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結婚式編

結婚式編:ガラス張り・R18・end

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「明日は11時までにはチェックアウトしたいのでそのように動くように。・・・じゃあ、あのアホと伯父たちを迎えに行ってくる。」
「はい。こちらは部屋に入った後は外出しませんので待機は不要です。あと、本当に兄がすいません・・・。何だったら置いて来て良いですよ。酔い醒ましに歩いて帰って来いとか言ってーー」
「さか、じゃなかった、勇也、それええわ。採用!」



 機嫌が良くなった水瀬を見送って、慶介たちは割当てられた部屋に向かう。
 慶介と酒田の部屋は他の皆よりちょっとだけグレードの良い部屋で、なんと風呂はガラス張りだった。

「え?これ、どうしたらいいんだ?1人ずつ入って外から見るというシチュエーションを楽しむべきか?でも、2人で入れるくらい広いのに、これなら一緒に入りたい気も・・・。でもでも~、どっちにしよ~ッ」
「だったら2回入ればいいだろ?」
「え?朝風呂する余裕ある?」
「その余裕・・が何を意味してるのか曖昧なところだけど、慶介はこのまま寝るだけのつもりなのか?」

 ダウンジャケットも脱がずにはしゃいでいた慶介は後ろから抱き込つかれ、酒田の左手が下腹部を押さえながら、右手が鼠径部から際どいラインをたどりながらツーっと陰部の奥に侵入しようとするのを息を止めゾクゾクしながら見入った。

 こんな露骨で直接的な下品な誘い方、酒田以外にされたら鳥肌どころか過呼吸起こすくらいのパニックになると思う。と、急に湧いた嫌な想像を振り払うために、くるりと半回転し酒田の鎖骨に鼻を埋めて匂いを嗅ぐと供に鼻が触れたい感触がいつものハイネックのピチッとインナーであることにも安心感を覚える。

「後ろの準備無しでいい?今すぐ欲しい・・・。」
「俺としては、できれば、せっかくのガラス張りだから、慶介が自分で慣らしてるところ見たい。」
「ハッ!!それ、めちゃおいしいシチュだな!じゃあ、じゃあ、俺は酒田がオナってるとこ見たい!」
「乱入ってパターンもいいと思ったんだけど。」
「うぐ、それもいい・・・!」
「なら、俺が先に入ってーー」


 慶介が手早く腹の中の洗浄を済ませて戻ると、酒田は髪を洗い流しているところだった。次にボディタオルに洗剤をつけて泡立てて腕を洗い始める様子を慶介は壁から顔だけ出して覗き見ていた。
 こんなコソコソしながら見るつもりはなかった。ベッドに寝そべりながら堂々とニヤニヤしながら視姦してやるつもりだったのだが、いざ目の前にすると恥ずかしさが出てしまった。
 別に酒田の裸なんてしょっちゅう見ているし、一緒に風呂に入ることも初めてなわけでもないのだが・・・。ただ、強いて言えば、このような距離のある場所から見るのは初めてかもしれない。

 ふと振り返った酒田と目があって、フッと笑われた。顎でベッドに行けと言われおずおずとベッドに腰掛けると、酒田は満足げな顔をしたあとまるでこちらが見えていないかのような真顔で体を洗い始める。

 慶介は改めて見る酒田の肉体美に見惚れた。酒田の筋肉は実用性を重視しているので、大胸筋や僧帽筋、肩の三角筋をもっと大きくしたほうが見栄えが良くなると解っていてもあまり鍛えない。そのかわり、腹回りがすごくて外腹斜筋とかデカすぎて服を着ていると逆にウエストが太く見えるくらいだ。
 あの腹に抱きつき上質な筋肉の弾力を味わいながらお腹の匂いを嗅ぐとたまらなく嬉しい気分になれる。そして、腰から尻を越えてリラックスしていても筋の見える太ももの筋肉はエロティックに美しい。

(腿の後ろかっけぇ・・・俺も、もうちょっと大腿二頭筋、鍛えようかな。)

 などと、意識を逸しても腰つきを見れば否応なく目に入る股間のモノはすでに上を向きグロテスクに赤黒く泡まみれになっている。涼しい顔して下はギンギンとは、酒田の表情づくりもなかなかである。

 シャワーで泡が洗い流され、バスルームのガラスが湯気で白く曇ってしまう。見づらいな。と目を凝らせば、酒田の動きが変わった事に気づく。体の泡を洗い流していたはずの手が、片方は壁に手をつき、片方は覚えのある動きを小刻みに繰り返していた。
 ブワッと顔が熱くなる。酒田はリクエスト通り、オナニーをしてくれているのだ。しかも、ガラス張りだからと見せつけるようなオナニーではなく、シャワーの水を出しっぱなしで行われるそれはまさしく自慰行為というのがふさわしい密やかさ。

 慶介は胸のドキドキが耳まで聞こえてきそうなくらいに興奮した。でも、それ以上に恥ずかしさが勝り、顔を覆いたくなる手を三角座りになって必死に押さえ、視線は酒田の姿に釘付けになった。
 目を閉じて、半開きの口が時折動くのは何かを喋っているのだろうか。湯を浴びているからだけではない紅潮した顔が苦しそうに見えて、フィニッシュが近いことがわかる。

 薄っすらと開けられた目がチラリと動き、目が合った瞬間、慶介の心臓が大きく跳ねて、体が熱くなり額から汗が一筋流れた。


 時間が飛んだ気がする。

 バスローブを着た酒田が慶介の前で片膝をついて心配そうな顔をしていた。

「さか、た・・・?」
「大丈夫か?腹痛くないか?」
「ぇ、ぅぅん。なんも・・・」
「そうか?部屋の中がすごい誘惑フェロモンでいっぱいだから、体調崩したのかと思った。風呂、入れるか?」
「あ、ぅん、入ってくる・・・」

 立ち上がろうとした体が思った以上に重くて力が入らない。ふらつく体を心配されながらも1人で風呂に入る。

 クリアカラーのバスチェアに座って、力の入らない腕で、泡で出るボディソープを全身に塗りモタモタと素手だけで体を洗う。
 泡を一枚噛ませたようなソフトな力加減で撫で洗いをしていると、慶介の脳内には酒田の肉体美が浮かび、比べる自分の体も悪くないがそれを上回る酒田がすごいのだと思えばより一層うっとりとした。

 泡を洗い流したら、床に膝をつき風呂のフチを掴んで後ろの準備をしようと指を滑り込ませたところで思い出した。仕込み用のローション持ってくるの忘れた、と。しかし、すでにそこは滲み出るほどにヌメっており自分の指も抵抗なく滑りこませることが出来た。

(いつもはこんなに濡れてないのに・・・)

 違和感を覚えながらも、好都合とばかりに塗り拡げていく。長く深い深呼吸をしながら、マッサージを交えて穴周りの緊張を丁寧にほぐしていく。気持ち良い場所を見つけてもグッとこらえて快感の深追いはしない。これは準備であってオナニーではないのだ。
 最後の確認に指をグパッと広げたら愛液が垂れ落ちた感覚がして、このあとの行為に想像が巡り、穴がキュッと反応した。

 フゥと息を吐いて顔を上げれば開放感ある眺めに、全面ガラスだったことを思い出し酒田の姿を探した。
 肘を膝において足を広げて座っていた酒田は慶介と目が合うとおもむろに立ち上がり、バスローブを脱ぎながらこちらに向かってきた。「舐めてくれるか?」と見せられたソコは血管が浮くほどに滾り、興奮していた。慶介は膝立ちのまま根本から先端へ大胆に舐め上げ、手を腰に添えたことでエロティックな腰から尻を撫で回したいと思っていた事を思い出して、欲望のままに手を動かし、同時に酒田のものを口に含み、みだらな音を立てながら肉感を味わった。

「湯船に入るのは後でいいか?もう暴発しそうなんだ。出すなら次は慶介の中で出したい。」
「抱っこで連れてって、なんか力はいんねぇの。」
「だろうな。」

 慶介を片手で軽々と抱き上げる酒田は、もう片方の手で器用にバスローブを広げ、布団が濡れない配慮までしても筋力はまだまだ余裕。なので、ポイッと投げ落とすような降ろし方はしない。ゆっくりとしゃがみ、おしりが着いたところで背中に腕が回されて、またゆっくりと寝転がらせてくれる。

「ネックガードがゲルタイプじゃないんだけど、ちょっと、余裕がないから変えるのあとでいいか?」
「うん・・・、早く、中埋めてほしい。腹ん中が空っぽで、寂しい。」
「フーー・・・これ以上、誘惑しないでくれ。タガが外れそうだ。」

 性欲の衝動をゆっくりと息を吐くことで抑えて、片手で顔を覆う。その指はリンゴを握りつぶせそうな程に力んでいて、酒田の欲情の強さに慶介もムラムラとするものがあった。

 そんな事言わずに、理性なんて食い破ってこの体をむさぼり尽くして欲しい。今だけは優しくしなくて良いから、激しく噛みついて白い肌を歯型の鬱血痕まみれにして、疼くであろうアルファの牙の慰めにして欲しい。

 そう思ったら、腹の中がキュンと疼いてジワリと熱い液が溢れるような感覚がした。
 すると、体がカッカッと熱くなってきて、

「ハァ、ハァ、・・・酒田ぁ、体、あっつい・・・」
「・・・あ、ああ、可愛い・・・。可愛すぎるよ、慶介。なんて、可愛い・・・」
「んぅ、・・・あつぃ、なんか、体、ヘンなった・・・」
「変になったんじゃない。フェロモンで誘惑してるんだ。慶介は、今、疑似ヒートを起こしてる・・・!」
「ぎじ、ヒート・・・」
「あぁ、すごい、感動だ。慶介の本能が俺を求めてる。永井じゃなくて、俺を求めて・・・こんなに濃いフェロモンで誘ってる。すごい、可愛い、可愛いよ、慶介。こんないい匂い、いっぱい出して・・・。可愛い、慶介、もっと・・・もっと、欲しがってくれ。ほら、こっち見て。ちょっとだけキスしよう。」

 酒田の顔が近づいて来るのに合わせて口を突き出すと、唇にチュッと可愛らしいキスをされた。本当にちょっとだけだった。
 全然物足りなくて、舌を絡めたキスをしよう?と、口を開けて「あ、あ、」と誘ってみるけど、口づけてくれないどころか唇すら避けられて、可愛らしいキスを頬や鼻先にチュッとされて、いっそ悲しくなってきた。
 ちょっとしたイジワルだとわかっている。酒田の顔は初めてキスした時のように至福の笑みで、目が「幸せだよ」と物語る。慶介だって、そんな酒田を見れば同じように幸福感に満たされるはずなのに、今は何故かキスが貰えないだけで絶望のようなショックで胸が張り裂けそうになった。
 酒田の体にしがみつき「酒田、好き、大好き、好きだよ酒田。」と胸の鼓動を直に感じながら懸命に想いを伝えるのに、酒田からは返事が返ってこなくて、悲しみで胸が絞られると体の奥からまた熱い液が溢れて心臓がドクドク鳴って、次第にのぼせるような熱さで頭がボーッとしてきた。

「あー、やば、フェロモンすごい。意識飛びそう。でも、まだ我慢、我慢・・・。はぁ、たまんない・・・。」
「うぅ~~、さかたぁ~・・・」
「フフッ、顔が真っ赤っ赤だ、可愛いよ、慶介・・・。ああ、そうだ。慶介、キスするから、勇也って呼んで?」
「ゆうや?・・・ゆぅや・・・勇也・・・、うぅ、勇也ぁ、キス・・・、ちゃんとキスしろぉ・・・」
「ああ、ごめん、ちゃんとするよ。フェロモンもいっぱいお返しするから。」

 突き出した唇が潰されるくらいに押し当てられ、隙間からは舌が絡みついてきて、酒田の舌は自分の舌よりちょっとだけ冷たかった。慶介は熱を与えるように絡め、吸い上げ、また絡め合わせ、次は吸い出されて、夢中になってキスをした。

 その間、酒田は感度を高めるように指先でそっと刺激する愛撫を慶介の体に与えてきて、同時に誘引フェロモンを放ち続ける。
 酒田のフェロモンを嗅ぐと悲しみで絞られた心が満たされて、触れられる全身が気持ち良さで骨抜きにされていく。癒しされ喜びが満たされてもなお、胸にはまだ切なさが残った。

 高められた敏感な身体の先端をクリクリと転がされると、それだけで達しそうな快感に身体が喜び震えるが、真に欲する物が与えられない切なさで何かの感情が臨界点に到達した時、頭に白いスパークが弾けて、たった1つの事以外、何も考えられなくなった。


ーーあぁ、ナカに、欲しい。


「はぁ、はぁ、・・・ああ、もう、ダメ・・・。早く、挿れて、欲しいっ、酒田のが欲しいっ!」
「酒田じゃない、ゆ・う・や、ちゃんと呼んで。呼んだら挿れてあげるから。俺も早く挿れたいんだ・・・。」
「ゆうやっ!勇也、勇也ぁ、なか、もう準備したっ、すぐ挿れれるっ、んっ、ああっ、欲しいぃ!!」
「すごい、もう、ドロドロだ。入り口、ヒクヒクしてる。可愛い・・・」
「ゆび、やだッ!ちがうッ!ゆ、勇也のこれっ、挿れて、中いっぱい出してっ!今日は焦らすの無しにしてッ!!」
「わかってるから、泣くな。」

 そう言いながらも、穴の周りを撫でて、いきなり2本の指をズプゥッと突き立て荒い手付きで掻き回した。

「あ、あ、あ、んんッ!ん~~~っ!はぁ、あ・・・」
「もうちょっと・・・、これ、塗ったら、お腹いっぱいになるまでずっと挿れっぱなしだからな。」

 慶介が作る天然のローションを塗りたくった肉茎が、滾る熱を迎えようとヒクヒクする入り口に当てられ招き入れるように入り口が開きクチュと先端が吸い込まれ、その姿が一瞬の瞬きの間に潤んだ穴の中へと消えた。

「っ・・・、んぐぅ・・・ッ!!!」
「あー、すご・・・、めっちゃ締まる・・・」
「っ、さか、っ・・・!!・・・っ、ぁ・・・!!」

 一切の予兆なく、一気に根本まで突き立てられるような挿れ方をされたのは初めてだった。
 その衝撃を、頭が理解するよりも先に体が反応し、待ち望んだ熱の塊を掴まえんとキツく収縮しビクビクと震えて種を搾り取ろうとした。

 息ができないほどの快感の電流に体をくねらせ、のたうつ慶介の動きを酒田は妨げない。ただ、挿れっぱなしにする。という宣言を裏切らない手が腰をがっしりと掴み、接続部は深く繋りを保たれていた。また、その接続部から流れる快感で慶介は何度も身をよじり跳ねた。

「慶介、動くから。ちゃんと、息しててくれよ。」

 酒田は慶介の息が整うのを待たず、抽挿を始めた。制止を求める言葉は息が詰まって出なかった。

 制止がないからか酒田の動きは最初から激しい。「気持ちいい、いきそう、慶介、好きだ」の言葉に混ざって、攻めの喘ぎがポロポロと溢れる様子から制止があっても止まらなかったかもしれないと慶介は思った。
 暴発しそうと言っていただけあって、自分の欲を優先した酒田の腰つきに慶介は喘ぎ声を上げることしか出来ない。せめては忠告通り、息が止まらないよう賢明に呼吸を意識した。
 深く長いストロークが浅くなって、中の剛直がさらに硬さを増し開放の瞬間を求めて、慶介の弱いところを狙い打ちにする。

「あ、あぁっ、イク、イク、くぅ、ううっ」
「ああ、気持ちいい、1回出すよ。イっていいからな。」
「あああッ、ぁああああッ、あッ、イクっ、イクぅっ・・・!!」
「うっ、・・・くっ・・・!」

 2人の絶頂はほぼ同時だった。ギュッと締め上げられた中の収縮に酒田も熱を放ち、押し出されるように達した慶介の前からはトローっと白濁が流れ出た。

 自身の愛液とは違う別の粘液がドプ、ドプ、と数度に分けて慶介の腹に注がれている。胸の中にあった切なさが解消され、注がれる精で物理的に体内が満たされるだけではなく、心も満たされていく。

 ぎゅーっと抱きしめていた酒田の腕が若干緩み、慶介は心拍数の上がった心臓を休め、不足気味の酸素を求めて息を整えようと息を深く吸った。
 達したあとに「ありがとう」と言ってキスしてくるのは酒田の習慣だ。そのキスの時、中をグリっと抉られた慶介は思わず「うぐっ」と唸った。
 慶介の体内にある肉欲は熱を放ってもまだ硬さを失わず、酒田が動くたびに慶介は体内の硬い存在を再確認させられ、達した後の脈打つ波が肉をくい締め感じ入ってしまう。

「ぁう、んんっ、あ、だめ、かたい・・・」
「フフッ、まだまだいけるよ。抜かずの何発になるかな?2回目まで気持ちよくするから、何回でもイって。」
「や、いらない、きゅ、きゅうけいする・・・」
「だめだよ。もっと俺を欲しがって。」

 酒田が誘引フェロモンを放ち、慶介は腹が熱くなる感覚がしたあと体が誘引に応えるように誘惑フェロモンを放ったのがわかった。

「はぁー、いい匂い。ああ、俺のためのフェロモンだ。嬉しいよ、慶介。」

 慶介もさすがに理解した。この腹の中にある内なる泉から熱が溢れるとき、自身の誘惑フェロモンが放出されているということに。
 ヒートの時の誘惑フェロモンが湧いた湯船から湯気が立つような勝手に放出されていくようなものだとするなら、疑似ヒートの誘惑フェロモンは瞬間湯沸かし器だ。その都度湧き上がりコップに注ぐように小出しに出来る。
 また、注ぐに値するキッカケは「酒田を想う好意」つまるところ、好きの気持ちが溢れると誘惑フェロモンに変換されて放出してしまう。しかも、愛おしさのような穏やかさではなく、直接的な性欲と結びついているところが自覚すると恥ずかしい。誘惑フェロモンは「中出しして」と頼んでいるようなものなのだ。


 ただ、酒田がこれほど喜ぶ理由はセックスをせがまれたからではない。

 慶介はフェロモンコントロールがまったく出来ない。他のオメガたちも自由自在というわけではないが、好きな人を前にしたら「抱いて欲しい」と思いながら誘惑フェロモンをほのかに香らせるくらいのコントロールは出来る。
 だが、慶介は溢れ出るフェロモンを抑えるコントロールはギリギリ出来ても、出す方は全く出来ないのでヒート期間以外で誘惑フェロモンを出したことがなかったのだ。

 それが今、疑似ヒートに至るほどの量を出せているということは、慶介の身体が酒田を求めて誘惑したからに他ならない。
 だから、酒田は感動したのだ。
 慶介の本能がを求めていて、酒田のフェロモン慶介が誘惑フェロモンを返すということは、心だけでなく身体まで開いてくれたということの証明でもある。

 魂まで震えるような喜びを、溢れる愛おしさを、表現する言葉を酒田は知らない。言葉にならない想いをどうにかキスや抱擁で表すが、想いが大きすぎて1割も伝わっていない気がする。
 現に酒田からキスされている慶介は困った顔で「仕方のない奴」という顔しかしていない。ならば、言葉で説明するしかないと思うのだが、口を開けば「慶介、好きだ」しか出てこないのだから、情事に置ける男の頭がIQ3以下なのは真実だろう。


 懸命に愛を伝えようとする酒田が、開き直って甘えるだけの様子を見せたのには、可笑しくって自分の夫は可愛いなぁとたまらなくなった。

 自分の性欲よりも慶介の快感を優先するような奉仕の愛撫を始めたときには、わざと足でホールドさせながら艶めかしく腰を揺らし酒田の忍耐を壊してやった。突けば壊れるような脆い忍耐がなくなると酒田は攻め手側なのにと恥ずかしそうにしながら喘ぎを漏らし腰振りに夢中になった。

 酒田の額から滴り落ちた汗が顔にあたり、これも甘いかもしれない。と、指でとって舐めてみたが汗は残念ながらしょっぱかった。
 それもまた癖になる味だったので、密着させて汗ばんだ身体を舐め、ついでに所有印キスマークを1つ付ければ、酒田からお返しに3つ付けられ、慶介の体はキスマークまみれになった。

「勇也、乳首舐めて。」

 付けたマークをペロペロ舐めていた酒田の髪を軽く引っ張り、ジリジリと疼く胸の飾りに誘導した。
 舌先でクリクリと優しくも抉るように舐められて「はんっ」と声が出る。もう片方も指で摘まれれば腰に響く。

「ん、んっ、あ、いい、あぁ、勇也、気持ちぃ、」
「腰が揺れてる、可愛い。」
「んぅう、勇也ぁ、中の入り口して。クプクプするやつ」
「いいよ。」

 直腸の中にあるもう一つの入り口に、亀頭の先端からくびれまでを挿れたり出したりする動きは攻め手にとってはローションガーゼのようにビリビリ感じまくる辛さがあるらしいが、慶介は体の中をこじ開けられるゾクゾク感とヌルンと侵入してきた亀頭がくびれでキュッと締まる感覚が楽しいくらいに気持ちがいい。

「あ、あ、ぁん、んう、はぁ、あ、気持ちぃ、勇也っ、気持ちぃぃ・・・」
「・・・はぁ、・・・すご、したやつが溢れて、ぬるっぬるだ。」


 酒田の鼻息が荒くなってくると、動きが荒く激しくなって奥をズンと内臓ごと押し上げられて苦しい。
 いつもならこんな動きはしない。慶介が少しでも苦しげな声を出そうものなら、すぐさま気づかって優しい愛撫に切り替えてくれるのに、今の酒田は冷静さを失ってそのような余裕もなさそうだ。
 ここで「痛いって言ってるだろ」と小突きでもすれば我に返ってくれるのだろうけど、こんな酒田を見るのは初めてだし、水を差すような事もしたくない。そもそも、この強すぎる突き上げも酒田の好きが溢れた結果だと思えばむしろ可愛いとさえ思う。今日はこのまま、夢中になっていて欲しいと思って「勇也、いい、もっと、続けて」と言えば、酒田の抽挿も早くなり、熱が弾けるのも近い。

「あっ、あっ、勇也っ、勇也ぁ!イイ、イク!」
「慶介・・・っ、好きだ、慶介・・・!」


 2回目は慶介が先に達してしまい、イったところに更に追い打ちをかけられ泣きが入った。
 酒田は慶介の涙を舐め取って「涙はちょっとしょっぱい」と微笑み、2度放っても硬さを失なわなかった接合を保ったまま、慶介の左足を肩にかけ、余韻がまだ残る中をおし広げるようにゆっくりと抽挿を始めた。
 この体位だと膣部には入らなくなるため、さっきまでとは違う部分からの刺激に慶介は艷声を上げることになる。「出す時はコッチに出すから。」と下腹部を撫でられて、本当に腹が膨れるまでやるつもりなのだと理解した。


 そこから酒田は抜かずの5発をしたと思うが、正確にはどうだったのか慶介は覚えていない。「ヒート中は寸止めが多いから、今日はいっぱいイこうな。」と、浅いところも深いところも執拗に責められて、身体が達して痙攣していても休む暇を与えないかのように、突き上げられ、イキ狂いそうな容赦なき責めに喘ぎ、息絶え絶えに「もう、やだ」と涙しては愛の言葉を囁かれてほだされて、フェロモンの掛け合いを重ね、また迸る情欲を交わし・・・

 疑似ヒートが終わる頃には、慶介は子鹿のようにプルプルと震えて1人では立てなくなっていた。


「風呂、入らないとだめか?」
「はいる・・・、朝、絶対、起きられないから・・・いま、はいる、のッ・・・!」
「わかったって、怒るな。連れてくから。」
「風呂では、しないからな・・・ッ」
「わかってる。やりすぎだった、ごめん。・・・でも、ほんと、嬉しかったんだ。」
「・・・ん、許す・・・。」

 男2人が入っても余裕のある広い湯船に手足を伸ばし、温かな湯に「疲れがほぐれる~。」と言った数秒後、風呂のフチに頭をあずけて寝息を立て始めた慶介に酒田は苦笑して、愛する番のお世話を始めた。












***

 ・・・・・・結婚式編…end

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