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番外編【感謝御礼!!】⑤
しおりを挟む両親から、来客があると聞いて、ビーチに遊びに行くのは無理かと思った。
だが、意外にも先に遊びに行っていいと言われ、エーブと二人で出かけた。
素潜りして、貝や魚を捕ったりして遊んでいた。
海面に顔を出した時、砂浜に誰かいるのが分かった。
かなり距離があったのと、鐔の広い白い帽子を被っていたのとで、相手の顔までは見えなかったが、白いワンピースを着た女性二人だったから、てっきり母と客人だと思って気にも留めなかった。
しかし、捕った魚や貝が入った網を持って、エーブと浜辺の方へ戻って行く俺達のに向かって手を振り、波打ち際まで駆けて来る。
「ウィルー!、エーブー!」
俺達の名前を叫んでいる。
白い鐔広帽子を被って、白いワンピースを着ている二人の女性は、母と客人ではなく、幼馴染みのジークリンデと、その友人(?)だった。
「大漁だったみたいね。」
「あぁ、思ったよりも捕れたよ。……ちょっとそこで着替えてくるから。」
近くの、木が何本か生えている場所を指差して言った。
エーブとそこまで行き、急いで着替えると二人の所に戻った。
「ジル、久しぶり。…と…?」
「アストリッド様、こちらは従兄弟で幼馴染みのウィリバルトとエーベルハルトです。どちらもリンドブルム侯爵令息ですわ。」
「…で…ウィル、こちらはアストリッド王女殿下よ。」
「「!?」」
ウィルとエーブは驚いた。
「え?王女殿下が護衛を付けずに……って…ジルが…。」
そこまで言った所で、ジルが得意気に胸を張る。
「そ、私がいるって訳。」
ジルが、どや顔で言う。
「とはいえ、ジル一人じゃ無理があるんじゃ……。」
「馬鹿ね。ここにウィルもエーブもいるじゃない。」
「 ……。」
相変わらず、ちゃっかりしているというか何というか……。
やっぱりジルは何処までいってもジルだな。
エーブの方を見ると、チベスナ顔をしていた。
ま、そうなるわな…。
「ぷっ……。」
驚いた。
ジルの隣にいた王女殿下が吹き出した。横を向いて肩を震わせている。
いつも、取り澄ました表情をしているというイメージしかなかったのに、こんな笑い方もするんだ。
王女というよりも、貴族のお嬢様といった仕草に少し親しみが湧いた。
「王女殿下でも吹き出したりするんだ。」
「「っ!?」」
慌ててエーブの口を手で塞いだ。
「エーブ、不敬にあたるぞ。」
「 ……。」
しまった!という顔をしているエーブ。
「っく……あははは…。」
声を上げて笑い出した王女殿下にビックリした。
が、そのリアクションは好ましく見えた。
が、次の瞬間、俺とエーブに海水が掛けられた。
ジルが声を上げて笑う。
目を瞠って驚いていた王女も笑った。
王女が笑った事で、調子に乗ったジルが両手で掬った海の水を更に掛ける。
宙を舞う水飛沫が、日の光に照らされて、王女の周りでキラキラと輝く。
見惚れていると、顔にかかり、目に入って滲みた。
「アスに見惚れているからよ!」
「ッ!!」
俺を揶揄って笑うジルに、仕返しとばかりに、海水を両手で掬って掛けた。
「きゃっ!」
ギョッとして、視線を横に移すと王女の服にまで海水が掛かっていた。
「も、もも、申し訳……。」
言い切らないうちに、海水が俺に掛けられた。
「アハハハ……。」
呆気にとられた。
まさか王女が海水の掛け合いに交ざるとは思いもしなかった。
「やったな!」
やり返して海水をかける。
そして、近くで笑っているジルとエーブにも掛けた。
そこからは、四人で海水の掛け合いになり、両親達が来た時には四人ともずぶ濡れで呆れられた。
先に戻り、軽く湯浴みをして着替えておくように言われた。
別荘に帰る道すがら、何時まで滞在するのか、明日は何をして遊ぶか等の話をした。
湯浴みして着替えた後、父からの厳しいお説教が待っていた。
「本来なら、不敬罪に当たるのだぞ!」
そう言った父は、久しぶりに震え上がるほど怖かった。
けれど、決まり事や有るようで無いプライバシーや重圧に対して、いつも気を張っていないといけない王女の気晴らしになって良かったとも言われた。
そして、王女から近衛騎士になり将来的には、専属護衛になって欲しいと打診されたと伝えられた。
何でも、王宮では王女専属の侍女とアス以外に信用がおける者が少ないらしく、今は一人でも多く、信用出来る者を集めたいのだそうだ。
俺は父の了承を取って、騎士養成所から士官学校にはいり、卒業後に少尉待遇で近衛騎士団に入団する事が決まった。
だが、これは飽くまでも非公式な物で、近衛騎士団に入団後二年が経過してから正式な物になるという話だった。
しかし、それでも良かった。
彼女を護る立場を手にする事が出来るのだから。
~~~~~
翌日から、別荘を離れるまでの間、互いの別荘を行き来しながら、屋内ではチェスやカードゲーム、屋外では海で遊んだ。
けれど、何事にも終わりはやってくる。
楽しかった別荘での生活が終わるのも、気づけばあっという間だった。
別れの日は呆気なく訪れ、その年の夏は終わりを告げた。
~~~~~~~
これにて【感謝御礼!!】番外編は終了です。
最後までお付き合い(お読み)頂き、本当にありがとうございました。
お気に入り登録、しおり🔖も本当にありがとうございました。
また他の物語でもお会い出来たら嬉しいです。
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