妖精王の祝福は男性妊娠〜聖紋に咲く花は愛で色づく〜

リトルグラス

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「じゃあ、俺が結婚する。それなら教えてくれるのか?」
「はぁっ?」

 クラウディオが言った言葉にアレクレットの声はひっくり返った。

「未婚だからダメなんだろう? 家族の形は自由でも未婚は駄目って話なら、結婚だけすればいい」
「ま、待って? クラウディオ、何言ってるかわかってる? 結婚だよっ??」

 クラウディオの言い方はまるで『2つ買わなきゃ付録特典つかない? ならもう1つ買うわ』みたいな買い物のようなノリだった。
 あの合コンで顔を合わせてからまだ1週間。会ったのは今日で2回目。セックスはしたけど、相手のことを名前の他には何も知らないと言っても過言ではない。それなのに『結婚する』だなんて、何を考えているのか。

「分かってるさ。子どもが出来るまでの契約結婚だと思えばいい。子どもが出来たあとはアレクレットの好きにすれば良い。離婚するなり、そのまま結婚生活をつづけるなり。別居してもいいし」
「あの、結婚をそんな簡単に──」
「子どもを産むのはアレクレットで、離婚したら子どもを引き取るのもアレクレットだろ? 俺には何の負担もダメージもない。子どもを産ませるだけして、そのあとは無関係ってのは多少、罪悪感があるけど。それだけだ」

(『それだけ』なわけ無いだろ・・・!)

 ちょっと変った人だと思っていたが、聖紋を調べたいがために結婚しようとしているっぽいクラウディオはちょっとヤバイ奴だ。

 一度、結婚してしまえば、そこには法的な義務と権利が発生する。離婚だって、相手の同意がなければ提出できるものではない。でなければアレクレットの父はとっくの昔に身軽になっているはずなのだ。
 そもそも、アレクレットが結婚したくないと言っているのは知っているはずなのに、何故、結婚するなどというのだろうか。

「あのっ、・・・まず、結婚はしないから。僕たち、まだ会ったばっかりなのに、結婚だなんて気が早いなんてレベルじゃないよ」
「でも、そうでも言わないと教えてくれなさそうだぞ?」
「・・・嘘だった? フリだった? 違うよね? 本当に結婚してもいいと思ってたでしょ」
「まぁ、うん」
「最初に言ったじゃん。僕は結婚したくないんだよ」
「なんでだよ。アレクレットは祝福を無くしたいんだろ? だから、子どもが欲しいんだって言ってたじゃないか」
「祝福は無くしたいけど、結婚もしたくないの!」

 語気を強めたアレクレットにクラウディオも黙る。

「・・・じゃあ、どうするんだ? 女を孕ませたくないなら、自分で産むしかない。なのに妊娠する方法を知らないままじゃ、永遠に子どもは出来ないぞ」
「それはそうだけど・・・」

 アレクレットは気持ちを切り替えようと伸ばしたカップに紅茶が残っていないことにすら苛立った。
 行儀悪く空のカップの縁をなぞり、浮いたカップがソーサラーにぶつかり、カチャンと音を立てる。

 向かいに座っていたジョン=スミスがおもむろに立ち上がり、アレクレットのカップにポットの紅茶を注ぎながら言った。

「ここは順当に、交際をなさってはいかがですか?」

 加えて、新しい取り皿に一番上のデザートを美しい所作でサーブしてくれた。
 場をとりなしてくれたのか、と一瞬思ったが、もしかしたらアレクレットの行儀の悪さが癇に障ったのかもしれない。

(ポットに紅茶が残ってること忘れてた。僕、ほんと、カッコわるい・・・)

 落ち込むアレクレットは紅茶をすする。その隣でクラウディオもポットの紅茶をカップに注ぎ、手づかみでデザートを取って一口で食べ、指についたクリームは舐め取った。
 その食べた方は、男らしい豪快さと言うより堅苦しい雰囲気やマナーに疲れて吹っ切れた姿に見えた。

「俺はそれでも良いよ。アレクレットはどうする?」
「僕は・・・」
「断ってもいいけど、良く考えろよ。やっぱり結婚せずに子ども産んでくれる女でも探す? それとも、また次の男を探すのか? その場合は妊娠の方法はわからずじまいだぞ? コイツが教えてくれなくて、自力で探すしかないとしても、俺なら一緒に探してやれるぞ? ──なぁ、やっぱ、付き合うだけじゃ教えてくれねぇのか?」
「では、最低限の条件だけはお教えしましょう」
「え? は? なんで?」
「だってさ、どうする?」
「ど、どうって、えぇ~・・・っ」

 髪を掻きむしりたいくらいの混乱と困惑である。なぜ、ジョン=スミスまで乗り気なのか分からない。

「これは、私の推測ですが、アレクレットさんがここで断ってもクラウディオさんは諦めてくれないと思いますよ。それから、正直に申し上げますと、聖紋の魔法を見てしまった妖精王オタクの彼を放置するのは心配なんですよ。先程もこれ以上の研究をしないという約束はしていただいていませんし」

 『お前のせいか!』とクラウディオを睨むもむしろ満足げにニヤリと笑った。

 アレクレットは深い溜め息をつく。
 女性にはもう頼れないし、妊娠の最低限の条件だけでも知りたいし、クラウディオが諦めないのは容易に想像できる。変に纏わり付かれるよりは、一度、付き合って妊娠方法を一緒に探ってもらう方が良いかもしれない。

「わかったよ・・・付き合えば良いんだろ・・・」
「ヨシッ!」







***











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