巻き込まれた薬師の日常

白髭

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3A-街道と魔物

3A-13 王都の門を越えて

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 カンティアからの旅は快適そのものだった。舗装された街道を南下し、左右に点在する街を通過する。夜営はなくなり、宿屋での休息が続く。王都に近づくにつれ街道はさらに広がり、行き交う馬車の数も増えていった。

 馬車の中で王都の地図を広げると、クリスティーヌ様とパラケル師が解説をしてくれる。

「王都の城壁は円形に築かれているから分かりやすいわ。エーベルス王がお住まいの王城は西の端。門は八つあり、我々は北門から入ることになるの。初期の城壁は魔物から効率的に守るために造られ、拡張を重ねて今に至るのよ」

「ゴーフ城が西寄りにあるのは理由がある。設立当初は中央にあったが、三代目の時に西の小山へ移された。以後、西側に貴族の邸宅が集められ、街区を形成して警備を強化した。地図で黄色に示されている場所がそれだ。貴族街区に入るには検問が必要で、チャームを提示すればよい。小僧が通う学院は東の城壁寄りにあり、演習のため場外に出やすい位置にある」

 地図を眺めると、王城は西端、学院は東端。街路は中央広場から放射状に伸び、複雑に絡み合って迷路のようだ。

「迷ったら空を見上げろ。王城と学院の塔が目印になる」
 パラケル師の言葉に頷く。確かに高い建築物なら、どこからでも見える。

 さらに通信手段として「魔法配達の魔導具」を教わった。術札を応用し、手紙を鳥に変えて飛ばす仕組みだという。王都内ならランクEの魔石で届くらしい。パラケル師が作成した座標一覧まで渡してくれた。

「サルタンから託された手紙はベルナル商店王都店に届けるといい。場所はカンティア通りから商業地区に入った角だ」

 やがて城壁と王都の姿が見えてきた。検問所には貴族専用の通路があり、パール家の馬車は優先的に通された。チャームを鑑定台にかざすと白く発光し、通行が許可される。

 門を抜けると、街並みは一変した。石畳の大通り、整然と並ぶ商店、広い歩道。馬車はスムーズに進み、角には見慣れた看板――ベルナル商店王都店が掲げられていた。

「場所は覚えたな?」
「はい。分かりやすいです」

 今日は初めての王都入りということで、中央広場を経由して貴族街区へ向かうことになった。中央広場には魔導師、冒険者、商人の各ギルド本部が並び、行政機関も集中している。大理石造りの重厚な建物が立ち並び、王都の中心にふさわしい威容を誇っていた。

 やがて公爵通りを抜け、華美な彫刻の施された門に到着する。ここが貴族街区の正門だ。兵士にチャームを提示し、馬車は中へ。

 街区内は敷地が広く、人通りも少ない。要所には憲兵の派出所があり、厳重な警備が敷かれていた。庭園を横目に進み、二街区を越えたところで大きな邸宅が見えてきた。

 馬車が正面玄関に止まると、使用人たちが整列して出迎える。

「クリスティーヌ様、お疲れ様です」
「おばあ様、お久しぶりです」
「皆様、ようこそパール邸へ」

 エリス様、パラケル師も挨拶を交わし、いよいよ王都での生活が始まる。

「レッド君もお疲れ様。これからも我が子と共によろしく頼むわ」
「奥様、王都でもお世話になります。こちらこそよろしくお願いします」

 その時、マーカー様の視線が鋭く自分に注がれているのに気づいた。不機嫌そうに見える。これからの生活で肩身が狭くならなければよいのだが――。


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