異世界ならチハたんでも無双できる説!!

清川ダイト

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第12話

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「……遅かったか」

 襲撃の一報を受けて全速で村に向かったが時すでに遅く、村はシンと静まり返っていた。家のドアドアや窓はことごとく破壊されており、かなり荒らされている状態であった。

「とりあえず一小隊ごとに生存者を捜索しよう。シャーリスは俺とチハたんについてきてくれ」
「「「「了解ですっ!」」」」

 元気よく返事をして各々決められた小隊に指示を出しているの彼女らは、歳こそ若く平均年齢が17歳ではあるが、実質この国の軍隊である親衛隊の大佐以上の階級を持った人たちで、元々は後方の補給部隊などで勤めていたけど剣の才があった者を、ルーカス教官のもと腕を磨いてきた強者たちである。それらに五人一組で一個小隊、それが四つで一個中隊となり国全体では二個中隊、つまり一個大隊が存在している。

 この場にいるのは親衛隊の半分である四個小隊と俺、チハたん、シャーリス、ベレッタ、そしてこの辺り周辺に詳しいという黒髪のオジサン……ではなく、旧デルタ国の軍指揮官であるバラムスがおり、それぞれが散開して村の中を捜索する。

 ちなみになぜ五人一組で行動させるのかというと、生存性を上げるためであり、かつその小隊の中でお互いに信頼しあえるようにしやすくするためである。

「バラムスさん。今のところ人気ひとけが無いがこの状態をどう思う。」
「おう、そうだな……まぁ静かすぎて不気味だな。もしかしたら罠の可能性もある。」

 確かに不気味だ。ドアや窓がことごとく破壊され、荒らされているというのに死体はおろか何も無い。慎重に捜索しなければならないな。

 俺達は早速、ドアはおろか壁すらも破壊された家の捜索に取り掛かった。

──────────

「生存者二名発見しました!」

 最初の生存者発見の報告は、捜索を始めてから三十分後のことだった。

 発見した隊はマイラ率いる第二小隊の五人で、話によると瓦礫が散乱する家の中のバリケードの先のクローゼットの中にいたらしい。それも二人。生き残っている彼女ら二人にも何があったのか聞き取りたいところだが、精神面を考慮して後にすることにした。

 その後も村内を隅々まで捜索し、最終的に全能之魔眼パーフェクト・アイを使って村全体を透視したが、最初に発見した少女二人しか発見することができなかった。

 そして、チハたんの車庫で臨時の会議をすることになった。

──────────

「とりあえず今回の襲撃の状態についての確認をしよう。」

 チハたんの車庫に集まったリリーナスの幹部十人+五人が一様にこちらを向く。

「村が襲撃されたのはおそらく昨日の晩から早朝にかけて、しかし襲われた形跡はあるのに遺体は無く、生存者は隠れていた子供二人だけ。それ以外の人達は影も形もなく行方不明……と、現状はこんな感じだ」

 全員押し黙り不穏な空気が流れる。おそらく皆察しているのだろう。行方不明になった村人たちは恐らくもうこの世にいない──と。

「……うん。皆察している通り行方不明になった人たちが既に殺されている可能性は高い。けどそれならなぜその場で殺さないのか、村中の人たちを外に移動させるわけだからそれなりに目立つし痕跡も残るし、それを辿って襲撃者の行方も分かるんだから、相手には不利益しかない。だがそうでもしないとあの村の状態にはならない。それにだ、生かしておけば人質にしてこちらに要求を迫ることができる。だから俺はまだ誰も死んでいないと思うんだ。」

 俺は一度口を止め、椅子に座る。俺の椅子は他よりも高く、背の小さい俺専用に座高を高くしてもらった特注の椅子だ。クッションは無いが座り心地も良い。

「……ごめん。俺ばっかり話過ぎた。他に何か意見があったり今後の行動に関して何か提案があったら言ってくれ。」
「なら俺……失礼、私から今後についての提案が。」
「あぁ、ぜひとも頼む」

 声を上げたのはバラムスだ。既に机に置かれていたティーカップの中身を飲み干したようで、両腕を組んでいる。

「まずだな、今現在の状況を準同盟国のクラメディアと共有、ついでに軍事同盟結んでみるのはどうだ?」
「ほうほう……」
「どんだけ手練れの賊でも同時に二ヵ国敵に回すようなことはしねえだろうし、二ヵ国連合の大規模な討伐隊をで降伏するかもしんねぇしな。」
「確かにそうだな。それに周りの味方は増やしたいし、万が一クラメディアの方も襲撃受けさせてもいけないしな。ありがとうバラムスさん!」

 「歳はともかく位はレイン様のが上なんだし呼び捨てでかまわんのだがな……」と言うバラムスに「あんたは歳老いたオッサンなんだから宿命でしょ!」と、横やりをさすリュンテ。すかさず「宿命はひでぇだろ……」と返すバラムス。

「二人とも静かになさってください。会議中です」

 ベレッタに叱られた二人はシュン……と黙る。

 ──やっぱり年上、そして女には逆らえないのだなリュンテ、バラムス……!

「……さて、他に何か意見や提案あるか?」
「じゃ、じゃあ私良いですか……?」

 恐る恐る小さく手を上げたのはマイラ小隊のアタッカー、ヘナだ。

「どぞ!」
「では……。これはとてつもなく個人的な意見なんですが、領地内の各村に親衛隊を一小隊ずつ駐屯させておくというのはどうでしょうか? 駐屯させておいたら賊から襲撃されないとおもうんですけど。」
「う~ん……いい案でもあるんだけど、戦える部隊が少ない現状であんまり部隊をバラバラに散らしたくないんだよね。もちろん村に住んでいる人を捨てておくなんてことはできないから、どうにか防衛体制を築かないといけないんだけど……」

 ヘナに向けていた視線を、チラッとルーカスに向ける。

「一人一人とは言わないけど、技術だけはルーカスに認めてもらえるくらいにならないと……」
「ねえちょっと! 私は!? 私訓練所の総官なんですけど!?」
「いやー…………えっとその、リュンテの剣技はリュンテが天才だからできるからであってだな………………つ、つまり天才過ぎて他の人には真似できないんだよ!」
「なるほど。そういう事なら納得ね!」

 俺の苦しまぎれの言い訳はリュンテの好評を買ったらしく、自慢げに席に座る。

「話し戻すが一応その対策は考えてはいるんだけど、今すぐにはとてもじゃないけど不可能だ。それに今は行方不明の人達を探すことを最優先にしたい。その為にはこの場の皆の力が必要だ。だからとりあえず国全体の防御体制は行方不明者を見つけた後、本格的に練っていきたい。……ってなことで良いかヘナ?」
「は、はいっ! 身勝手なことを言ってしまい申し訳ありませんでした!」

 ヘナはいきなりガタっと席から立ったと思ったら、頭を下げてきた。

「い、いや別に誤ることじゃないって。意見だしてくれるだけありがたいよ!」
「レインさまぁ……!!」

 まるで何らかの恐怖から解放されたかのごとく、ヘナは涙目で俺の名前を言う。……もしかして俺怖い奴と思われてた!? この姿で!?

 とりあえず俺は苦笑いを浮かべつつ、ヘナを席に座らせる。

「他に何か意見とか提案あるか?」

──────────

 そんなこんなで会議は進行していき、最終的に次の事が決定された。

 まず国全体での防衛体制についてヘナの後にもたくさん意見が出され、それぞれの村に警備隊を常駐させることになった。警備隊の人員はそれぞれの村の人を中心に選定してもらって、武器や剣術や兵法については王都から無償で送り、親衛隊を中心に隊員一人一人を鍛えていく。そして今回の騒動が収まり、軍備拡張が進んできたら各村に二小隊ずつ駐屯させていく。

 次に諸外国との交流について。今現在リリーナス近辺には五つの国がある。一つがマサト率いるクラメディア。そしてつい最近まで……というか今現在も停戦中のバラディア。この二つの他にシラジフ、ネイリサ、ギジーラスの三つの国がある。

 勢力の大きさとして、1番強い勢力としてシラジフとネイリサとギジーラスの三国同盟で、個々の国もクラメディアの互角にあると言うので、もし三国で攻め込まれたらかなりマズイ。二番目に大きいのはバラディアで、これもまた驚異だ。

 今現在もっとも弱い勢力は、どことも同盟を結んでいないクラメディアとリリーナスがもっとも勢力が小さい。それに、今から三国同盟に加わろうとしても属国化され、魔人達の人権が無くなってしまうし、バラディアとの同盟も民衆が許さないだろう。

 だからこそクラメディアと同盟を、それも早急にした方が良い、ということになった。

 どうやら三国同盟が戦争の準備をしているとかしていないとかの情報があるらしく、今のままでは抵抗のしようがない。(ちなみにルーカスのスキルを破ってくる輩もいるらしい。)

 最後に行方不明者の捜索について。これに関しては村を捜索した親衛隊隊員の誰かがそれらしき痕跡を見つけていたらしく、その痕跡を追って犯人のアジトを見つけて叩き、そこにいるであろう行方不明を救出する、ということになった。

──────────

 翌日、橋の向こうにいる皆に手を振りながら、キャラキャラと履帯の音を奏で、俺たちはリリーナスを出た。向かう先はマサトがいるバラディア。

 馬で片道十日間の長旅だが、俺に不安はない。なんせチハたんがいるからどんな敵でも粉砕してしまうだろうし、国にはルーカスやリュンテもいるからそっちの心配もない。

 唯一不安……というか心配なのは十日間の長旅で、チハたんが体力を使い果たしてしまわないかだ。

「チハたん。ここからクラメディアに着くまでだいぶ距離あるけど大丈夫か?」
「ご心配なさらずレイン様。チハはレイン様に乗ってもらえるのが最高の喜びでありますし、エンジンは永久機関なので疲れもありません。」
「そ、そっすか……」
「さあ、外寒いですから中入ってください。風邪ひいたらいけないですから!」

 チハたんにせかされ、実際外は風が当たって寒いから暖房(?)のきいた車内に入る。

「…………」

 ──う~ん……快適すぎ!!

 あまりにも外の気温と車内との気温の差が激しく、それも暑すぎることもないちょうど良い温度だ。これ外に出られなくなる自信があるよ……。

 そんなこんなで特に何か起こることもなく、平穏に俺達はクラメディアに行く。そして持ってきたバックには暇つぶし兼説明用の資料が入っている。
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