【改稿版】それでも…

雫喰 B

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24. 戦闘

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    前回、歩哨任務に就いた時に雪を見てから、急に冷え込んだような感じがする。
    その時に俺と歩哨をしたキースには、食堂などで時々顔を合わせると、一緒に食事する事もある。

    彼は不思議な男だった。ああ言うのを、人誑しというのだろう。
    周囲の評判も良く、人懐っこい。

    そんなキースと、また歩哨任務で顔を合わせた。

    そして、前回の時の詫びだと言って、自分の恋話を俺に聞かせる。
    彼は20年近く、同じ女性を夢に見るのだと…。それが原因かどうか分からないが、女性と交際する事になっても、どこか冷めてしまうらしい。

    だから探す事にしたと、あっけらかんとして言うのを聞いて呆れた。冗談だと思っていた。
    が、驚く事に本気だった。

    どう答えたものか…と考えていたら、何か物音がした。

    俺とキースは敵が近くにいると思い、辺りを隅々まで見渡した。

    すると、いた! 少し離れた岩場の影に人影がチラッと見えたのだ。閃光弾が付いた矢を弓に番え、火を点けると空に向けて放った。

   上空でパーンと弾け、周囲が明るく照らされた。
    岩場の影にいたのは、やはり敵だった。

「「敵襲 ーッ!!」」

    叫びながら、半鐘を鳴らす。

    弓隊が渡り廊下や塔に詰め掛け、弓に矢を番え、敵に備えた。

    衛兵や騎士達がそれぞれの持ち場に着く。それに俺達、歩哨任務に着いていた者達も加わった。

    多数の敵が岩場から姿を現したのを見た弓隊が、塔から合図を送ると、門が開かれて衛兵や騎士達が撃って出た。
    弓隊が彼らを援護する為に矢を放つ。
    
    敵の半数以上が、矢を受け倒れた。が倒れなかった者達は、尚も鬼気迫る勢いで突っ込んでくる。
    我が国でも、今年は冷夏の影響で不作だったのだ。北国では凶作だったとしてもおかしくはない。
    俺達は護る為の、彼らは命を繋ぐ為…生き残る為の戦いなのだ。死に物狂いにもなるだろう。

    そんな事を考えていた所為か、自分への攻撃に対処するのが遅れた。
    いつもなら、殺さずにすむように応戦する余裕があったが、手加減している余裕がなかった。

    しまった!

    そう思ったが、間一髪キースが俺の剣を弾いた。
    その時、眼にした敵の姿は子供のように見えた。
    
    俺の剣を弾いたキースが、その子の鳩尾に拳を叩き込んだ。
    気を失った身体が崩れ落ちた。

    素早く後ろ手に拘束する。

    そして戦闘が終わり、拘束した敵を捕虜として牢に入れる為に、砦に運び込む。

    と、その子供を運び込もうとしたが、それが子供ではなく少女だった事に驚愕した。

    何故、こんな少女まで戦闘に参加しているんだ?!

    そして、キースが彼女を運ぶ為に肩に担いだ時、それは起こった。

「お姉ちゃんを返して!お願い!殺さないでーッ!!」

    その少女よりも更に年下の女の子が岩影から飛び出してきて、ヒースの腰の辺りを拳で叩く。

    後ろから羽交い締めにした俺が、耳元で「大丈夫だ。殺したりしない。」と言うと大人しくなった。

    そして、その子の手を引いて、少女を担いだヒースと共に砦に入ったのだった。

    けれど、戦闘後の男ばかりの砦の中に、姉妹二人という状況は、狼の群れの中に哀れな子羊を放り込む様なものだ。
    ましてや、牢に入れるなどもってのほかである。

    戦闘後の男達は、荒ぶる気を鎮めるのに苦労する奴が多い。
    他に自分で処理する以外の選択肢が無くて男同士で奴もいるくらい酷い状況の戦場もある。
    程度の差があるものの、此処も例外ではない。

    どうしたものかと思案にくれていると、賄いの婆さんが、近くにある村から砦まで通うのが大変だと言うので、厨房に近い部屋に住み込みで常駐している事をキースが思い出した。

    キースが姉を担ぎ、俺が妹を抱っこしてマントの中に隠し、その部屋まで行く事にした。

    そして、厨房の奥の方、外からは目立たない所にその部屋の扉(と思われる)を見つけ、小さくノックした。

    暫くして、眠そうに目を擦り、欠伸をしながら“婆さん”が顔を出した。

    俺達は婆さんに静かにするように言うと、半ば無理矢理、部屋の中に押し入った。
    何か叫ぼうとする彼女の口を塞いで、静かにしてくれるように頼み込んだ。(脅したとも言う)

   そして、先ずは俺のマントの中から妹を出して彼女に見せた後、キースが担いでいた姉を見せる。 
    二人を見て眼を見張り驚いていた彼女だが、直ぐに顔色が悪くなる。

    婆さんは事情が分かったみたいだったが、面倒事は嫌だと言った。四六時中二人の傍にいる事が出来ない以上、責任が持てないと…。

    今度は、三人で頭を抱える事になった。
    確かに俺達三人が仕事中、此処は無防備になる。その間に二人の身に何かあったとしたら…。

     背に腹は変えられないか…。

    この砦の責任者は、カスペラード辺境伯の親戚筋の人間だった。
    俺は此処に来たその日に、彼に会っている。そして、辺境伯から預かった手紙を渡したのだが、それを読んだ後の彼は、何とも言えない、複雑な表情をして俺を見たのを今でも覚えている。

    その時に彼に言われた事は、
『特別扱いはしない。自分やカスペラード家との関わりを口外するな。面倒事を起こさないように。』だった。

    俺は事情を説明せずに、少し此処で三人と一緒に待っていて欲しいとキースに言うと、部屋を出た。


    


    



    
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