異世界ならチハたんでも無双できる説!!

清川ダイト

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第13話

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「わお……」

 俺はハッチからか体を出し、そびえ建った壁を見上げる。平原だからか風が吹いていて、少し体を出すだけで白い髪が揺れる。ちなみに途中で髪をほどいてしまい、かつ自分では髪を綺麗に結ぶこともできないため、今の髪型はいつものポニーテールではなく腰のあたりまで垂れたロングヘアになっている。お陰で通常よりも風の影響をもろに受ける。

 チハたんのおかげで十日間かけて移動する距離を五日間で走破した俺達は、平原のど真ん中にそびえ建った大きな壁を発見した。この壁の中にクラメディアの街が広がっているのであろう。

 壁の近くに行ってみればさらに迫力が増す。まあ俺の身長が小さくなったことで世界全体が前よりも広く感じるようになったのもあるのかもしれないが……。とりあえず入り口を探さなくてはならない。

 壁を右沿いに進んでいくと門があった。

 だがさすがにチハたんに乗って入場は公式的な訪問でも許されないだろうし、そもそも全くの連絡なし非公式で来たわけだから、なおさらダメだ。最悪、戦争になる可能性もある。考えすぎかもしれないが。

 「ここまででいいよ。」とチハたんに言い、停止する。

 戦車から降りた俺は周囲に誰もいないことを確認した。

「……よし、誰もいないな。ありがとうチハたん。ここからは目立つし、小さくなって俺の方とか頭とか好きな所に入っててくれ。」
「了解です。」

 チハたんはぐっとタブレット画面の目を瞑り、赤い光につつまれ、その光が消えるとそこには手の平サイズのチハたんがいた。チャット見てないと踏んでしまいそうだな……。踏まんけど。

 チハたんはどこからそんな力が加わっているのかフワッとジャンプし、バックの中に入る。

 門に行くとやはり門兵さんがいたが、適当に「冒険者です」と言ったら通してくれた。

 門の先、つまり壁の中のクラメディア市街が広がっていた。建物はレンガ造りがメインで、青や赤や中には黄色と色とりどりの建物が並んでいる。それぞれ大きい道に面している建物は、一階部分に露店を出してパン屋や野菜、さらには剣や弓、鎧などの武器を取り扱っているような店もある。一つの小道や路地を見ても清潔で、くまなく整備されている。

 こんなに進んでいる国でも下の上なのだから、リリーナスは尚更急速に近代化させないといけないな……。

「レイン様、もう出ても良いですか?」
「あ、悪い。」

 町を散策しつつそんなことを考えていると、ごそごそっとバックの中からチハたんが顔……砲塔を出す。

 小さくなっているチハたんを肩に乗せ、俺達は街を散策を続ける。

「ちょっと、そこの子。」

 おや、誰か呼ばれてる。ま、俺には関係ないだろうしいいや。

「君だよ君。」

 おやおや、どこのだれか知らんけど気づいてないようだ。

「そこの白い髪の女子、肩におもちゃ乗っけてる君だ」

 ……は? 白い髪の女の子で肩におもちゃ……おもちゃってチハたんの事か……?

 振り返ってみる。警察なのか、そこにはいかにも制服らしい制服を着て、腰に剣をさしている女性。青い制服を着たおねーさんが立っていた。視線は俺に向いている。

「あー……」

 ──もしかしなくても俺じゃん。ってことは肩に乗ってるおもちゃはチハたんか……。

「な、なんでしょうか……?」
「さっきからずっと一人でいるようだけどもしかして迷子なんじゃないの?」
「は……!?」

 ──俺迷子とかそういう年齢じゃないんですけど……!

 一瞬ムッときたが、今や俺の体は10歳にまで若返っていて、他人から見たら一人街を彷徨う幼女だろう。間違われるのも致し方ない。

 俺は愛想笑いを浮かべ、首を横に振る。

「い、いえ。別に迷子というわけではないのですが……」
「なんだそうか。でも街中を一人で歩くのは危ないよ? 私が付いててあげる」
「い、いやその……私これでも一応冒険者志望でして……。だから一人でもある程度は戦えますから」

 苦し紛れにそう言うと、おねーさんは「ほーその歳で冒険者かー!」と言って関心している。

「なら所属する冒険者ギルドの受付所には行ったかい?」

 冒険者という言葉に引っ張られたのか、おねーさんはしゃがんで俺と同じ視線で話してきた。

「い、いえ……というか冒険者ギルドって複数あるんですね……」

 この言葉が俺の最大の過ちであった。

 おねーさんはたいそう驚いたようで「え!? そんなことも知らないの……!?」と言うと、「私が案内してあげるよ!」と俺の腕を引っ張っていく。

「あ、私はルシア。よろしくね!」
「れ、レインです……」

 ──ルシアさん。今あなたがやっていること、誘拐という立派な犯罪ですよ?

──────────

 ルシアさんに引っ張られ、俺は門の近くのある建物に連れていかれた。その建物は白い外壁で、道側には扉が複数設置されており、頻繁に武器を背負った人達が出入りしている。その上には看板で大きく【冒険者ギルド-天龍ノ導てんりゅうのみちびき クラメディア支部】と、大きく書かれている。

「あれが冒険者ギルドですか?」
「その通り。でも細かく言ったらクエストを受注したりする受付所だよ。」

 両開きの扉を開け中に入る。受付所の中は、手前に椅子や机があり、ちょっと進んだところにクエストボードがあり沢山の依頼書が貼られている。そして最奥には複数のカウンターがある。

「たぶんレインちゃんはまだクエスト受けたことないでしょ?」
「ないですね」

 ──なんとなく予想はつくけどな。

「おっけ。説明してあげる!」

 建物中央のクエストボードの前に行く。

「まずクエストを受けるためには依頼書が必要なの。だからこのクエストボードに貼られてある依頼書から、自分のレベルに合った依頼書を選ばないといけない。レインちゃんの冒険者ランクはなに?」
「え……!? た、たぶん一番下……だと思います。」
「あ、もしかして冒険者ランクも知らない感じ?」
「は、はい……」

 そら俺は冒険者じゃないから知らんもん……。おそらくランクCからランクAまであるパターンかな?

「冒険者ランクは全部で五階級あるの」

 ルシアさんは右手の指全部を開いて表現する。つまり俺の予想は見事に外れたわけだ。

「最高ランクはSで、反対に最低ランクはD。階級を上げるためには沢山のクエストをクリアしていくことでランクを上げられるよ。あでも冒険者ギルドによってはそれぞれのランクに順位があって、次のランクの冒険者に決闘を申し込むことができたりもするよ。」
「フムフム……」
「ま、このギルドはやってないけどね~。さて、とりあえず試しにどれかクエスト受けてみよっか!」

 数ある依頼書の中から一枚をとる。

「【森ウサギの討伐 推奨ランクD】どう?」
「ど、どうって言われても……良いんじゃないですか?」
「おっけ!」

 半強制──いや全強制的に決められた依頼書の札を持ち、受付所に向かいクエストを受注した。

 クエストを受けた俺達は壁の外に出て、野兎がいるという森に向かった。

 ちなみにチハたんはいまだに声を出さず、ただ砲塔が永遠に回転し続ける置物になってくれている。いきなり戦車が喋りだしたら俺の身分もばれるだろうし、無許可非公式の訪問なためあまり目立ちたくない。だから今は耐えてくれチハたん!

 話は戻り森の中。一見何もいない静かな森のように思えるが、時々カサカサと草を揺れる音が鳴り、何かしらの小動物がいることが感じ取れる。

「クエストのクリア条件は、この森に大量発生した森ウサギを10匹倒すこと。知ってると思うけど、森ウサギは木と木の間を縫って逃げるのが得意だから、しとめる時は初撃は確実にあてようね」

 一歩前に出た俺は全方位の草むらや木の陰に意識をし、後ろにいるルシアさんに返事をする。

「了解です!」

 この森に来る途中で、なぜ俺にここまでしてくれるのかと聞いたら、「これといった理由は無いけど、まあ仕事上子供を一人にさせるわけにはいかないし、パーティーも組まず一人でクエストを受けさせるのは危なすぎるからね~」と笑顔で言った。魔眼を使って嘘をついているか調べてみたが、全てルシアさんの本心であるようだ。

 そんなこんなで今俺はルシアさんに無防備な背中を向け、五感を周囲に集中させる。もちろんスキルを使えば簡単にどこにいるか分かるし、逃げる暇も与えず倒すことも可能だが、ルシアさんの目の前で……というか人前で使うわけにはいかない。

「あ、そういえば武器持ってなかったね……」
「あー」

 そういえばそうだった。魔法使ったらこの辺りに被害が出るだろうし剣を使った方が良いな。

 俺は自動的に空の右手に集中し、剣の形を創造する。

 何もかも切り裂き、かつ折れない剣。そして魔力を宿すことで威力を底上げできるようなイメージをする。

 すると右手に青い粒子が集まりはじめ、それは次第に剣の形へと集合していく。

「……へ……!?」
「ん……? あっ……!?」

 その光景を見たルシアさんが、そして己のしたことに気が付いた俺が驚きの声をあげる。

 まずいぞ……よりにもよって創造叡智クラフターを使ってしまうだなんて……それも目の前でやん……。

 しかし、幸運にも近くの草むらからウサギが出てきた。さらに何かの気配を感じ取ったのか、森全体のウサギがざわざわと動きだし、それによって直近の10匹の居場所が分かった。

「う、ウサギ倒してきます!!」
「あちょ……」

 「待ちなさ~い!」と声をあげるルシアさんの声を無視し、俺はウサギを追い回った。

──────────

「無事に帰ったのはいいけど、とりあえずどうやって無から剣を生み出したのか説明してくれない?」
「ハイ……」

 ルシアさんは両腕を組み、こちらを見下ろしている。

 ウサギを依頼どおり10匹倒し終わった俺は、正座で剣を前に置き、ルシアさんの目から視線を逸らしていた。

「何と言いますかその……【剣を生成できるスキル】みたいなのです……」
「………………ふーん」

 ジーと俺の体を見渡す。

「そのスキル、使うために何か条件とかあるの?」
「じょ、条件…………たしか自分の精神年齢を削って──」
「なにぃぃぃ!!?? レインちゃんそんな危険なスキルを……!? ご、ごめん!!」
「い、いやそんな大げさな……」

 ルシアさんは正座している俺よりも低く頭を垂れる。おそらく俺が精神年齢を削って剣を生成させたことに責任を感じているのだろう。俺は特に気にしていないのだが……。

「私が剣を買うの忘れてたせいで……」
「い、いやいや、もともと私剣を出そうかな~って考えてましたし、それに剣のスペックもずっと使えるように高くしてますから無駄に使ってないですよ!」
「ほんとに……?」
「ほ、ほんとですよ。剣見てみてください!」

 「うん……」と言い腰を下ろす。そして俺の剣を手に取ると様々な方向から眺めたりしている。

 しばらくすると「なるほど」と呟き立ち上がった。

「いろいろ見てみた感じだと、今まで見たことのあるどの剣にもない輝きを持ってる。かなりの業物ね……」
「おー」
「ま、とりあえず市街区に戻ろうか!」
「はい!」
「あでもこれからそのスキルは本当にピンチな時だけしか使っちゃダメ。約束よ?」
「も、もちろんです……以後気を付けます」

 ──間違って口を滑らさないようにも。

 市街区に戻り俺たちは受付所で報酬を貰った。この後ルシアさんと別れて市街を見物でもしようかと思っていたのだが、受付所を出た頃には日は落ちかけていて、そのまま2人で宿を探すことになった。だがルシアさんが前から宿を予約していたらしく、自分もついでに泊まらしてもらえることになった。

 しかし、宿に着いた途端予想外の人物と遭遇した。

「ま、マサト!?」
「な!?? な、なんでおめぇがクラメディア内にいんだよ!?」
「………………………………へ??」

 マサトと俺との中間の位置に立ち尽くすルシアさん含め、受付カウンター内は疑問と静寂に包まれた。無論、チハたんも含めてだった。
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