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2話

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 扇情的な赤いショーツが、湿り気のせいで腰紐を解いていない方の太ももにペタリと張り付く。肉感的な白い肌に赤い色が映えてとても淫らだ。

「すごいね。摩耶ちゃん、いっぱい溢れてる」

 濡れた肉の亀裂に呼気がかかるくらいに顔を寄せた智章が、摩耶でさえじっくり見たことがない秘処を丹念に覗いて感心した声で囁く。

「こんなに濡らして仕事できたの? 摩耶ちゃんの座っていた椅子に大きなシミが着いていたんじゃない?」

 笑いながら濡れて震える亀裂に息を吹きかけられて、摩耶はビーズクッションに体を埋める勢いで仰け反って見悶える。
 きっと今、新たに溢れた愛液が智章にはバレてしまってる。

「……よ、汚してない……、ち、ちあき、くん……ひどいこと、言わないで……ッ」
「酷くないよ。大洪水って言うの? それくらい濡らしているのはホントのことだし? ほら、摩耶ちゃん自分で触ってみて? 俺が嘘つきじゃないって分かるくらいにグズグズになってるから」

 智章は摩耶の右手首を掴み、熱く潤んだ股間に白い手を導く。手を添えるように亀裂に摩耶の指を当てさせれば、呆気なく指先は肉の狭間に飲み込まれていった。

「ね、嘘じゃないでしょ? 摩耶ちゃんのココ、グズグズのびしょ濡れじゃん。お尻の割れ目まで伝ってどろっどろ。こんなんじゃ会社で笑われたんじゃない?」

 摩耶の掌を包んで揺すれば、濡れそぼった肉の亀裂からくちゅくちゅと卑猥な音が響いた。

「……か、会社、じゃ……ちゃん、と……してるから……っ!」
「へえ、そうなんだ? ――じゃあ、どうして今はびしょびしょなの? いつから濡れちゃった? 教えてくれたら、もっともっとグチョグチョになっちゃうことシテあげる。……ね、摩耶ちゃん、俺に教えてくれるよね?」

 摩耶の股間から見上げる智章は、幼く首を傾げて言葉をねだる。
 歓喜で震える自分の太ももの間から覗く顔はケチのつけようのない美男子で、なぜその彫刻みたいな顔が自分の秘する場所近くに有るのかわからない。
 綺麗なのに卑猥で、卑猥なのに格好良くて摩耶の下腹部がじんじんと痺れてしまっていた。
 男の色香を持ち始めた智章だが子供の頃の可愛らしさは残したままで、摩耶に阿る顔を見てしまえば唇が歪んで痙攣してしまう。

 ずるい。
 智章はずるい。

 昔から摩耶は智章のそんな表情に弱いのだ。

 噛み締めすぎて少し歯並びの後が残った唇は言葉を紡ぐ。ねっとりとした呼気が絡む声から、摩耶は嘘が言えなかった。

「……ち、智章くん、が……今夜、泊まる……って……連絡、くれた時から……濡れて……溢れちゃう、の……ッ」




 摩耶にとって智章は物心が付いたときから可愛い弟分だ。
 生まれたての雛みたいにいつでも摩耶の後をついて回り、摩耶と手を繋いでいればご機嫌で笑っているような子供だった。

 声変わりをしても、摩耶の身長をいつの間にか追い越しても、バレンタインに本気チョコを何個も貰っても、その立ち位置は変わらない。

 そのはずだったのだ。

 ずっとずっと可愛くて幼い弟分。でも摩耶だけがそう思って、摩耶だけが変わらないままだった。
 けれど違っていたと知ったのは、彼はとっくに弟分を飛び越えて大人になっていたのだと知ったのは、智章が大学の進学で摩耶が働く東京に引っ越してきたからだ。
 
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