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1 プロローグ
しおりを挟む明るいブロンドのマッシュヘアの青年が、自宅の前に止まっていた黒塗りの高級車を見て歩みを止めた。
車から出てきたのは小綺麗なスーツの中高年。手には大きな花束を持っている。それを見て青年の顔がこわばった。
「アレクレット君、誕生日おめでとう。18歳になったね」
「カ、カポトイーニさん・・・」
アレクレットは、男子高校生が誕生日に貰うには大げさな花束を差し出されて震える手で受け取った。その青年の腕を這い上がるように、男の手が撫でていく。
男の手がアレクレットの上腕部の内側に指を滑り込ませ揉んできた感触は、怖気が走るほどに気持ち悪く、体が硬直し動けなくなった。
「これで私も正式に君に求婚でき──」
「アレクレット!!」
アレクレットは父の叫ぶような呼び声で我に返り、体の自由を取り戻したら花束は男に突き返して父の元へ走った。
「あんたもしつこいな。うちの息子はやらんと言ってるだろ。四十路を越えたおっさんが・・・、俺がダメだったからって息子に手を出そうとは気色の悪い男だ。失せろッ、二度と来るな!」
男は小さく肩をすくめただけで、大人しく車に乗って去っていった。
アレクレットは産まれた時から、先程の男、リカルド=カポトイーニに結婚を申し込まれ続けている。今までは法律を理由に申し出を拒むことも出来たが、今日からはそれも出来なくなる。
誕生日なんてものはケーキが食べられるイベントで、学校がある平日であれば昨日と変わらぬ一日が、変わらぬ日々が続くものだと思っていた。
だが、黒塗りの車があった場所に目を向ければ、さっきの出来事が脳内で繰り返し再生され、身を守る盾がなくなったことを嫌でも理解せざるを得ない。
「心配するな、アレクレット。俺の同意がない婚姻届は無効になるって書類を法律に詳しい人に作ってもらったんだ。お前のサインが入れば、その同意書でお前を守れる。──だから、お前は好きに生きろ」
***
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