し込まれる。
 その圧迫に息が止まった。
「ア、ガッ……ッ」
「あーあ、今日はユルユルじゃん」
 奥深くまで何度も突き立てられ、そのたびに叫んだ。
「アアッ……ア……ャアアッ」
 じゅぶじゅぶと気持ちの悪い音がリズミカルに響いている。
 押さえつけられたせいで、洗濯ばさみを挟まれたままの乳首が床に擦れる。
「ヒァッ……イッ……ギ」
 痛い。
 苦しい。
 それなのに――。
「ほら、月。ちょっと変わって」
 ずるりとペニスが抜き出され、そこに今度は指が押し込まれた。指が、指だけじゃなく、手のひら、が――。
「ア、ギ……ィ……ヤ、メ……」
 奥へと突っ込まれた指が、ゴルフボールに届く。
「あったあった」
「ヤメ、ヤ……苦し……」
 狭い肉壁の中で押し付けられたボールが、ゴリゴリと壁を引っ掻いていく。
「あ、アーーーッ」
 苦しい。
 苦しい。
 なのに、なんで。
 ゴトン。ボールが床を跳ねる。
 空っぽになったそこが、ヒクヒクと蠢いた。
「うわっ気持ち悪ぃ……パクパクしてやがる」
 気持ち悪いのが嫌いとは限らない。
「うん。むちゃくちゃに犯したくなるね」
 空っぽのそこに熱い塊がねじ込まれる。それは、なんの抵抗もなく奥深くまで迎え入れられた。
「ガバガバになっちゃったね。月も挿れる?」
「挿れる、挿れる」
 片足を大きく持ち上げられ、並んだ双子が同じ穴にペニスをねじ込んだ。
 交互に抜き差し、喚き続ける身体を犯し続ける。
「アー、アー……ヒグゥ……ゃあぁ」
 痛い。
 キツい。
 苦しい。
 それなのに――。
 床に擦りつけられた洗濯ばさみが弾かれた。
 鋭い痛みが乳首を刺す。
「ア……ぁ……アアアアアアッ――!!」
 なんで。
 これが気持ちいい?
 どれだけ、犯され続けた?
 腹のなかに吐き出された精は、まるで媚薬のように思考を奪っていく。
 ぼんやりと上下に動く床を見つめた。
 少し離れた床を、気味の悪い虫が這っている。
 その虫は、無を閉じ込めた目で、ジッとこちらを見つめていた。
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