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第14話
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「んだよ、それなら先に連絡入れてくれてたらいいじゃねえか!」
「それについては素直にすまん。だけど連絡してるような暇がなくってな……」
事情を説明した俺は、何とかその宿内(高くもなく安くもなく普通の宿)で緊急の会談を行えることになった。
ちなみにルシアさんは俺の正体を知って「ヒェッ!?」と言って驚いた。ちなみに今は部屋に戻っている。
会談は宿の一室の窓際に椅子を並べて座る形だ。普通官邸みたいなところでするべきだが聞いたところによると、財政難で官邸どころか家すら買えねぇそうだ。……庶民の方が国王よりも財力あるんじゃね? と、これも聞いてみたら街全体を囲う壁を築いたりしてたら、いつの間にか一文無しになっていたそうな。そりゃそうなるやろ……。
というわけで、記念すべきリリーナスとクラメディアの第一回首脳会談が始まった。
早速、足を組んで背もたれに背を預けているマサトが話を切り出す。
「しっかし村の襲撃で生き残った生存者二人が怪しーな」
「まあ確かに疑ったけど彼女らはまだ子供だし、それに村の人全員をどこかに連れ出すか殺すのはさすがに無理があると思うけどな」
「でも今んとこそれしか情報がねぇんだろ? そいつらに尋問して何か情報聞き出せばいいじゃねぇか。」
「尋問て……ちゃんと何があったか聞いてみるよ。それとだ、ここからは俺達からの助言と提案だ。」
「言ってみろ」
スーと息を吸って言う。
「俺達リリーナスと同盟を結ばないか?」
「あぁ? 同盟だぁ?」
「まあとりあえず聞いてくれ」
いかにも不満そうに声を荒げさせるマサトを手で制し、地図を取り出した。
「今この付近にある国は六つ。まずここがクラメディア」
地図の左側、クラメディアの点を示す。
「右に進んだこれがリリーナス」
地図の中央よりちょっと右寄り、リリーナスの点を示す。
「それがどうした」
「一応の確認だ。ここからが重要。」
地図上の左上と中央上付近にある三つの点を示す。
「ここに三国同盟が位置しているよな? この三国が今戦争の準備をしているらしいんだ。」
「ほーん……証拠はあんのか?」
「うちの情報部が入手した情報だ。……国王本人の目の前で言うのもなんだが、クラメディアの情報も持ってる。例えば周囲の壁の内部構造はレンガじゃなくてコンクリート、だとかね」
なお、これらすべてはここに来る時間、暇で暇で仕方なかったからバック内の紙を読み漁っていて、そこで知ったことである。あ、もちろん手紙は読んでない。
壁の中はレンガではなくコンクリートというどからどうやって手に入れたのか分からないが、どうやら当たっていたようでマサトは「……フン」と鼻を鳴らした。
「どうやらその情報は本当らしいな……」
「ああ、どうやら事実らしい。最近三国がそれぞれ軍拡を進めているらしいし、国境線沿いにも普段より多くの兵を置いているらしいんだよ。」
「……そうか」
マサトは机にある水がはいったコップを手に取り、飲む。つられて俺もコップを取って冷たいけれどそこまで冷たくない水を口に入れる。うん、水ってかんじの味だ。
「……それで、俺やおめえの国じゃ対抗のしようがない、それにおめえの所は今それどころじゃないから一応俺らと同盟組みてぇってことだろ?」
「いや、確かに今それどころじゃないからマサト達に助けてもらおうとかそういうわけじゃない。混乱が起きている間に攻められたら確実に負けるから同盟を組んでおきたいんだ」
「同盟組んでも勝てねえだろ。本気で勝ちにいくならバラディアとも同盟組むべきだろうが!」
マサトの言っていることはごもっともで、本気で勝つならこの近辺で単独ならば一番大きな軍事国家であるバラディアとも組まないと勝てないし、それでも総合戦力は同盟国の方が上だ。
鋭い目線で睨みつけてくるマサトに対し、俺は冷静に答える。
「確かにバラディアと組んだ方が勝率は上がる。だがな、俺達がバラディアとも組んだらこの辺りの勢力の構図は3対3になる。そうなれば戦争を避けることは絶対に不可能だ。」
「ならどうやって戦争させねえようにすんだよ。ただでさえ今も軍事力で言っちゃあ圧倒的に3同盟の方が上なんだからこっちも軍事力上げねえと攻められるだろうが!」
「だけどもし自分が周辺で覇権を握っている国家として、近くにある自分の国より軍事力や国力全てにおいて劣っている国があって、それをわざわざ戦争してまで取りたいとは思わないだろ? それにだ、たとえ攻撃されても俺達が同盟を結んでおけば同盟国側は二つの戦線を支える必要があるし、クラメディアは壁が分厚く防衛に適していて、リリーナスは戦闘きょ……こ、攻撃に特化しているから同盟側もかなり損害を負うはずだ。」
腕を組んでいるマサトに向けて、さらに言葉を続ける。
「自分で言うのもなんだが大きな損害を受けてまで小国を占領する必要はない。そう考えるはずだし、こっちはこっちで同盟を組んでおけばクラメディアが攻撃されたときにすぐに参戦できる。その逆も然り、だ。」
マサトは太ももに腕を置き、体を前のめりに傾ける。
「……もし俺らがおめぇらを見捨てたとしたらどうする。こっちにとっちゃ得も利益もないことだからな。」
「べつにどうもしないし、マサト達がそんなことはしないってしってるからさ。」
「……なんで言い切れる」
「……そ、そら信頼できるからな。この国を、この国の人々を、そしてマサト。あ、あんたも良い奴そうだし。」
ちょっと目を逸らしながら言う。ちなみにこれは照れ隠しとかではない。ちょっとした色仕掛けだ。
もちろん信頼できるというのは嘘ではないし、街を見ていてもどこもかしこも清潔感に満ち溢れていて、魔眼で見ていても誰一人として嘘(冗談を除く)や詐欺は見られなかった。それにマサトは俺と同じ転生者であるし、税金も取っていないのに国民を守るためにたっかい城壁で街全体を守るくらいだから、言動はあれだがいい奴そうだ。
そのマサトはというと少し怪訝な表情を浮かべたが、「ハッ!」と笑う。
「おめえ体が女になりゃあ中身も変わんのかよ! なあ? レキヤ!」
「ナヌ……!?」
今度こそ本気で赤面する。そういえばマサト叡智之魔眼叡智之魔眼とかいう鑑定系スキル持ってるんだった……。
膠着する俺に代わって、今まで肩の上で黙っていたチハたんが口を開く。
「恥じることありませんよレイン様。レイン様とっても可わ美しいです!!」
「そういう事じゃないんだよぉ……」
──もうヤダおうち帰って隠居したい……。
「なかなかさまになってるじゃねえか。もっと胸おっきかったら惚れてたな!」
「いったいそれはどう言う意味ですか!!」
「そのまんまだぜぇ? 誰がまな板に惚れるか!」
「よ、よくもまあレイン様を侮辱してくれましたね……!! 万死に値します!!!!」
「もう……もうやめてくれ……」
──ほんとにおうち帰りたい……。
そろそろ身も心も限界近くなってきた……。こんなことなら変なこと言わないべきだった……。
顔全体を恥ずかしさのあまり顔面を真っ赤に染めあげる俺に、憐れみを感じたのかマサトは俺の肩に手を置く。
「わりいわりい。おめえが変なこと言ったせいでだいぶ論点ずれたな」
「心の底から反省してます……」
顔を上げ、まだ何か言いたそうなチハたんをおさえて話を戻す。
「話し戻して……マサト、俺達リリーナスと同盟を組まないか?」
マサトは「うーむ」と再び腕を組む。
「正直同盟は組んでやってもいい。だがな、おめえらから提案すんだからよ、何かしら俺達の利益になるものを提示してみろ。物質的な利益だ。物によっちゃあ今回の話はなしだぜ。」
「物質的な利益……」
物質的な利益。つまり同盟締結による三国同盟への抑止力とかではなく、物理的な利益を提示してみろという事か。
真っ先に思いつくのは貿易による利益だが、残念ながらリリーナスは特産品とかは無いし、農作物も使わない分は備蓄に回しているため取引する物がない。
俺は「うーん……」と唸る。
──今マサトが欲しているのは何だろうか……例えば強力な武器とか、領地とか、豪華な食事とか、お金……。
一応よさげな提示品があった。少々小汚い手であるが、これしかない。
「毎月マサトに資本金を無利子で貸す、でどうだ?」
「…………………………いくら出す?」
──よっしゃ釣れた!
俺は心の裏でにやける。もちろん無利子でというこちらには何の利益もない事には変わりないし、そのまま踏み倒されたらたまったもんじゃないが、なんせ相手は一国の主だし同じ同盟国。滅びる時は一緒だ。
ちなみになぜこんなに金を渡せるのかというと、実はクラメディアの壁を建設したのは旧魔人の国デルタの人達らしく、その彼らもバラディアとの戦争で死んでしまい、受け取り先が居なかった大量の金が現在のリリーナス政府に送られたが、あまりにも多いせいで現在倉庫を二つ使って保管している状態なため、どこかに移動させるか使いたいためである。
もちろんこちらも巨大な壁を作れば消えていくだろうが、やろうと思えば俺が一瞬で作り上げてしまうこともできるため、わざわざ時間と労力をかけてする必要もないだろう。
話は戻り、俺は隠しきれなくなったにやけを少し表に出しつつ、右手の指5つを上げる。
「ご……5千万……!?」
「いや500万だ」
──桁が一つ多いです……そんな額は月一では渡せんようちも……。
「どうだ? 月500万。」
「……それならいいぜ、おめえたちと組んでやるよ。よろしく頼むぜ」
「ああ! こちらこそよろしくな!」
こうして俺達多種属国家リリーナスと、マサト率いるクラメディア大国との間に同盟が締結された。
「さて……同盟組んだばかりで申し訳ないんだが、エリンナのことに関して聞きたいことがある。」
「……言ってみろ。聞くだけ聞いてやる。」
「うちの部下、ルーカスが昔リーダーをしていたパーティーのメンバーにエリンナがいたらしいんだ」
マサトは再び腕を組み、「なるほどな」と言う。
「そういうことならエリンナはおめぇらにやってもいい。」
「ま、マジで……!? い、いやありがたいんだけれども……」
「あぁマジだぜ。俺はギルドの奴らとは違ぇからな」
その後なんだかんだあって、結局エリンナはリリーナスへ着いていくということになった。
──────────
マサトとの会談を終え、俺とチハたんは自室に戻った。
部屋の造りは両サイドにベット二つとその横に椅子と机が一つずつある簡素だか割と広めな部屋で、俺はバックと装備を右側の机の上に置きベットに座る。
「はぁ……今日の会談は疲れたな……」
「マサト殿には感謝してもらいたいですね。レイン様の経済支援がないと、ずっとこんな民宿で過ごすしかないでしょうからね!」
「おいさすがに言いすぎだチハたん。クラメディア自体は俺達ののリリーナスよりも圧倒的に栄えてるし、国自体の経済力も俺達の十倍近くあるんだからな? それにルシアさんもいるんだし、そういう挑発的発言は慎みなさい」
「申し訳ありませんでした。でも事実なので。」とまた余計なことを言うチハたんに「今からでも別室にするか?」と言ったら黙って首を横に振った。
でもまあ今日は一日中大人しくしてたしこれ以上言うのは可哀そうだなと思い、チハたんの頭を撫でてやる。
「ルシアさんも、いろいろ目の前で言ってすみません。それと今日一日いろいろ教えてくれてありがとうございました」
ぺこっと左側のベットでなぜかソワソワしているルシアさんに頭を下げる。ルシアさんには冒険者ギルドについていろいろ教えてくれた恩があるし、俺は身分を偽っていた罪もある。
「いっ、いやっわたしがバカでしたほんとにすいませんでした出過ぎたとこ言ってすいませんでした!!!!」
ルシアさんは上ずった声で並べるように謝罪を述べながらすごい速さで頭を下げる。つい数時間前はため口だった人にいきなり敬語で話されたら違和感すごいな……お互い様だけど。
ちなみに、その夜ひと騒動起きたのはまた別の話。
翌日、俺とチハたんはエリンナを加えてリリーナスに向け帰路についた。
そして8日後、リリーナスに帰った俺達はとんでもない事件が起きたことを知った。
「ま、マルナが消えた…………!!??」
「それについては素直にすまん。だけど連絡してるような暇がなくってな……」
事情を説明した俺は、何とかその宿内(高くもなく安くもなく普通の宿)で緊急の会談を行えることになった。
ちなみにルシアさんは俺の正体を知って「ヒェッ!?」と言って驚いた。ちなみに今は部屋に戻っている。
会談は宿の一室の窓際に椅子を並べて座る形だ。普通官邸みたいなところでするべきだが聞いたところによると、財政難で官邸どころか家すら買えねぇそうだ。……庶民の方が国王よりも財力あるんじゃね? と、これも聞いてみたら街全体を囲う壁を築いたりしてたら、いつの間にか一文無しになっていたそうな。そりゃそうなるやろ……。
というわけで、記念すべきリリーナスとクラメディアの第一回首脳会談が始まった。
早速、足を組んで背もたれに背を預けているマサトが話を切り出す。
「しっかし村の襲撃で生き残った生存者二人が怪しーな」
「まあ確かに疑ったけど彼女らはまだ子供だし、それに村の人全員をどこかに連れ出すか殺すのはさすがに無理があると思うけどな」
「でも今んとこそれしか情報がねぇんだろ? そいつらに尋問して何か情報聞き出せばいいじゃねぇか。」
「尋問て……ちゃんと何があったか聞いてみるよ。それとだ、ここからは俺達からの助言と提案だ。」
「言ってみろ」
スーと息を吸って言う。
「俺達リリーナスと同盟を結ばないか?」
「あぁ? 同盟だぁ?」
「まあとりあえず聞いてくれ」
いかにも不満そうに声を荒げさせるマサトを手で制し、地図を取り出した。
「今この付近にある国は六つ。まずここがクラメディア」
地図の左側、クラメディアの点を示す。
「右に進んだこれがリリーナス」
地図の中央よりちょっと右寄り、リリーナスの点を示す。
「それがどうした」
「一応の確認だ。ここからが重要。」
地図上の左上と中央上付近にある三つの点を示す。
「ここに三国同盟が位置しているよな? この三国が今戦争の準備をしているらしいんだ。」
「ほーん……証拠はあんのか?」
「うちの情報部が入手した情報だ。……国王本人の目の前で言うのもなんだが、クラメディアの情報も持ってる。例えば周囲の壁の内部構造はレンガじゃなくてコンクリート、だとかね」
なお、これらすべてはここに来る時間、暇で暇で仕方なかったからバック内の紙を読み漁っていて、そこで知ったことである。あ、もちろん手紙は読んでない。
壁の中はレンガではなくコンクリートというどからどうやって手に入れたのか分からないが、どうやら当たっていたようでマサトは「……フン」と鼻を鳴らした。
「どうやらその情報は本当らしいな……」
「ああ、どうやら事実らしい。最近三国がそれぞれ軍拡を進めているらしいし、国境線沿いにも普段より多くの兵を置いているらしいんだよ。」
「……そうか」
マサトは机にある水がはいったコップを手に取り、飲む。つられて俺もコップを取って冷たいけれどそこまで冷たくない水を口に入れる。うん、水ってかんじの味だ。
「……それで、俺やおめえの国じゃ対抗のしようがない、それにおめえの所は今それどころじゃないから一応俺らと同盟組みてぇってことだろ?」
「いや、確かに今それどころじゃないからマサト達に助けてもらおうとかそういうわけじゃない。混乱が起きている間に攻められたら確実に負けるから同盟を組んでおきたいんだ」
「同盟組んでも勝てねえだろ。本気で勝ちにいくならバラディアとも同盟組むべきだろうが!」
マサトの言っていることはごもっともで、本気で勝つならこの近辺で単独ならば一番大きな軍事国家であるバラディアとも組まないと勝てないし、それでも総合戦力は同盟国の方が上だ。
鋭い目線で睨みつけてくるマサトに対し、俺は冷静に答える。
「確かにバラディアと組んだ方が勝率は上がる。だがな、俺達がバラディアとも組んだらこの辺りの勢力の構図は3対3になる。そうなれば戦争を避けることは絶対に不可能だ。」
「ならどうやって戦争させねえようにすんだよ。ただでさえ今も軍事力で言っちゃあ圧倒的に3同盟の方が上なんだからこっちも軍事力上げねえと攻められるだろうが!」
「だけどもし自分が周辺で覇権を握っている国家として、近くにある自分の国より軍事力や国力全てにおいて劣っている国があって、それをわざわざ戦争してまで取りたいとは思わないだろ? それにだ、たとえ攻撃されても俺達が同盟を結んでおけば同盟国側は二つの戦線を支える必要があるし、クラメディアは壁が分厚く防衛に適していて、リリーナスは戦闘きょ……こ、攻撃に特化しているから同盟側もかなり損害を負うはずだ。」
腕を組んでいるマサトに向けて、さらに言葉を続ける。
「自分で言うのもなんだが大きな損害を受けてまで小国を占領する必要はない。そう考えるはずだし、こっちはこっちで同盟を組んでおけばクラメディアが攻撃されたときにすぐに参戦できる。その逆も然り、だ。」
マサトは太ももに腕を置き、体を前のめりに傾ける。
「……もし俺らがおめぇらを見捨てたとしたらどうする。こっちにとっちゃ得も利益もないことだからな。」
「べつにどうもしないし、マサト達がそんなことはしないってしってるからさ。」
「……なんで言い切れる」
「……そ、そら信頼できるからな。この国を、この国の人々を、そしてマサト。あ、あんたも良い奴そうだし。」
ちょっと目を逸らしながら言う。ちなみにこれは照れ隠しとかではない。ちょっとした色仕掛けだ。
もちろん信頼できるというのは嘘ではないし、街を見ていてもどこもかしこも清潔感に満ち溢れていて、魔眼で見ていても誰一人として嘘(冗談を除く)や詐欺は見られなかった。それにマサトは俺と同じ転生者であるし、税金も取っていないのに国民を守るためにたっかい城壁で街全体を守るくらいだから、言動はあれだがいい奴そうだ。
そのマサトはというと少し怪訝な表情を浮かべたが、「ハッ!」と笑う。
「おめえ体が女になりゃあ中身も変わんのかよ! なあ? レキヤ!」
「ナヌ……!?」
今度こそ本気で赤面する。そういえばマサト叡智之魔眼叡智之魔眼とかいう鑑定系スキル持ってるんだった……。
膠着する俺に代わって、今まで肩の上で黙っていたチハたんが口を開く。
「恥じることありませんよレイン様。レイン様とっても可わ美しいです!!」
「そういう事じゃないんだよぉ……」
──もうヤダおうち帰って隠居したい……。
「なかなかさまになってるじゃねえか。もっと胸おっきかったら惚れてたな!」
「いったいそれはどう言う意味ですか!!」
「そのまんまだぜぇ? 誰がまな板に惚れるか!」
「よ、よくもまあレイン様を侮辱してくれましたね……!! 万死に値します!!!!」
「もう……もうやめてくれ……」
──ほんとにおうち帰りたい……。
そろそろ身も心も限界近くなってきた……。こんなことなら変なこと言わないべきだった……。
顔全体を恥ずかしさのあまり顔面を真っ赤に染めあげる俺に、憐れみを感じたのかマサトは俺の肩に手を置く。
「わりいわりい。おめえが変なこと言ったせいでだいぶ論点ずれたな」
「心の底から反省してます……」
顔を上げ、まだ何か言いたそうなチハたんをおさえて話を戻す。
「話し戻して……マサト、俺達リリーナスと同盟を組まないか?」
マサトは「うーむ」と再び腕を組む。
「正直同盟は組んでやってもいい。だがな、おめえらから提案すんだからよ、何かしら俺達の利益になるものを提示してみろ。物質的な利益だ。物によっちゃあ今回の話はなしだぜ。」
「物質的な利益……」
物質的な利益。つまり同盟締結による三国同盟への抑止力とかではなく、物理的な利益を提示してみろという事か。
真っ先に思いつくのは貿易による利益だが、残念ながらリリーナスは特産品とかは無いし、農作物も使わない分は備蓄に回しているため取引する物がない。
俺は「うーん……」と唸る。
──今マサトが欲しているのは何だろうか……例えば強力な武器とか、領地とか、豪華な食事とか、お金……。
一応よさげな提示品があった。少々小汚い手であるが、これしかない。
「毎月マサトに資本金を無利子で貸す、でどうだ?」
「…………………………いくら出す?」
──よっしゃ釣れた!
俺は心の裏でにやける。もちろん無利子でというこちらには何の利益もない事には変わりないし、そのまま踏み倒されたらたまったもんじゃないが、なんせ相手は一国の主だし同じ同盟国。滅びる時は一緒だ。
ちなみになぜこんなに金を渡せるのかというと、実はクラメディアの壁を建設したのは旧魔人の国デルタの人達らしく、その彼らもバラディアとの戦争で死んでしまい、受け取り先が居なかった大量の金が現在のリリーナス政府に送られたが、あまりにも多いせいで現在倉庫を二つ使って保管している状態なため、どこかに移動させるか使いたいためである。
もちろんこちらも巨大な壁を作れば消えていくだろうが、やろうと思えば俺が一瞬で作り上げてしまうこともできるため、わざわざ時間と労力をかけてする必要もないだろう。
話は戻り、俺は隠しきれなくなったにやけを少し表に出しつつ、右手の指5つを上げる。
「ご……5千万……!?」
「いや500万だ」
──桁が一つ多いです……そんな額は月一では渡せんようちも……。
「どうだ? 月500万。」
「……それならいいぜ、おめえたちと組んでやるよ。よろしく頼むぜ」
「ああ! こちらこそよろしくな!」
こうして俺達多種属国家リリーナスと、マサト率いるクラメディア大国との間に同盟が締結された。
「さて……同盟組んだばかりで申し訳ないんだが、エリンナのことに関して聞きたいことがある。」
「……言ってみろ。聞くだけ聞いてやる。」
「うちの部下、ルーカスが昔リーダーをしていたパーティーのメンバーにエリンナがいたらしいんだ」
マサトは再び腕を組み、「なるほどな」と言う。
「そういうことならエリンナはおめぇらにやってもいい。」
「ま、マジで……!? い、いやありがたいんだけれども……」
「あぁマジだぜ。俺はギルドの奴らとは違ぇからな」
その後なんだかんだあって、結局エリンナはリリーナスへ着いていくということになった。
──────────
マサトとの会談を終え、俺とチハたんは自室に戻った。
部屋の造りは両サイドにベット二つとその横に椅子と机が一つずつある簡素だか割と広めな部屋で、俺はバックと装備を右側の机の上に置きベットに座る。
「はぁ……今日の会談は疲れたな……」
「マサト殿には感謝してもらいたいですね。レイン様の経済支援がないと、ずっとこんな民宿で過ごすしかないでしょうからね!」
「おいさすがに言いすぎだチハたん。クラメディア自体は俺達ののリリーナスよりも圧倒的に栄えてるし、国自体の経済力も俺達の十倍近くあるんだからな? それにルシアさんもいるんだし、そういう挑発的発言は慎みなさい」
「申し訳ありませんでした。でも事実なので。」とまた余計なことを言うチハたんに「今からでも別室にするか?」と言ったら黙って首を横に振った。
でもまあ今日は一日中大人しくしてたしこれ以上言うのは可哀そうだなと思い、チハたんの頭を撫でてやる。
「ルシアさんも、いろいろ目の前で言ってすみません。それと今日一日いろいろ教えてくれてありがとうございました」
ぺこっと左側のベットでなぜかソワソワしているルシアさんに頭を下げる。ルシアさんには冒険者ギルドについていろいろ教えてくれた恩があるし、俺は身分を偽っていた罪もある。
「いっ、いやっわたしがバカでしたほんとにすいませんでした出過ぎたとこ言ってすいませんでした!!!!」
ルシアさんは上ずった声で並べるように謝罪を述べながらすごい速さで頭を下げる。つい数時間前はため口だった人にいきなり敬語で話されたら違和感すごいな……お互い様だけど。
ちなみに、その夜ひと騒動起きたのはまた別の話。
翌日、俺とチハたんはエリンナを加えてリリーナスに向け帰路についた。
そして8日後、リリーナスに帰った俺達はとんでもない事件が起きたことを知った。
「ま、マルナが消えた…………!!??」
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