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2. ランディ Side
しおりを挟むいつからだろう?
彼女の事を疎ましく思い出したのは…?
いつからだろう?
彼女の事を腹立たしく思い、虐げてもいいと思うようになったのは…?
彼女との婚約を後悔しだしたのは…?
~~~~~~~~~~~~~
俺は、このルーベンス王国の王太子、ランディ・トーア・ルーベンス。妹が2人いるが、男兄弟がいないので、生まれた時から王太子だ。
そんな俺にも7歳の時から婚約者がいる。
彼女に初めて会った時、きょとんとしたその顔がとても愛らしくて可愛くて堪らなかった。
まるで小動物みたいで、ぎゅ~ッと抱き締めたくなるのを我慢するのが大変だった。
俺が彼女に初めて出会ったのは、7歳の時に王宮で開かれたお茶会だった。
ただのお茶会ではなく、俺の婚約者か婚約者候補を選定する事を目的に開かれたお茶会なのだが、俺はそんな事に興味はなかった。
本当は出席するのさえ嫌々だったのに、父と母からは王太子としての義務だからと言われ、渋々出席した。
俺が心配していた通り、周りを令嬢達に囲まれ、彼女達の相手をするのに疲れて端の方へ行こうとしていたら、何かがヒラヒラと風に吹かれて俺がいる所まで飛んできた。
空中を漂っていたそれを掴むとリボンだった。
そのリボンが飛んできた方を見ると、何かを探している女の子がいた。
彼女の物だと思った俺はそのリボンを彼女に手渡しに行った。
「これ、君のだろ?」
そう言って差し出すも受け取らず、きょとんとしている。
なんだ、この可愛い生き物は…
尚もきょとんとしているので、不思議に思って首を傾げた。
すると彼女の肩がビクッと跳び跳ねた。
「あ、あの、ありがとうございます!」
引ったくるようにリボンを俺手から取ると、踵を返して走り去ってしまった。
呆気に取られたが、次の瞬間俺は可笑しくて大笑いした。
彼女と一緒に居たいと思った。
小動物のように愛らしい彼女となら、婚約したいと願ってしまったのだ。
しかし、そこではたと気付いた。そう、彼女の名前である。俺は彼女を探したが見つけ出す前にお茶会はお開きになってしまった。
帰るところを引き留めて名前を聞こうと思ったのだが、それだと目立ち過ぎる。
それに、王太子である俺に名乗らなかった事で、咎められたら…。と思うと声をかけられなかった。
仕方がないから、次の機会を待つ事にした。
翌日、父と母に呼び出され、リボンの話をされた。心当りがあるか聞かれ、あると答えると、近いうちに親子揃って王宮に来ると教えられた俺は、彼女と婚約したいと父と母に願い出た。
2人はとても喜んでくれ、名前も告げずに走り去ってしまった彼女の名前を教えてもらった。
彼女の名前はリンジー。リンジー・カスペラード辺境伯令嬢だと。
俺はリンジーに会える日を指折り数えて過ごした。ワクワクして、ドキドキした。
そして当日、彼女に会った。
かなり緊張しているみたいだったけれど、そんな姿も可愛くて堪らなかった。
父の口から婚約の話が出ると、親子揃って3人共、同じ様に首をこてんと傾け、きょとんとしていた。3人並んだそれを見た俺は微笑ましく思った。
そして、無事彼女が婚約者に決まったその夜、嬉し過ぎて、中々眠れずにいた。
辛くて厳しい王太子教育が続く日々の中で、婚約者になった彼女と会える日が待ち遠しくて、楽しみな日になった。
事実、彼女と会えた日は楽しくて仕方なかった。
それまでダンスは苦手で練習の時はつまらなかったけれど、彼女と一緒にレッスンを受ける日は、楽しかった。
彼女と踊る事で、ダンスが楽しいものだと心から思えた。
リンジーと踊る前は、幼馴染みのローザリンデがダンスのパートナー役をしてくれていたのが、必要以上に身体を密着させてくる所為か、とても踊り難くて楽しくなかった。
けれど、リンジーと踊ると身体が羽の様に軽く感じて、彼女も蝶が舞うみたいにヒラヒラと軽やかで、とても踊り易かったからだ。
あと、彼女と定期的にお茶会をするのも楽しかった。
が、リンジー と仲良くなりたいからと、幼馴染みのローザリンデがお茶会に顔を出すようになって以降、徐々にリンジーの顔から笑顔がなくなっていったような気がした。
最初は何で?と気になったが、ローザリンデに相談すると、殿下には内緒にしてと口止めされた上で、「殿下とのお茶会は全然楽しくない。毎回、苦痛だ。」と彼女が言っていたとローザリンデから聞いて、ショックを受けた。
曰く、俺の会話がつまらなくて苦痛だそうだ。
俺は口数が少ないし、気が利いた事なんて言えないからつまらないのか…。
それまで、俺と同じ様に彼女も楽しいと思ってくれていると思っていたのに…。
じゃあ、今までの彼女の笑顔は、気を遣っていた笑顔だったんだとわかって落ち込んだ。
そして、回を重ねる毎にお茶会の雰囲気は悪くなっていって、ローザリンデが気を使って俺と会話してくれる様になった。
リンジーは、今では殆ど俺と会話しない。気を使って俺から話しかけても、ええ。とか、いいえ。ぐらいしか話さなくなった。
そして、俺が12歳ぐらいになった頃から、父と母から、もう少しリンジーに気を使ってあげないと…。とか、優しくしてあげなさい。と注意されるようになった。
その度に、俺は気を遣っているし、優しくしている。と言うのだが、父も母も信じていないのか困ったように笑うだけだった。
それをローザリンデに相談すると、私との会話が楽しい。と言えば焼きもちを妬いて、もっと話しかけてくれるかもしれない。とアドバイスしてくれた。
やっぱり、同性の方が同じ女の子の彼女の事が解るんだな。と関心した。
そして、リンジーにそう言ってみたら、以前よりは話しかけてくるようになった。
俺はもっと彼女に話しかけて欲しくて、会う度に、ローザリンデとの会話は楽しい。と言った。
今にして思えば馬鹿な事をしたと思う。当時の自分を殴ってでも止めたくなる。
俺と会う度に、俺と一緒にいるのがそれ程嫌なのかと言いたくなるような、どこか辛そうな表情をするし、俺の顔色を伺い、気を遣っているのか、おどおどと話しかけてくる彼女にイライラするようになっていった。
ローザリンデの天真爛漫さに癒されていた俺は、始めは少しでもリンジーに見倣って欲しいと思っていたのだが、全然態度を改めないどころか、益々俺をイライラさせる彼女との婚約を後悔しだした。
こうなると分かっていたら、彼女と婚約などしなかったのに…と。
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