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17. それでも… ①リンジー
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*後半、配慮が必要な場面(残酷な描写、表現等)あります。
苦手な方は全力で回避して下さい。読まれる方は自己責任でお願いします。
~~~~~
殿下の謹慎が解けてから、私と殿下が顔を合わせたのは月に一回するお茶会の時の3回と、スミス公爵家で行われた、嫡男、エドガー・スミス卿の婚約披露パーティーと、合計4回だけでした。
そして今日は、殿下との4度目のお茶会の日。
やっぱり気が重く、溜め息ばかり出ますが、王命なので仕方ありません。
殿下は、まだ私達が仲が良かった頃のように振る舞ってくれますが、私の中にはあの時の恐怖心が今でも残っていて、殿下が傍に来ただけで怖くて震えてしまうのです。
けれど最近、側近のリチャード・フォラス卿が何かと気を遣ってくれている事もある所為か、少しずつですが慣れてきたような気もします。
勿論、護衛のローランドや侍女のスージーがいつも支えてくれているお陰もあり、王宮に来ても少しだけですが、笑顔で振る舞えるようになったのでした。
だから、油断もあったのだと思います。何処に落とし穴があるか、警戒していた方がよかったのでしょう。
それまでは、王宮に来ても、ローランドやスージー以外の人には気を許してはいませんでした。と言っても、それほど気を許していたつもりは無かったのですが…。
横領事件で、彼女が罪に問われていなかった事を、罪に問われていないからこそ、自由に行動出来る事を忘れてはいけなかったのです。
その4回目のお茶会の時、殿下は仕事が長引いていた為、少し待っているように言われました。
今回のお茶会は、庭園で行われる予定で、待っている間に庭に咲いている花でも見ていようと、お茶会の場所から少しの間離れました。
ローランドは側近の方々と何か話があるとかで、スージーと、最近お話する事が増えたリチャード・フォラス卿が付いてくれると言うので、花を見に庭園を散策する事になりました。
そして、散策中にリチャード・フォラス卿が、庭園のバラがたくさん咲いていて見事だと教えてくれたので、見たくなった私はそちらへ行きました。
本当にバラが咲き誇って見事でした。蔓バラのアーチもとても綺麗で見惚れているうちに、スージーとはぐれてしまった事に気付いたその時、リチャード・フォラス卿に当て身を入れられ、意識を失ってしまいました。
そして、意識を取り戻した時、庭園の何処か人目につかない隅の方で、リチャード・フォラス卿に上からのし掛かられ、逃げようにも身動き出来ない状態でした。
日頃から訓練している彼とは違って、力で敵う訳がありません。
彼は、私の口の中にハンカチを詰め、両手は頭の上で押さえ付けると、襟を掴んでドレスを破りました。
そして、ガタガタと全身を震わせている私の首に舌を這わせてきました。
怖気が走り、あまりの気持ち悪さに吐きそうになりますが、何とか逃げようと身体を捩ったりしたのですが、逃げられません。
首を這っていた舌が、徐々に胸の方へ下がってきます。
助けを求めるつもりで、叫びますが口の中に詰め込まれたハンカチの所為で、悲鳴にもならないくぐもった音にしかなりません。
恐怖と絶望で視界が歪んだ時、何かを呼ぶような、叫び声が聞こえてきました。
慌てて起き上がろうとした彼の下で、私が必死で足をバタつかせると、うっ!と呻いた時、一瞬彼の手が緩み、その身体の下から抜け出せた私は口の中からハンカチを引っ張りだし、立ち上がろうとしたところを押し倒されてしまいました。
「リンジー!」
私の名前を呼ぶ声に、彼が怯んだ隙に逃げる事が出来た私は、立ち上がり膝が笑っている所為で転びそうになりながら駆け出しました。
「リンジー!!」
彼が助けに来てくれた。そう思ったのです。
けれど、それは私の思い違いでした。
彼に助けを求め、近付いた私は頬に激しい痛みを感じ、目の前が真っ暗になり、視界が揺れたような気がしました。
いつの間にか、地面に這いつくばっていて、そこでやっと彼に殴られたのだと気付いたのです。
見上げると、彼の傍にいる彼女は、愉悦に歪んだ表情で私を見ていました。
「貴様という女は…」
怒りに顔を真っ赤にした王太子が、鞘から剣を抜き放ち、大股でドスドスと近付いて来る。
立ち上がり、ふらつく私の肩を掴み、身体に剣を突き立て、抉る様に捻ってから剣を抜いた。
ゴフゥォッ!
口から血を吐いた私は、彼に抱き止められる事も無く膝から崩れ落ちた。
『何故…?』
そう言ったつもりの筈の言葉が、声にならずに喉から空気が漏れるように、ゼフヒュゥ、ゼフヒュウという音が出ただけ。
「リンジーッ!」「お嬢様っ!」
駆け寄って来るローランドとスージーが見えたような気がしたのですが…。
見間違いだったのでしょうか?
だって、今見ているのは真っ暗な景色だけなのですから…。
「リンジーッ!!」
ローランドが呼んでいるような…?
それでも…もう何も見えず、聞こえません。
苦手な方は全力で回避して下さい。読まれる方は自己責任でお願いします。
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殿下の謹慎が解けてから、私と殿下が顔を合わせたのは月に一回するお茶会の時の3回と、スミス公爵家で行われた、嫡男、エドガー・スミス卿の婚約披露パーティーと、合計4回だけでした。
そして今日は、殿下との4度目のお茶会の日。
やっぱり気が重く、溜め息ばかり出ますが、王命なので仕方ありません。
殿下は、まだ私達が仲が良かった頃のように振る舞ってくれますが、私の中にはあの時の恐怖心が今でも残っていて、殿下が傍に来ただけで怖くて震えてしまうのです。
けれど最近、側近のリチャード・フォラス卿が何かと気を遣ってくれている事もある所為か、少しずつですが慣れてきたような気もします。
勿論、護衛のローランドや侍女のスージーがいつも支えてくれているお陰もあり、王宮に来ても少しだけですが、笑顔で振る舞えるようになったのでした。
だから、油断もあったのだと思います。何処に落とし穴があるか、警戒していた方がよかったのでしょう。
それまでは、王宮に来ても、ローランドやスージー以外の人には気を許してはいませんでした。と言っても、それほど気を許していたつもりは無かったのですが…。
横領事件で、彼女が罪に問われていなかった事を、罪に問われていないからこそ、自由に行動出来る事を忘れてはいけなかったのです。
その4回目のお茶会の時、殿下は仕事が長引いていた為、少し待っているように言われました。
今回のお茶会は、庭園で行われる予定で、待っている間に庭に咲いている花でも見ていようと、お茶会の場所から少しの間離れました。
ローランドは側近の方々と何か話があるとかで、スージーと、最近お話する事が増えたリチャード・フォラス卿が付いてくれると言うので、花を見に庭園を散策する事になりました。
そして、散策中にリチャード・フォラス卿が、庭園のバラがたくさん咲いていて見事だと教えてくれたので、見たくなった私はそちらへ行きました。
本当にバラが咲き誇って見事でした。蔓バラのアーチもとても綺麗で見惚れているうちに、スージーとはぐれてしまった事に気付いたその時、リチャード・フォラス卿に当て身を入れられ、意識を失ってしまいました。
そして、意識を取り戻した時、庭園の何処か人目につかない隅の方で、リチャード・フォラス卿に上からのし掛かられ、逃げようにも身動き出来ない状態でした。
日頃から訓練している彼とは違って、力で敵う訳がありません。
彼は、私の口の中にハンカチを詰め、両手は頭の上で押さえ付けると、襟を掴んでドレスを破りました。
そして、ガタガタと全身を震わせている私の首に舌を這わせてきました。
怖気が走り、あまりの気持ち悪さに吐きそうになりますが、何とか逃げようと身体を捩ったりしたのですが、逃げられません。
首を這っていた舌が、徐々に胸の方へ下がってきます。
助けを求めるつもりで、叫びますが口の中に詰め込まれたハンカチの所為で、悲鳴にもならないくぐもった音にしかなりません。
恐怖と絶望で視界が歪んだ時、何かを呼ぶような、叫び声が聞こえてきました。
慌てて起き上がろうとした彼の下で、私が必死で足をバタつかせると、うっ!と呻いた時、一瞬彼の手が緩み、その身体の下から抜け出せた私は口の中からハンカチを引っ張りだし、立ち上がろうとしたところを押し倒されてしまいました。
「リンジー!」
私の名前を呼ぶ声に、彼が怯んだ隙に逃げる事が出来た私は、立ち上がり膝が笑っている所為で転びそうになりながら駆け出しました。
「リンジー!!」
彼が助けに来てくれた。そう思ったのです。
けれど、それは私の思い違いでした。
彼に助けを求め、近付いた私は頬に激しい痛みを感じ、目の前が真っ暗になり、視界が揺れたような気がしました。
いつの間にか、地面に這いつくばっていて、そこでやっと彼に殴られたのだと気付いたのです。
見上げると、彼の傍にいる彼女は、愉悦に歪んだ表情で私を見ていました。
「貴様という女は…」
怒りに顔を真っ赤にした王太子が、鞘から剣を抜き放ち、大股でドスドスと近付いて来る。
立ち上がり、ふらつく私の肩を掴み、身体に剣を突き立て、抉る様に捻ってから剣を抜いた。
ゴフゥォッ!
口から血を吐いた私は、彼に抱き止められる事も無く膝から崩れ落ちた。
『何故…?』
そう言ったつもりの筈の言葉が、声にならずに喉から空気が漏れるように、ゼフヒュゥ、ゼフヒュウという音が出ただけ。
「リンジーッ!」「お嬢様っ!」
駆け寄って来るローランドとスージーが見えたような気がしたのですが…。
見間違いだったのでしょうか?
だって、今見ているのは真っ暗な景色だけなのですから…。
「リンジーッ!!」
ローランドが呼んでいるような…?
それでも…もう何も見えず、聞こえません。
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