悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。

金田のん

文字の大きさ
23 / 103
第2章 入団までの1年間(1)、新たな攻略対象との出会い

23:鍛錬2日目・朝の応接間

しおりを挟む
準備を整えた後、城の侍女に案内されてアルフレッドのいる応接間に向かう。
豪華な応接間の扉を開けると、そこには難しい顔をしてうつむく<アイオス>という架空の人物になりすましている兄・フレデリックと、困惑顔のジンがいた。

2人は応接間のソファに座っている。そして、その前の席には、なぜかアルフレッドがふんぞり返って座っていた。


(なんだ、この状況は・・・?)


いぶかしげに思いつつ、私は一歩足を進める。


「アルフレッド殿、お待たせしました。
アイオスにジンはおはよう。朝からこんなところで・・・どうしたんだ?」


兄に成りすましている私は、公爵子息教育で習った従者に対する態度で2人に接した。
その言葉で初めて私が来たことに気づいたのだろう、兄・フレデリックがバッと顔をあげて、私を見つめた。

一瞬、泣きそうな顔になったのは、見間違えじゃないだろう。


(おい・・・何があったんだ・・・)


頭を抱えたい気持ちを無視して、兄を見つめ返すと、彼は力なく笑った。


「公爵様(父・コドック)にフレデリック様の鍛錬の様子を伝えるよう言われていますので、講師をされているアルフレッド殿に昨日の様子を聞いていたのですよ」


従者口調でそう話した後、兄は再び私を見つめてきた。


(レティ・・・本当に大丈夫なのか?)


変装用の魔道具のせいで変化した兄のアッシュグレーの瞳が、眼鏡の奥で雄弁にそう私に語りかける。


(おいおいおい・・・、兄様にこんな表情をさせるなんて・・・。
本当にアルフレッドは一体、何を言ったんだ?
・・・まさか昨日、娼館について・・・私と話したことを言ったんじゃないだろうな・・・?)


ものすごい嫌な予感がして、アルフレッドに視線を向けると、剣呑な目で兄のことを眺めている姿が目に入る。


「アルフレッド殿、私の従者に何を報告したんですか?」

「アルだ」

「は・・・?」

「俺のことはアルでいい」


(いきなり何を言い出すんだ、こいつは・・・。私は何を報告したのか聞いただけだろうが・・・!)


よく分からない状況に一度、肩をすくめ、息を吐きだす。
話を戻すために、再度アルフレッドに視線を向けると、私の方を不機嫌な顔でまっすぐ見つめるアメジストの瞳とかち合った。

仕草が残念な男だが、さすが攻略対象者というべきか・・・改めて対峙したアルフレッドは凄まじく顔が整っていた。思わず少し赤面してしまう。
私は彼と話すことを早々に諦めた。意識すると彼の顔は、前世喪女には刺激が強すぎだ。

兄とジンの方に目線を向けなおすと、ジンはアルフレッドの突然の愛称要請に驚いた顔をしているが、兄・フレデリックは全くの無反応だった。

どうやら、よほどショックなことを聞いたらしい。

心配になってきた私は思わず、兄の顔を覗き込んでしまう。
公爵子息としてはアウトな仕草だが、私の中の12歳のレティシアが、お兄様が心配だとわめくのだ。


「・・・アイオス、どんな報告だったんでしょうか?」


兄と目線が合ったところで、被せるように低音の声が響いた。


上官命令だ・・・・・

「・・・アル殿。・・・・・・これでいいでしょうか?」

(めんどくさいな、こいつ。どこが塩対応キャラだよ・・・!!)


そんな心の声に従い、兄・フレデリックに目線を向けたまま、アルフレッドに適当に対応していたら・・・。

ぐいっと腕を掴まれた。


「呼び捨てでいい、準備が出来たんなら、行くぞ!」

「は・・・?」


私は腕を掴まれたまま、引きずられるように応接間の扉の前までアルフレッドに連れていかれる。
魔法で身体強化できるとはいえ、やはりこの体は力があまり出ない。
一度、掴まれたらアルフレッドのような男の前では無力だ。

扉を出る直前、唖然とするジンと青ざめた顔のメアリ、そして本当に心配そうな兄・フレデリックの顔が目に入った。
その様子に私は、公爵子息教育で得たほほ笑みを浮かべて、兄を安心させようとした。


「アイオス、そんなに心配しないで。そんな顔では、せっかくの男前が台無しだよ」


そう言った瞬間、ガンッという音と共に扉が閉められた。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 そう名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  ✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 ✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

処理中です...