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16.ラフレシア・カーバイト①+α
しおりを挟む*今話、【胸糞警報発令!】です。
内容が胸糞(不快になる)表現多数なので、苦手な方は全力で回避願います。
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バーデンウッド王国の東部辺境領の片隅(南地区)でカーバイト男爵家の長女として生まれた。
貧しい農家の子だくさんな家庭に生まれた祖父は、商人の元で身を粉にして働き、その後独立して店を今の大店にした立身出世の人で、生家のある地域一帯が水害にあった時に店にある物資を放出した功績で男爵位を賜ったらしいの。
男爵家と言っても名前だけで、割と裕福な平民といった感じ。
そんな家に生まれ、蝶よ花よと育てられた私は、物心がつく頃には自分が美しいと自覚していたと思うわ。
そして五才の時、運命的な出会いをして婚約したのよ。
お相手はウェルナー・トルマリン様。子爵家の次男で、まるで絵本に出てくる王子様みたいな人。
勿論、トルマリン家から申し込まれた婚約に即OKしたのは言うまでも無いわ。
それからはウェルナー様一色の日々。
婚約した後すぐ他家からも婚約を申し込まれたけど
「お・こ・と・わ・り!」
したわ。当然よね。
だって、四才も年上なのよ有り得ない。
それに、その年で婚約者がいないなんて、絶対売れ残りに決まっているわ。
後になって断った相手がライアン様だったと分かった時には驚いたけどね。
△▽△▽△▽△▽▽△▽△
婚約者も決まり、貴族子女が通う学園に私も入園する事になったの。
勿論、ウェルナー様も一緒よ。
だけどウェルナー様ってもの凄~く奥手でイライラしちゃう。
周りの女子達は手を繫いだり、デートしたり、平民の子ですらあんな事やこんな事をしてるって言うのに、手すら繫いでくれないの。
いつも自慢話ばかりするあのカトリーネですら、婚約者のニールとキスしたってドヤ顔で言ってくるから頭にきちゃう。
もう、ウェルナー様ってば何で分かってくれないのよ!
そんなある日、偶々同じクラスの男子生徒と話をしてたら、ウェルナー様が焼き餅を焼いて
「行こう、ラフレシア。」
と言って手を握って自分の方に引き寄せてくれたの。
キャ~!!
もう、私、嬉しくて舞い上がってしまったわ。
それでその時、閃いたの。
彼に焼き餅を焼かせ続けたらキスもできるんじゃないかって。
それからは色んな男子生徒に話しかけたり、ボディータッチしたり。
思った通りウェルナー様が手を繫いだり、肩を抱き寄せたり…。
後から思えばこの時が一番幸せだったわ。
そんな彼が変わってしまったのは学園を卒業してから。
会う機会が減ったし、デートも二人だけのお茶会も殆ど無し。
家に来ても絶対に二人きりにならないし。
もう、どうなってるのよ!って感じ。
だけど、町でお買い物をしている時に偶然出会ったライアン様と楽しくお喋りした日の夜、ウェルナー様が花束とプレゼントを持って家に来てくれたり、
「頼むから止めてくれ。」
って後ろから抱き締められちゃったり!ウフフ。
気の所為かと思っていたんだけど、やっぱりライアン様相手だと良いリアクションが返ってくるのよ。
だからライアン様の予定を調べて、偶然を装って何度も【ウェルナー様に焼き餅を!】作戦を仕掛けたわ。
けど、暫くすると何のリアクションも返ってこなくなった。
何でだろ?
それどころか、「もう会わない。婚約は解消させてもらいたい。」って言われちゃった。
何で彼がそんな事を言いだしたのか、正直分からなかった。
そして、知らない間にウェルナー様と私の婚約は解消されてしまったの。
ねぇ、何で?何でなのよ!
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+α
【ウェルナー・トルマリンのぼやき】
僕には皆が羨ましがるほど綺麗でカワイイ婚約者がいた。
その子と婚約できた時は天にも昇るほど嬉しかった。
大切だから大事にしよう!って思ったし、大事にしていた。
なのに、僕が婚約者なのが嫌だったのか色んな男子生徒に秋波を送ったり、ボディータッチしたりするんだ。
僕はクラスメート達から笑い物にされるし、婚約者がいる奴から苦情を言われたし、ちゃんと構ってあげないからだと女子生徒達から責められた。
だから、彼女が男子生徒に近付く度に、そこから引き離したり、彼女に贈り物をしたりと大変だった。
何度も「止めてくれ。」と言ったのに全然止めてくれない。
お陰で僕の学園生活は、彼女の行動を詫びて回る毎日で疲れ果ててたよ。
だけど、彼女の父親から何度も「娘の事をよろしく頼む。」と頭を下げられているから仕方ない…。
学園を卒業して、やっとそんな毎日から解放されてホッとしたのは言うまでもない。
彼女と結婚したら、彼女の実家が経営している店の仕事を手伝う事になっていた。
そして、ゆくゆくは店の経営を任せて貰える筈だったんだ。
だからその為の勉強を兼ねて仕事を手伝う事になっていた。
なのに、学園時代に彼女の後始末ばかりで何もできていない。
特に最悪だったのが、学園卒業後に南の辺境伯家の跡継ぎであるライアン・ガーネットに擦り寄っていく事だった。
昔、彼から婚約を申し込まれたが断っているという事があるから下手に手を出されると大事になりかねない。
過去に何の関わりも無い相手に擦り寄っていくのとは訳が違う。
おまけに彼の婚約者は、北部辺境のあのカーネリアン家のご令嬢なのだ。
それが分かってやっているのか、分かっていないのか…。
どちらにしても勘弁して欲しい。
おまけに、彼に対して特に積極的に行動するから質が悪い。
しかも人目の多い町中で…である。
学園時代、何度後ろから羽交い締めして止めたか分からない。
卒業後は男子生徒達との接点は、夜会やお茶会等の社交時だけだから安心していたのに…。
僕の耳にその噂が入った時には、周囲にかなり広まった後だった。
まさか卒業後にまでライアンに擦り寄ったりしているとは思わなかった。
忙しくて構ってやれなかったからだと思い、花束や贈り物を持って会いに行ったりしても駄目で、益々エスカレートしているみたいだった。
当然、僕やラフレシア、双方の親の耳にも噂は届く事となる。
僕の父や彼女の父親も火消しに走り回ってくれたが、相手が相手だけに追いつかず、噂を消す事はできなかった。
兎に角、噂の大きさや伝達スピードとその対象の注目度は比例する。
噂が広がるのは本当にあっという間だった。
いい加減もう、限界だ。
僕にはどうする事もできない。
「もう会わない。婚約は解消させてもらいたい。」
とうとう堪えきれなくなった僕は彼女に言った。
そんなある日、父に呼ばれて執務室に行くと、
「カーバイト男爵家との婚約は解消した。今後一切関わるんじゃないぞしない。分かったな。」
そう言われた。
恐らく、親同士の間で僕や彼女に分からないように話し合いが行われていたのだろう。
ラフレシアには悪いけど、僕はホッとしたんだ。
これでやっと彼女から解放されるのだと。
そして、すぐにモーリス辺境伯家と寄子関係のサマンサ・ターコイズ男爵令嬢との婚約が結ばれ、結婚後は男爵家に婿入りする事が決まった。
ラフレシアは婚約解消に納得していなかったようだが、貴族家に生まれた身として仕方ない事だと理解して欲しいと思った。
それ以来、僕は彼女とは会っていないし、思い出す事すら無かった。
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*感想欄でご指摘いただいた“ ラフレシアが婚約解消後にライアンに近付いた ”という設定を、婚約解消後⇨学園卒業後に変えさせていただきました。
ご迷惑をかけて申し訳ありません。
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*いつもお読みいただきありがとうございます。
*お気に入り登録やしおり、エールを送って下さった方々本当にありがとうございます!
*この後も、場面に応じたサイドストーリーが続きます。
応援ありがとうございます!
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