【改稿版】それでも…

雫喰 B

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19. 事後

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*いつもお読み頂きありがとうございます。
*前話でヒロインが負った傷で、配慮(妊娠等、下半身について)配慮が必要な場面があります。
    苦手な方は全力で回避して下さい。読まれる方は自己責任でお願いします。


~~~~~


    庭園の奥まった一角は、混乱の坩堝るつぼと化していた。

    というのも、その場所に問題があった。
    庭園だから、近衛騎士団の管轄だとしてもおかしくはないのだが、近衛騎士団の詰所や仮眠室、団長の執務室等がある管理棟から遠く、同じ施設を有する王国騎士団の管理棟が最も近い。

    そして、この庭園は一般に解放される事もあり、双方の管轄だった為にこの様な混乱を招いてしまった。

    何より、事件の関係者の一人が、王国騎士団団長の子息だった事で、事件の第一報がもたらされたのが王国騎士団だったのだ。

    しかし、王太子が事件の関係者であった為、近衛騎士団までが事件現場に来てしまい、収拾がつかなくなった。

    が、近衛騎士団団長のヘンリー・ラインバッハ侯爵が登場した事で漸く収拾がついた。
    そして、彼は現場に居た騎士全てに箝口令を発令した。一言でも洩らせば厳罰に処する旨、徹底させたのである。

    とはいえ、王国騎士団団長のアクシオン・フォラス侯爵が、第一報で現場に駆けつけていたが、子息が事件に関わっていた為に指揮を執る事が出来なかったのも、混乱の原因の一つだった。

    両騎士団の規定で、身内が事件に関与している場合は、事件そのものに関われない。というものがあるからなのだ。

    報告を受けた国王は、玉座の肘置きを手に力を込め過ぎて、粉砕した。
    そして、王妃は意識を失ってしまった。

    事件の一つを起こした王太子は、即日廃嫡、幽閉が決定した。
    
    リンジー・カスペラード辺境伯令嬢に暴行を働いた王国騎士団団長の子息、リチャード・フォラスも、即日収監されたのだった。

    そして、暴行の被害に合い、王太子に刺された辺境伯令嬢のリンジーは、未だ生死の境を彷徨っている。

    あと、リビルド伯爵家の令嬢、ローザリンデを斬り棄てたとして、王国騎士団団長のアクシオン・フォラス侯爵が、身柄を拘束されたのだった。

    取り調べに対し、フォラス侯爵は「である。」としか述べず、詳しい動機は今なお不明である。

    そして、辺境伯令嬢を刺した王太子は今も混乱しており、自分が刺した事は認めているものの、詳しい動機は不明である。

    ただ、事件が起こった現場に、ローザリンデ嬢が居たのかは、未だ不明であった。

~~~~~

    事件当夜 、王宮内の応接室は重苦しい雰囲気に包まれていた。

    事件直後、王国騎士団管理棟内にある医務室に運ばれた、辺境伯令嬢のリンジーの負った傷の処置がまだ行われていた。

    彼女の意識は、まだ戻っていない。斜め上から剣で刺された傷は、単に刺されただけでなく、抉るように捻られた事により、思った以上に酷い傷を負っていた所為である。

    ソファーに座った辺境伯は、膝の上に肘を乗せ、頭を掻き毟っていた。

    辺境伯夫人は意識を失った為、王宮内の客間で休んでいる為、ここにはいない。
    護衛を務めていたローランドはここにいたが、侍女のスージーは辺境伯夫人に付いている。

    誰もが疲労の色を濃くしていた。

    そんな中、日付けが変わる少し前に、国王と宰相、王太子の侍従をしていた宰相の子息が部屋に入って来た。

    国王の顔を見るなり、詰め寄った辺境伯をローランドが押し留めた。

    苦渋を滲ませ、国王が皆に座るように命じた。

    そして、宰相の口から取り調べで得られた事件の内容が語られた。

    王国騎士団団長の子息で、王太子の側近でもあったリチャード・フォラスが、リンジー嬢に暴行を加えている所へ、王太子とローザリンデ嬢が来て、不貞行為をしていたとした王太子が、リンジー嬢を殴った後、剣で刺した。

    その直後駆け付けた辺境伯家侍女のスージーによって、第一報がもたらされ、王国騎士団団長、アクシオン・フォラス侯爵と部下数名、侍従と側近が現場に駆け付けた。

    尚、現場到着直後、フォラス侯爵が王太子を殴り、部下に拘束を命じた。同様に子息を殴り、これを拘束させた後、ローザリンデ嬢を斬り棄てる。後に、令嬢の死亡が確認された。

    そして、この事件には不審な点が幾つかある事も告げられた。

    国王は、カスペラード辺境伯に頭を下げた。
「こんな事になってすまない。」と。

    ローランドは疑問に思っていた事を聞いた。“何故、現場にローザリンデが居たのか?”という事を…。

    宰相は答えた。

    今はまだ調査中であるが、現場に居た以上、無関係ではない。とした上で、分かり次第報告する事を確約した。

    その報告が終わると、国王と宰相は退出して行ったのだった。

    そして、再び重苦しい空気が室内を支配した。

~~~~~

    長い長い夜が明けようとしていた。

    ローランドが医務室へ様子を見に行こうと立ち上がった時、扉をノックする音が響いた。

    返事もそこそこに、彼が扉を開けると王国騎士団の団員と白衣を着た人物が立っていた。

    団員と白衣を着た人物は室内に入って来て礼をすると、リンジー嬢の処置が終わり、医師から説明がある事を伝えた。

    団員の後ろから出てきた医師が口を開いた。

「宮廷医のヨハン・エセルバートでございます。令嬢は何とか一命を取り留められました。が、まだ意識が無く、予断を許さない状況で、この2,3日が山でしょう。」

「 …そんな…。」

    辺境伯が頭を抱えた。

    だが、それだけではなかった。

「恐れながら…申し上げ難いのですが…」

    辺境伯が青ざめた顔を医師に向け、まだあるのか?と言わんばかりの表情で次の言葉を待った。

「申し上げ難いのですが…ご令嬢の傷は思ったよりも酷く、単に刺されただけでなく、抉るように捻られた事で、左右にある卵巣の内、片方が傷付けられ、摘出した為、子ができ難くなるかと…。もう片方あるので、出来ないという訳では無いのですが…。あと、意識が戻られてから、本人に確認せねばならないのですが、背骨の近くまで傷が達していた為、下半身の感覚が無い場合、歩く事は困難…出来ないやもしれません。」
「「「 そんなッ!? 」」」

    その場に居た全員が顔色を失くし、絶句したのだった。

~~~~~
*お気に入り、しおり等、本当にありがとうございます!
    元気を貰っているみたいで、有り難いです!
  

    

    
    
    

    
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