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しおりを挟む「大丈夫じゃ、なぃ...」
少量とは言えアルコール。
数分経過したあたりから頭がぼーっとして、身体が熱くなった。
我を忘れるほどの量では無かったことが救いか。
ぽやぽやした頭で絢斗の唇を見つめていると、貪るような口付けを食らう。
黒田とは違う、少し乱暴なキスは脳をビリビリと痺れさせた。
恋人以外と、キス、しちゃった... 。
おずおずと差し出した舌を絡めとり、ワイシャツの隙間に手を差し込んだ彼はそっと胸を撫で小首を傾げる。
「...ん、乳首ない」
「、あるもん...ほら見ろ」
バッと上までワイシャツを捲りあげれば、凹んだ乳首を彼が凝視する。
「夜さん...?」
「なんらよ...」
「僕のこと煽ってるでしょ」
「んっ...ぁ」
小さなリップ音をたてながら乳輪に口付けられると、その光景にゾクリとした。
「...身体すべすべで綺麗だね。色も白いから痕も映えそう...」
「あっ...」
皮膚に唇を落とし、強く吸われた箇所は鬱血して赤い花が咲く。
「ぁ、おい...何勝手にキスマークつけてんら...金とんぞ」
「お金ならいくらでも払うから、僕の好きにさせて?」
ええ、カッコイイ~...
めっちゃ男らしいのに羽振りもいいの?嘘~...一晩だけなら許しちゃいそう。
でも、仮にも恋人居るしな...。
「らめ」
「...生殺し...」
「はい、あやと...あーん」
「うわ、この状況でなんで可愛いことすんの」
身体を離し、乱れた服装を渋々直してくれる彼に笑いかける。
「ねえねえ、あやとのお酒ちょーだい」
「弱いんだよね?」
「つおいよ!」
「うふふ、お外きらきらしてる~」
「夜さん、今日は電車で来たの?」
「うん!万が一のために電車で来た!」
上機嫌でヘラヘラ笑う俺を見て、絢斗は困ったように頭をかいた。
「じゃ、俺こっちらから」
「工事現場に電車はないよ」
「...あれ?いつもならこの辺に改札が」
「心配だから家まで送ってく」
なんだ、心配性だな。
1人で帰れるのに。
「俺の家ちょっと遠いけど...」
「ふふ、僕の家来る?」
「も~、えっちだなぁ...お?」
覚束無い足取りで飲み屋街を歩いていると、見覚えのある2人を発見。
しかもそのうち1人は怖い顔をしながらこちらに向かってくるではないか。
冷や汗。
「あれ、椿じゃん。先週ぶり」
「光悦...なんでその人と一緒にいるの?」
光悦?
「その人って、夜さんのこと?食事し終わったところだけど...」
「へぇ...」
絢斗...もとい光悦の後ろに隠れ、肩から少し顔を覗かせる。
...めちゃくちゃ怒ってる。
つーか、この前の響のことと言いタイミングが悪いな...。
「碓氷先生、こっちおいで」
「やら、黒田怒ってる」
「怒ってないから早く来なさい」
「夜さん、見てあの顔。めちゃくちゃ怖い顔してるね」
「ぅん、...怒られるのやら...」
はぁ、と盛大にため息を吐いた黒田は光悦と会話を交し、無理矢理俺を連行しようと腕を掴んだ。
「椿、向こうの彼女は放っておいていいの?」
「いいよ。それより今すぐそいつを連れて帰る」
遠くで屋台に入る石井には目もくれず、ズルズルと俺の身体を引きずる黒田はかなりご機嫌斜め。
「あ、ちょっと待って。連絡先交換しよっか」
「うん!」
お互いスマホを取り出し連絡先を交換すると、光悦が俺の頭を撫でた。
「可愛い名前だね。また連絡するよ、鏡夜」
「わ...」
なでなでされた...。
「じゃあ2人とも、おやすみ」
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