8 / 16
第8話
しおりを挟む
あれから1ヶ月、とりあえず皆の役割や立場が決まった。
俺はリリーナスの国王、軍務最高司令長官になってしまった……。簡潔に三文字で表すとトップである。……責任重大すぎて今にもつぶれてしまいそうだ……。
チハたんは【レイン様親衛隊】とやらの大将、軍務幹部、そして内政官という何とも忙しそうな──一部よく分からんのがあるが──役割となった。まぁチハたんは戦場じゃなかったら全然真面目だし頼りになるから大丈夫だろう。……多分。
リュンテは剣士隊大将兼訓練所総官。実は内政官にもなってもらおうとしたのだが、シャーリスやベレッタに猛反対された為断念した。理由は、バカだから、だそうだ。
マルナは術士隊大将、親衛隊副大将である。なぜ術士隊の大将になったかというと、元々マルナは剣よりも魔法の方が得意らしく、その腕は魔人の中でもピカ一らしいため術士隊に行ってもらった。ちなみに【レイン様】が抜けているのは、チハたんしか言ってないためである。
ベレッタは内政総官兼外交官、そして軍師で主に内政を担当してもらう。実はベレッタは武術などは得意ではなく、逆に本を読んだり考えたりする才能──いや技術があったためである。ついでにこの中じゃ一番年齢が高いためでもある。
シャーリスは補給及び援護部隊の総責任者、内政官である。なにやら前までは後方や戦陣で負傷者の治癒に当たっていたらしく、この役割がベストだと思って決めた。
そしてルーカスは訓練所副長官になってもらった。元々は幹部クラスにつける予定はなかったが、余りにも訓練所総官殿がアレなため、特例で副長官として就任してもらった。
他にも色々役職や役割があるものの俺は誰が誰かが分からないため、そこらへんの人事は顔が広いらしいべレッタに一任した。
そんなこんなで、順調に国造りが進んで行った。
──────────
「ん~朝だぁ~…………って寒っ!」
起きた途端、猛烈な寒さが肌を撫でる。俺は良質で暖かいふわふわした毛布に包まりつつ、恐る恐る外を見る。いつも寝室の窓からは、まず手前に沢山の家が見え多くの人が行き来し、奥には畑が広がっている。しかし今日は見渡す限りの白白白で、家々の屋根には雪が厚く積もっていて、人々は雪かき作業をしており、奥の畑も全て雪に覆われている。幸い今は作物を植えていないため作物系の被害はない。
「……大雪やん……」
そういえばこの前マルナが第一冬季に入ったとかなんとか言っていた事を思い出す。前の世界で言うと12月頃かな?
寒さに凍え、今更ながら暖房器具の偉大さに気づきつつ、押し入れの中から服を取り出す。着てみるとこれまた冷たい。こればっかりはしょうがないと、渋々部屋を出る。
俺の住んでいる家は、持ち主のいなくなっていた大きな空き家を大幅改装して建てた家だ。二階建てで部屋は10以上あり、なんと魔法を使った水道なんて物もある。
洗面台で顔を洗い、パッと鏡を見る。鏡にはボサボサだが光沢のある白髪、キラキラした水色の瞳、少し膨らみがあり幼さがある顔、そして透き通るような白い肌の幼き少女が映っている。元々自分の顔には何かしらの違和感や「誰こいつ?」とか思ったりするが、元々40代近いおっさんからいきなりこんな姿になってしまったら。違和感とか「誰こいつ?」とかすっ飛ばして苦笑いしてしまう。だって違和感の塊だもの。
「…………かわええぇぇ……」
こぼれるように言ってしまったがハッと我に返り、ブンブンと顔を振って恥ずかしさを紛らわせる。しかしまぁなんと俺は可愛い姿に転生できたのだろう。当分は鏡で自分の姿見てるだけで癒されそ──
「レイン様、いつまで顔洗ってるんですか? 朝食、できましたよ」
「ふゃ、ふゃい!」
自分で自分の顔を見てニタニタするところを見られそうになり、焦ったためかなんとも間抜けな返事になってしまった。
声をかけてきたのはマルナで、いつも身の回りの事をしてくれる。これくらい自分でもできるよと言っても「レイン様の身の回りのお世話が私の仕事なので」と言われて断られ、申し訳なく思いつつも家事のほとんどをマルナに任せきっている。ちなみにマルナはこの家に住んでくれていて、とても心強い。…………できれば風呂に入るときは一人にしてほしいのだが……。
「………………可愛いなぁ……」
「……? 今何かい──」
「早くいかないとシチューが冷えてしまいますよ」
「なにっ!? そりゃぁ大変だ!」
「シチューが」と聞いた瞬間、俺は寒い時だからこそ食べたい熱々のシチューを食べるため全力でリビングに向かうのであった。
──────────
「あ、危ないですから走らないでください!」
いきなりレインが走り出した為マルナは慌てて止めようとしたが、レインはそのまま走っていってしまった。
「……行っちゃった」
廊下に一人残され、マルナはそっと呟く。
いつもはしっかりしていて頼りになるレインだが、朝と食事の時に関してはどこか幼さを感じてしまう。
マルナは元々料理や家事などしたことがなかったが、最初にレインに褒められ自信がつき、その後も主にべレッタに色々教わって、今や達人の域にまで達している。だがマルナは余り自分の料理をレイン以外に食べさせたくない。理由は単純。照れくさいからだ。
だがレインに対しては積極的に食べてもらいたい。というかそれが仕事でもあるのだが、自分の手料理を美味しそうに食べてくれる姿はどこか、死んでしまった弟のマルタのように思えてきて切なく思ったり、余りにも可愛らしくてこっちも幸せになってきたり、そしてちょっと羨ましくさせてくれる。
「……まったくしょうがないですね」
そう言うとマルナはレインがいるリビングに向かった。
──────────
「雪ヤバいわ……」
マルナ作の朝食を食べ、外に出た俺はあまりの雪の多さに立ち止まってしまった。
「レイン様、おはようございます」
「おはようチハたん……って、雪だらけじゃん」
チハたんは車体のそこらかしこに雪が付着していて、前に雪かきのような物をつけている。どうやら雪かきをしてくれていたらしい。そういえば道には雪が積もっていない。
「みんなの為に雪かきしてくれてたのかチハたん?」
「いえ、チハが通行するのに邪魔だったからです。」
「あーたしかにチハたんだとこの雪じゃ移動できないもんな……。そういえばチハたんは寒くないのか?」
「ご心配ありません。チハは戦車ですから寒いという感覚はありません。それに大和魂があるので全然寒くなックシュンッ!」
「いや寒いんじゃん!!」
「ズビビビビご心配なくレイン様。寒さの対策などシベリア出兵以後から完璧に万全ですから──フッ!」
そう言うと『ブルルルル……!!』とチハたんがエンジンをふかした。
「なるほど……この手があったか」
「レイン様もやってみますか? 暖かいですよ?」
「いや俺エンジン無いから……」
「冗談ですよ。」
「レイン様、お話し中失礼します。」
そんな会話をしていると、ルーカスが話しかけてきた。
「どうした?」
「先ほど、この街に何者かが近づいてきている気配を感じました。まだどのような者なのかは分かりませんが、一人だけ物凄い魔力を感じます」
「ふむふむ……」
「そんな奴らこのチハが蹴散らしましょう」
途端チハたんがキャラキャラと音を鳴らして走り出す。
「お、おいチハたん!? 方向わかるん?」
「大和魂です」
「えぇ……」
不安が残るが、とりあえず俺はチハたんに乗ってついていった。
──────────
「──まさかほんとにこっちから来るとは……」
チハたんに乗って南の橋まで来たが、ちょうど橋の先に数十名の武装した人たちがいた。そして一番前にいる黒髪の男、精密多彩な模様が描かれた大剣を持ち、それ以外の装備品はつけていないが他を寄せ付けない圧倒的な存在感を放っている。
対してこちらは、俺とチハたんとルーカスとリュンテとシャーリス。戦力的には充実していが外交、例えば交渉や対話等となった場合はベレッタがいないから少々……いやだいぶ厳しい。
──さて……どう来るか……。
チハたんから降り橋に近づいてみると、向こう岸からも一番先頭に立っていた男が橋に近づいてきた。
「よぉ」
「ど、ども」
「滅びかけた魔人の国が復興したって聞いたから来てみたがよぉ……まさかこのロりがこの国仕切ってんのか? てめ名前は、ってか何歳だよ」
「……先にあんたが名乗ったらどうだ?」
「ハッ! おめえなんかのロりチビに俺様から名乗るだと? バカかてめぇ! 俺様はクラメディア王国の王、マサト・トヨシマだぜ? お前みたいなロりチビなんかに先に名乗るわけねぇだろうが!」
「名乗ってますやん!」
「し、しまっ……!? ……俺としたことが口を滑らせちまったぜ……まぁいい、おめぇも名乗れよ」
「ハイハイ。俺はレイン、姓はない。歳は……えっと見た目は10歳、頭脳は39歳、精神年齢は31っス」
「……はぁ? てめぇ転生者か!?」
クラメディア大国の王らしいマサトは、どうやら俺が転生者だと分かったらしい。少なくとも馬鹿なやつじゃないな。
「その通り。ってことはマサトさんも転生者なんだな?」
「んだよ転生者かよ……。てことはよぉ、おめぇもあれか? 何かしらのチートスキル持ってんのかよ?」
──なんと……この言い方からして絶対こいつもチートスキル持ってるじゃん……。
さて、正直に答えるべきか……それとも嘘を言うか……。とその時、後ろからの物凄い殺気を感じ俺は嫌な予感にかられ、恐る恐る後ろに振り返る。
「──聞いていれば貴様さっきからレイン様をお前呼ばわりとは……すこしは立場をわきまえて言ったらどうですか……?」
赤いオーラを纏ったチハたんだ。だいぶお怒りのご様子。
どうやらマサトもチハたんに気がついたらしく「んだこれ!? 戦車!?」と驚いてる。
「貴様のようなクズに名乗る筋合いはありません。死ね」
『ドォン!』
俺が止める暇もなくチハたんはマサトに向けて発砲した。だが幸い? ギリギリのところで回避した。
「っとぉ、自己紹介は不要だぜぇ。てめぇは大日本帝国陸軍の九七式中戦車チハだろ?」
「……っ!? 貴様っ何故それを……!?」
「ハッ! 俺の手にかかればてめぇの正体なんぞ一目瞭然だぜ!」
車両名まで当てられ、チハたんは進みかけていたキャタピラを止める。
チハという名前を知っているならまだしも、九七式中戦車だとまで言い当てるとは……もしやマサト、俺と同類!?
「ククク……どうして分かるんだ? って顔だなぁ。知りたいだろ? ハッ! 俺様のスキル叡智之魔眼だって事、教えるわけねぇよだろ雑魚が!」
──わざとやってんのか!?
もはやわざと言っているようにしか思えないマサトは、流石に己の失言に気がついたのか「あ……」というような顔をする。
「く、クソ……俺様としたことが口を滑らしちまったぜ……」
「雑魚が」
「んだとぉ!」
「まぁまぁお互い落ち着けって」
これ以上事態が悪化させない為に、俺はとりあえずチハたんを下がらせ、マサトと俺1体1の状況にする。
「一段落着いたところだしマサトさん、ここに来た理由を教えてくれないか?」
「……わかったぜ。──単刀直入に聞く。おめぇはエイリスタの関係者か?」
「エイリスタ……?」
「……んだよ知らねぇのかよ! どうなってんだよディルカ!」
マサトは頭を掻きながら後ろの配下の中の一人を呼び出した。
「申し訳ありませんマサト様。どうやら情報屋から得た情報が間違っていたようでございます。」
「あぁ? 情報屋だぁ? 後でそいつら連れてこい!」
「かしこまりました」
そう言うとディルカという紫色の髪の秘書? は、ササササーと戻っていった。
「すまねぇなレイン。俺らの勘違いだったようだぜ……。時間取らせたな、悪ぃ。んじゃ」
「えちょ……」
足早に帰っていこうとするマサトを、俺は慌てて止めた。
「んだよぉ。まだなんか用あんのかぁ?」
「そ、その…………これを機にこの2ヶ国間で友好を結ばないか?」
「ハッ! 友好なんざ結ぶわけねぇだろ」
「なんでぇ……?」
「そもそもなぁ交流一日目で友好結ぶ馬鹿がどこにいんだよ」
「うぐ……ご、ごもっとも……」
たしかに「出会って初日に友達だ!」なんて言うのは非常識すぎる……。ってか非常識通り越して頭おかしいじゃん……。
「それによぉ、無茶苦茶強い国ならまだしもこんな廃墟みたいな国と友好結んでも無駄──」
「──ずいぶんと言ってくれるじゃない! そんなに言うなら私と勝負しなさいよ! あんたの言う廃墟みたいな国の力見してあげるわ!」
「リュンテ殿、チハも協力しますよ」
「……これは僕も参戦しないといけないようだね……」
万を持したかのように、リリーナスの最高戦力の3人が前に出てきた。出来れば穏便に済ませたいところだが、ここまで舐められてはそうはいかない。俺を馬鹿にするのは良いが、リリーナス自体を馬鹿にされるのは許せないし、そもそも皆が許さない。建国してまだ間もないが、俺達には確かな絆が芽生えている──と思いたい!
「ハッ! いいぜ乗ってやろうじゃねぇかその勝負!」
「ボッコボコにしてやるわ!」
こうして、レイン率いるリリーナス大国と、マサト率いるクラメディア大国の代表三人による決闘が始まったのである。
俺はリリーナスの国王、軍務最高司令長官になってしまった……。簡潔に三文字で表すとトップである。……責任重大すぎて今にもつぶれてしまいそうだ……。
チハたんは【レイン様親衛隊】とやらの大将、軍務幹部、そして内政官という何とも忙しそうな──一部よく分からんのがあるが──役割となった。まぁチハたんは戦場じゃなかったら全然真面目だし頼りになるから大丈夫だろう。……多分。
リュンテは剣士隊大将兼訓練所総官。実は内政官にもなってもらおうとしたのだが、シャーリスやベレッタに猛反対された為断念した。理由は、バカだから、だそうだ。
マルナは術士隊大将、親衛隊副大将である。なぜ術士隊の大将になったかというと、元々マルナは剣よりも魔法の方が得意らしく、その腕は魔人の中でもピカ一らしいため術士隊に行ってもらった。ちなみに【レイン様】が抜けているのは、チハたんしか言ってないためである。
ベレッタは内政総官兼外交官、そして軍師で主に内政を担当してもらう。実はベレッタは武術などは得意ではなく、逆に本を読んだり考えたりする才能──いや技術があったためである。ついでにこの中じゃ一番年齢が高いためでもある。
シャーリスは補給及び援護部隊の総責任者、内政官である。なにやら前までは後方や戦陣で負傷者の治癒に当たっていたらしく、この役割がベストだと思って決めた。
そしてルーカスは訓練所副長官になってもらった。元々は幹部クラスにつける予定はなかったが、余りにも訓練所総官殿がアレなため、特例で副長官として就任してもらった。
他にも色々役職や役割があるものの俺は誰が誰かが分からないため、そこらへんの人事は顔が広いらしいべレッタに一任した。
そんなこんなで、順調に国造りが進んで行った。
──────────
「ん~朝だぁ~…………って寒っ!」
起きた途端、猛烈な寒さが肌を撫でる。俺は良質で暖かいふわふわした毛布に包まりつつ、恐る恐る外を見る。いつも寝室の窓からは、まず手前に沢山の家が見え多くの人が行き来し、奥には畑が広がっている。しかし今日は見渡す限りの白白白で、家々の屋根には雪が厚く積もっていて、人々は雪かき作業をしており、奥の畑も全て雪に覆われている。幸い今は作物を植えていないため作物系の被害はない。
「……大雪やん……」
そういえばこの前マルナが第一冬季に入ったとかなんとか言っていた事を思い出す。前の世界で言うと12月頃かな?
寒さに凍え、今更ながら暖房器具の偉大さに気づきつつ、押し入れの中から服を取り出す。着てみるとこれまた冷たい。こればっかりはしょうがないと、渋々部屋を出る。
俺の住んでいる家は、持ち主のいなくなっていた大きな空き家を大幅改装して建てた家だ。二階建てで部屋は10以上あり、なんと魔法を使った水道なんて物もある。
洗面台で顔を洗い、パッと鏡を見る。鏡にはボサボサだが光沢のある白髪、キラキラした水色の瞳、少し膨らみがあり幼さがある顔、そして透き通るような白い肌の幼き少女が映っている。元々自分の顔には何かしらの違和感や「誰こいつ?」とか思ったりするが、元々40代近いおっさんからいきなりこんな姿になってしまったら。違和感とか「誰こいつ?」とかすっ飛ばして苦笑いしてしまう。だって違和感の塊だもの。
「…………かわええぇぇ……」
こぼれるように言ってしまったがハッと我に返り、ブンブンと顔を振って恥ずかしさを紛らわせる。しかしまぁなんと俺は可愛い姿に転生できたのだろう。当分は鏡で自分の姿見てるだけで癒されそ──
「レイン様、いつまで顔洗ってるんですか? 朝食、できましたよ」
「ふゃ、ふゃい!」
自分で自分の顔を見てニタニタするところを見られそうになり、焦ったためかなんとも間抜けな返事になってしまった。
声をかけてきたのはマルナで、いつも身の回りの事をしてくれる。これくらい自分でもできるよと言っても「レイン様の身の回りのお世話が私の仕事なので」と言われて断られ、申し訳なく思いつつも家事のほとんどをマルナに任せきっている。ちなみにマルナはこの家に住んでくれていて、とても心強い。…………できれば風呂に入るときは一人にしてほしいのだが……。
「………………可愛いなぁ……」
「……? 今何かい──」
「早くいかないとシチューが冷えてしまいますよ」
「なにっ!? そりゃぁ大変だ!」
「シチューが」と聞いた瞬間、俺は寒い時だからこそ食べたい熱々のシチューを食べるため全力でリビングに向かうのであった。
──────────
「あ、危ないですから走らないでください!」
いきなりレインが走り出した為マルナは慌てて止めようとしたが、レインはそのまま走っていってしまった。
「……行っちゃった」
廊下に一人残され、マルナはそっと呟く。
いつもはしっかりしていて頼りになるレインだが、朝と食事の時に関してはどこか幼さを感じてしまう。
マルナは元々料理や家事などしたことがなかったが、最初にレインに褒められ自信がつき、その後も主にべレッタに色々教わって、今や達人の域にまで達している。だがマルナは余り自分の料理をレイン以外に食べさせたくない。理由は単純。照れくさいからだ。
だがレインに対しては積極的に食べてもらいたい。というかそれが仕事でもあるのだが、自分の手料理を美味しそうに食べてくれる姿はどこか、死んでしまった弟のマルタのように思えてきて切なく思ったり、余りにも可愛らしくてこっちも幸せになってきたり、そしてちょっと羨ましくさせてくれる。
「……まったくしょうがないですね」
そう言うとマルナはレインがいるリビングに向かった。
──────────
「雪ヤバいわ……」
マルナ作の朝食を食べ、外に出た俺はあまりの雪の多さに立ち止まってしまった。
「レイン様、おはようございます」
「おはようチハたん……って、雪だらけじゃん」
チハたんは車体のそこらかしこに雪が付着していて、前に雪かきのような物をつけている。どうやら雪かきをしてくれていたらしい。そういえば道には雪が積もっていない。
「みんなの為に雪かきしてくれてたのかチハたん?」
「いえ、チハが通行するのに邪魔だったからです。」
「あーたしかにチハたんだとこの雪じゃ移動できないもんな……。そういえばチハたんは寒くないのか?」
「ご心配ありません。チハは戦車ですから寒いという感覚はありません。それに大和魂があるので全然寒くなックシュンッ!」
「いや寒いんじゃん!!」
「ズビビビビご心配なくレイン様。寒さの対策などシベリア出兵以後から完璧に万全ですから──フッ!」
そう言うと『ブルルルル……!!』とチハたんがエンジンをふかした。
「なるほど……この手があったか」
「レイン様もやってみますか? 暖かいですよ?」
「いや俺エンジン無いから……」
「冗談ですよ。」
「レイン様、お話し中失礼します。」
そんな会話をしていると、ルーカスが話しかけてきた。
「どうした?」
「先ほど、この街に何者かが近づいてきている気配を感じました。まだどのような者なのかは分かりませんが、一人だけ物凄い魔力を感じます」
「ふむふむ……」
「そんな奴らこのチハが蹴散らしましょう」
途端チハたんがキャラキャラと音を鳴らして走り出す。
「お、おいチハたん!? 方向わかるん?」
「大和魂です」
「えぇ……」
不安が残るが、とりあえず俺はチハたんに乗ってついていった。
──────────
「──まさかほんとにこっちから来るとは……」
チハたんに乗って南の橋まで来たが、ちょうど橋の先に数十名の武装した人たちがいた。そして一番前にいる黒髪の男、精密多彩な模様が描かれた大剣を持ち、それ以外の装備品はつけていないが他を寄せ付けない圧倒的な存在感を放っている。
対してこちらは、俺とチハたんとルーカスとリュンテとシャーリス。戦力的には充実していが外交、例えば交渉や対話等となった場合はベレッタがいないから少々……いやだいぶ厳しい。
──さて……どう来るか……。
チハたんから降り橋に近づいてみると、向こう岸からも一番先頭に立っていた男が橋に近づいてきた。
「よぉ」
「ど、ども」
「滅びかけた魔人の国が復興したって聞いたから来てみたがよぉ……まさかこのロりがこの国仕切ってんのか? てめ名前は、ってか何歳だよ」
「……先にあんたが名乗ったらどうだ?」
「ハッ! おめえなんかのロりチビに俺様から名乗るだと? バカかてめぇ! 俺様はクラメディア王国の王、マサト・トヨシマだぜ? お前みたいなロりチビなんかに先に名乗るわけねぇだろうが!」
「名乗ってますやん!」
「し、しまっ……!? ……俺としたことが口を滑らせちまったぜ……まぁいい、おめぇも名乗れよ」
「ハイハイ。俺はレイン、姓はない。歳は……えっと見た目は10歳、頭脳は39歳、精神年齢は31っス」
「……はぁ? てめぇ転生者か!?」
クラメディア大国の王らしいマサトは、どうやら俺が転生者だと分かったらしい。少なくとも馬鹿なやつじゃないな。
「その通り。ってことはマサトさんも転生者なんだな?」
「んだよ転生者かよ……。てことはよぉ、おめぇもあれか? 何かしらのチートスキル持ってんのかよ?」
──なんと……この言い方からして絶対こいつもチートスキル持ってるじゃん……。
さて、正直に答えるべきか……それとも嘘を言うか……。とその時、後ろからの物凄い殺気を感じ俺は嫌な予感にかられ、恐る恐る後ろに振り返る。
「──聞いていれば貴様さっきからレイン様をお前呼ばわりとは……すこしは立場をわきまえて言ったらどうですか……?」
赤いオーラを纏ったチハたんだ。だいぶお怒りのご様子。
どうやらマサトもチハたんに気がついたらしく「んだこれ!? 戦車!?」と驚いてる。
「貴様のようなクズに名乗る筋合いはありません。死ね」
『ドォン!』
俺が止める暇もなくチハたんはマサトに向けて発砲した。だが幸い? ギリギリのところで回避した。
「っとぉ、自己紹介は不要だぜぇ。てめぇは大日本帝国陸軍の九七式中戦車チハだろ?」
「……っ!? 貴様っ何故それを……!?」
「ハッ! 俺の手にかかればてめぇの正体なんぞ一目瞭然だぜ!」
車両名まで当てられ、チハたんは進みかけていたキャタピラを止める。
チハという名前を知っているならまだしも、九七式中戦車だとまで言い当てるとは……もしやマサト、俺と同類!?
「ククク……どうして分かるんだ? って顔だなぁ。知りたいだろ? ハッ! 俺様のスキル叡智之魔眼だって事、教えるわけねぇよだろ雑魚が!」
──わざとやってんのか!?
もはやわざと言っているようにしか思えないマサトは、流石に己の失言に気がついたのか「あ……」というような顔をする。
「く、クソ……俺様としたことが口を滑らしちまったぜ……」
「雑魚が」
「んだとぉ!」
「まぁまぁお互い落ち着けって」
これ以上事態が悪化させない為に、俺はとりあえずチハたんを下がらせ、マサトと俺1体1の状況にする。
「一段落着いたところだしマサトさん、ここに来た理由を教えてくれないか?」
「……わかったぜ。──単刀直入に聞く。おめぇはエイリスタの関係者か?」
「エイリスタ……?」
「……んだよ知らねぇのかよ! どうなってんだよディルカ!」
マサトは頭を掻きながら後ろの配下の中の一人を呼び出した。
「申し訳ありませんマサト様。どうやら情報屋から得た情報が間違っていたようでございます。」
「あぁ? 情報屋だぁ? 後でそいつら連れてこい!」
「かしこまりました」
そう言うとディルカという紫色の髪の秘書? は、ササササーと戻っていった。
「すまねぇなレイン。俺らの勘違いだったようだぜ……。時間取らせたな、悪ぃ。んじゃ」
「えちょ……」
足早に帰っていこうとするマサトを、俺は慌てて止めた。
「んだよぉ。まだなんか用あんのかぁ?」
「そ、その…………これを機にこの2ヶ国間で友好を結ばないか?」
「ハッ! 友好なんざ結ぶわけねぇだろ」
「なんでぇ……?」
「そもそもなぁ交流一日目で友好結ぶ馬鹿がどこにいんだよ」
「うぐ……ご、ごもっとも……」
たしかに「出会って初日に友達だ!」なんて言うのは非常識すぎる……。ってか非常識通り越して頭おかしいじゃん……。
「それによぉ、無茶苦茶強い国ならまだしもこんな廃墟みたいな国と友好結んでも無駄──」
「──ずいぶんと言ってくれるじゃない! そんなに言うなら私と勝負しなさいよ! あんたの言う廃墟みたいな国の力見してあげるわ!」
「リュンテ殿、チハも協力しますよ」
「……これは僕も参戦しないといけないようだね……」
万を持したかのように、リリーナスの最高戦力の3人が前に出てきた。出来れば穏便に済ませたいところだが、ここまで舐められてはそうはいかない。俺を馬鹿にするのは良いが、リリーナス自体を馬鹿にされるのは許せないし、そもそも皆が許さない。建国してまだ間もないが、俺達には確かな絆が芽生えている──と思いたい!
「ハッ! いいぜ乗ってやろうじゃねぇかその勝負!」
「ボッコボコにしてやるわ!」
こうして、レイン率いるリリーナス大国と、マサト率いるクラメディア大国の代表三人による決闘が始まったのである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる