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3A-街道と魔物
3A-01 *魔虫の詩と村の病
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沼の畔に住み、水の中を彷徨う
緑の淀みに、我が身を晒し
空を見上げ、自由な夢を思う
湧きあがる魔を受けとめ、内に異が育つ
黒き体に疑問を抱かず、眠りにつく
陸に上がり、葉の裏に潜む
変質した体は細長く、手足は頼りなく靡く
水に浸り夢見た上界に、心躍らし羽ばたく
同類と親を交わし、子孫繁栄を願い集う
皆との違いを内に秘めつつ
手足を操り、肌色の地に降り立つ
地に管を突き立て、流るる水を汲み取ろう
至南樹に似た液は、渇望を満たし
満たされた心は、次代に引き継ぐ力となろう
シ者がうごめき、魔を呪われながら
他の意に沿い、更なる肌色の地を求める
力は絶え絶え、意なく動く
心の礎、魔にて増幅せしめる
シ者との別れ、淚する液も枯れゆく
体を蝕み、か弱く音楽を奏で白銀の夜空へ
重き身を動かし、生まれた地に舞い戻る
手足は朽ち果て、羽は不要となろう
子らの繁栄を切に願い、魂に従い系を繋ぐ
世代を超える徴の礎、地の留でさらに強く
思いを強く望を秘め、魔素に込めて往く
(ウオルクに残る詠み人知らずの叙情詩)
♢♢
時は巻き戻る。同年菊の月。王国内のある地域。
一匹の魔虫が夜空を飛ぶ。解放された空に向かって。長い間水の中で過ごした鬱憤を晴らすように。
魂の赴くまま、今日も得物を求めて夜空に飛び立つ。この先には、魔光が灯り、獲物が居るだろう。
いつも通りに隙間から入る。近くを見ると仲間もいることに気づいた。
音を立てないよう、影を縫うように進む。近くの肌色の地に降り立つ。幸いにもこれは動かない。隣との交信をしているようだ。羽音のような音が聞こえてきた。
「冒険者がラーナを取り過ぎていると?」
「ええ、最近増えすぎてるのも、影響があるかもしれないって」
「湿原くらいの規模なら影響が無さそうだが、この沼でやられるとたまったものではないな」
「例の発熱も、増えてきてから起こったかもしれないって、裏の爺さんが」
「冒険者はいいよな。比べて、我々の魔術は未熟だ。年中ポーションに頼るわけにもいかん」
「村長にも話をしておきました」
「採取の規制は今後は必要だろう」
音の動向に注意をしながら、管を刺し、水をくみ取る。十分な液を吸い取り、素早くその場を離れた。魂の任が完了した仲間も物陰で待機していた。
「まったく、領都ウオルクから、近いからって乱獲しやがって」
「早く、ハリーザの連中、居なくなってくれないかな」
「どうやら、湿原に居た男が採取の主導しているらしい」
「そういうわけにもいかん。奴らは金を落としてくれるからな。それにしてもかゆいな」
「村長にギルドを通して冒険者に制限をかけてもらおう。ああ、ここにもいたか、忌々しい」
「そうしましょう」
バタバタと音がして、生物たちが居なくなった。灯が消える。我々も故郷に戻ろう。
ここには用は無い。食事とはならないのだから。
我々は、次代につなぐ仕事をしなくては。
短い間だったが、友への別れを告げよう。機会が有ったら、また会おうではないか。
♢♢
この3日後、村の重鎮にも次々と高熱が出始め、村の機能が止まった。
幸いにも、季節が邪魔をしたのだろう。影響は一過性のものとなった。
流行り病について、領主の耳に入ったのは冬になってからだった。
王都まで届いたのは、さらに翌年の春になってからとなった。
緑の淀みに、我が身を晒し
空を見上げ、自由な夢を思う
湧きあがる魔を受けとめ、内に異が育つ
黒き体に疑問を抱かず、眠りにつく
陸に上がり、葉の裏に潜む
変質した体は細長く、手足は頼りなく靡く
水に浸り夢見た上界に、心躍らし羽ばたく
同類と親を交わし、子孫繁栄を願い集う
皆との違いを内に秘めつつ
手足を操り、肌色の地に降り立つ
地に管を突き立て、流るる水を汲み取ろう
至南樹に似た液は、渇望を満たし
満たされた心は、次代に引き継ぐ力となろう
シ者がうごめき、魔を呪われながら
他の意に沿い、更なる肌色の地を求める
力は絶え絶え、意なく動く
心の礎、魔にて増幅せしめる
シ者との別れ、淚する液も枯れゆく
体を蝕み、か弱く音楽を奏で白銀の夜空へ
重き身を動かし、生まれた地に舞い戻る
手足は朽ち果て、羽は不要となろう
子らの繁栄を切に願い、魂に従い系を繋ぐ
世代を超える徴の礎、地の留でさらに強く
思いを強く望を秘め、魔素に込めて往く
(ウオルクに残る詠み人知らずの叙情詩)
♢♢
時は巻き戻る。同年菊の月。王国内のある地域。
一匹の魔虫が夜空を飛ぶ。解放された空に向かって。長い間水の中で過ごした鬱憤を晴らすように。
魂の赴くまま、今日も得物を求めて夜空に飛び立つ。この先には、魔光が灯り、獲物が居るだろう。
いつも通りに隙間から入る。近くを見ると仲間もいることに気づいた。
音を立てないよう、影を縫うように進む。近くの肌色の地に降り立つ。幸いにもこれは動かない。隣との交信をしているようだ。羽音のような音が聞こえてきた。
「冒険者がラーナを取り過ぎていると?」
「ええ、最近増えすぎてるのも、影響があるかもしれないって」
「湿原くらいの規模なら影響が無さそうだが、この沼でやられるとたまったものではないな」
「例の発熱も、増えてきてから起こったかもしれないって、裏の爺さんが」
「冒険者はいいよな。比べて、我々の魔術は未熟だ。年中ポーションに頼るわけにもいかん」
「村長にも話をしておきました」
「採取の規制は今後は必要だろう」
音の動向に注意をしながら、管を刺し、水をくみ取る。十分な液を吸い取り、素早くその場を離れた。魂の任が完了した仲間も物陰で待機していた。
「まったく、領都ウオルクから、近いからって乱獲しやがって」
「早く、ハリーザの連中、居なくなってくれないかな」
「どうやら、湿原に居た男が採取の主導しているらしい」
「そういうわけにもいかん。奴らは金を落としてくれるからな。それにしてもかゆいな」
「村長にギルドを通して冒険者に制限をかけてもらおう。ああ、ここにもいたか、忌々しい」
「そうしましょう」
バタバタと音がして、生物たちが居なくなった。灯が消える。我々も故郷に戻ろう。
ここには用は無い。食事とはならないのだから。
我々は、次代につなぐ仕事をしなくては。
短い間だったが、友への別れを告げよう。機会が有ったら、また会おうではないか。
♢♢
この3日後、村の重鎮にも次々と高熱が出始め、村の機能が止まった。
幸いにも、季節が邪魔をしたのだろう。影響は一過性のものとなった。
流行り病について、領主の耳に入ったのは冬になってからだった。
王都まで届いたのは、さらに翌年の春になってからとなった。
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