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20. 悔恨の念
しおりを挟む私を刺した時、彼は涙を流していた。
「泣きたいのはこっちよ!」と言ってやりたかったけど、突然の事過ぎて…そして、何よりその時の彼の表情が悲しすぎて…。
…言えなかった。
ふと、これまでの事を思い返してみれば、後悔する事ばかりだったような気がする。
ローザリンデがお茶会に参加するとき然り、殿下からの贈り物の事も…。学園での事も、エスコートやファーストダンスの事も…。
あれもこれも…。思い返してみれば、殿下とギクシャクしだしてからの事の全てがそうだった。
当然よね。
“それでも…いつかは分かってくれる。”そう思うだけで、行動を起こさなかったのだから…。
そうして、後悔ばかりが積み重なって…。まるで、雪が降り積もるように…。
もっと殿下と話し合っていれば、違う未来があったのかもしれない。
もっと殿下に、真摯に向き合っていれば、こんな事にはなっていなかったのかもしれない。
けれど、もうそれも遅すぎたのね。
だって、物凄く身体が重くて…。痛みも感じない。
このまま、眼が覚めないんじゃないかと思ってしまう。
眠くて…とても眠くて…。
もう何も考え…られ…
…
…
何…?
何か…聞こえる…ような…?
目を開けて見てみたいけれど、瞼が物凄く重くて目を開けられない。
何度か、目を開けようとして、やっと少しずつだけど開けることができた。
眩しくて、また目を閉じた。
けれど、少しずつゆっくり開けてみる
明るさに慣れた眼に映ったのは、見た事のない天井だった。
ここは…?何処だろう?
自分が何故ここに居るのか分からない。そして、眠る(?)前に何をしていたのかも分からなかった。
身体を動かそうとしても、指の一本ですら動かせない。
なんで?
誰かを呼ぼうとしても、声も出せなかった。
それ以前に口を動かす事も出来なくて、どうしたらいいか分からない。
どのくらいの時間そうしていたのか…。眼を開けている事に疲れてきて、眼を閉じた私はいつの間にか、また眠ってしまったようだった。
誰かが泣いている…?
人の話し声と一緒に聞こえる堪えきれない嗚咽を洩らしたような…?
時々、鼻を啜るような音もするから、やっぱり誰かが泣いている。
けど、何故?何故泣いているの?
目覚める前のように、意識が浮上してくる。
だから、そのまま聞くとはなしに聞いてしまったその話に愕然とした。
話の内容と声からして、恐らく両親の会話だと思われた。
私が刺された事によって片方の卵巣が傷付き、子供ができ難くなった。という話に酷くショックを受けていた母が、可哀想だと私を憐れんで泣いているのを父が慰めているようだった。
そして、会話はそれだけで終わらず、更なる衝撃を与える話に、眼から涙が溢れてきた。
私が歩けなくなるかもしれないなんて…。
これは…罰なのだろうか?
殿下と私への…。
それとも…
殿下に僅かとはいえ、気持ちを残したままローランドに惹かれてしまった私への…。
そうかもしれない…。
だから、こんな事になったのだろう。
片方の卵巣が駄目になり、子供ができ難い身体になり、歩けなくなるかもしれない、そんな身体になった事が、自分への罰なのだと…。
この時の私は、そう思い込んでしまったのだった。
そして、これ以上彼を想う事は、“彼を不幸にしてしまう” そう思い込んだ私は、この後ローランドを専属護衛から外す事にした。
そうする事で彼を守ろうとしたけれど、その事で彼が傷付き、私の身を護れなかった自分を益々責めるという事まで考えつかなかったのです。
自分を憐れむ事しか出来なかった私は、判断を誤った事に気付くのはかなり後になってからでした。
~~~~~
━ 三ヶ月後 ━
目覚めた後の診察で、私が歩けなくなるかどうか、医者でも判断が難しいと言われ、取り敢えず歩けるように訓練する事になりました。
いきなり歩行訓練は出来ないので、それまでほぼ寝たきりで弱ってしまった筋肉を鍛える為の下準備をする事になった。
筋肉を解す為のマッサージと足を動かす軽い運動やストレッチを暫く続けるのだ。
やり方等の説明は、私と母、そしてスージーが一緒に聞いた。
これが予想に反してある意味大変だった。
初めての経験であるのは勿論、それまで動かしていなかった上に、動かそうとしても動かない足にかなり苦戦をしいられた。
尤も、自分の意思で動かせるぐらいなら、歩けない訳はないのだから、最初から動かせはしないのに…。
母やスージーが、マッサージしてくれたり、足を持って運動しているかのように動かしてくれたりする毎日で、私はただそれを見ている事しか出来なかった。
それが終り、身体を拭って貰い、着替えてからお茶を淹れてもらった。
そして、お茶を飲んでいると急に部屋の前が騒がしくなる。
今では毎日恒例となってしまった、それに、気が重くなる。
やがて扉がノックされ、青い顔をした一人の騎士が部屋に入って来た。
私はいつものように、覚悟を決めて顔を上げた。
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