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3B-学院と植物
3B-08 教授の挑発
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コーン、コーン、コーン――昼を告げる鐘の音が塔に響いた。ガチャリと討論室の扉が開き、秘書のカメリアさんが顔を覗かせる。
「教授! 時間です。昼食を召し上がって、午後の準備をお願いします」
「おお、カメリア君、毎度ありがとう」
教授は満足げに頷き、私たちに向き直った。
「よし、打ち合わせはここまでにしよう。今日は職員食堂でとるか。レッド君、リンネ君、行くぞ。カメリア君はどうする?」
「ご同伴いたします。教授を放っておくと、話に夢中になって戻ってこられませんから」
「そ、そうか……では昇降機を使って頂上へ行こう」
研究室の入口に設けられた昇降機へ向かう。生徒用が二基、職員用が二基。さらに奥には物資搬入用の昇降機もあるらしい。
「塔の上階を食堂にしているとは驚きました」
「眺めは最上だぞ。学院は王宮と同じく高台にある。景色は格別だ」
片開きの扉が音もなく開き、私たちは中へ。内部は照明だけが灯り、外の景色は見えない。教授が十階のボタンを押すと、静かに上昇が始まった。
「これも遺構の一つだ。古代の知恵は恐ろしい。レッド君、驚かぬな」
「移動階段で経験済みですから」
「レッド、体が重く感じるわ」
「加速しているんだ。揺れも少ない。すごい技術だよ」
やがて扉が開く。十階は壁一面にガラスがはめ込まれ、塔の内部とは思えぬほどの開放感。王都の街並みが一望できた。
「ここは魔導院専用の食堂だ。三学年以降が利用できる。普段は教員が主だが、時間を外せば学生もカフェとして使える。レポート書きに便利らしいぞ」
そこへフランコさんやヘンリー先生も現れ、自然と全員で食事をとることになった。
「今日は教授のおごりだ!」
「さすが教授、気前がいい!」
「レ、レッド君……そういうことだ。献立はAが魚、Bが肉。好きに選べ」
私は魚を選んだ。白身魚のフリットに野菜が添えられ、香ばしい香りが漂う。穏やかな会話と共に、和やかな昼食が進んでいった。
――だが、その空気を破る声があった。
「ゲオルク教授。こんなところでのんびりされていてよろしいのですか?」
現れたのは一人の壮年の男。教授はすぐに応じた。
「アルナル教授。教授会はお疲れだったな」
「ふん。皆で仲良く食事会か。のんきなものだ。我が治療学教室は忙しいのだぞ。新たな案件も入ったことだしな」
治療学教室――つまりアルナル教授。傲岸不遜な態度に、ようやく顔と名が一致した。彼の視線が自分とリンネに止まる。
「我が研究室を選ばなかった者は、卑賤な者まで同伴か」
「面接ではお世話になりました。興味を持った研究があったので、そちらを優先しました」
「ふん。我が治癒学は魔導の究極。価値が分からぬならそれまでだ。パラケルに師事しておきながら香草学とは。師匠も躾ができなかったか」
「自分が頑固なだけです。師匠は関係ありません。散々迷惑をかけた結果、ここを選びましたから。『身分相応に高め、成果を国に認めさせろ』と」
「せいぜい亜人と共に、使えぬ植物の研究でもするがいい。成果次第では廃室も視野に入れると総長に進言しておこう。無能な諸君。我が教室より優れた案を出せれば、評価してやろうではないか」
吐き捨てるように言い残し、アルナル教授は去っていった。
講師陣は怒りに震え、リンネも険しい顔をしている。だが、ゲオルク教授と助教は共に平然としていた。
「言いたいことを言わせておけばよい。彼も学者だ。意見があるのは当然。我々は自分の仕事を果たし、実績で反論すればよい」
教授の静かな言葉に、張り詰めた空気が少し和らいだ。
「教授! 時間です。昼食を召し上がって、午後の準備をお願いします」
「おお、カメリア君、毎度ありがとう」
教授は満足げに頷き、私たちに向き直った。
「よし、打ち合わせはここまでにしよう。今日は職員食堂でとるか。レッド君、リンネ君、行くぞ。カメリア君はどうする?」
「ご同伴いたします。教授を放っておくと、話に夢中になって戻ってこられませんから」
「そ、そうか……では昇降機を使って頂上へ行こう」
研究室の入口に設けられた昇降機へ向かう。生徒用が二基、職員用が二基。さらに奥には物資搬入用の昇降機もあるらしい。
「塔の上階を食堂にしているとは驚きました」
「眺めは最上だぞ。学院は王宮と同じく高台にある。景色は格別だ」
片開きの扉が音もなく開き、私たちは中へ。内部は照明だけが灯り、外の景色は見えない。教授が十階のボタンを押すと、静かに上昇が始まった。
「これも遺構の一つだ。古代の知恵は恐ろしい。レッド君、驚かぬな」
「移動階段で経験済みですから」
「レッド、体が重く感じるわ」
「加速しているんだ。揺れも少ない。すごい技術だよ」
やがて扉が開く。十階は壁一面にガラスがはめ込まれ、塔の内部とは思えぬほどの開放感。王都の街並みが一望できた。
「ここは魔導院専用の食堂だ。三学年以降が利用できる。普段は教員が主だが、時間を外せば学生もカフェとして使える。レポート書きに便利らしいぞ」
そこへフランコさんやヘンリー先生も現れ、自然と全員で食事をとることになった。
「今日は教授のおごりだ!」
「さすが教授、気前がいい!」
「レ、レッド君……そういうことだ。献立はAが魚、Bが肉。好きに選べ」
私は魚を選んだ。白身魚のフリットに野菜が添えられ、香ばしい香りが漂う。穏やかな会話と共に、和やかな昼食が進んでいった。
――だが、その空気を破る声があった。
「ゲオルク教授。こんなところでのんびりされていてよろしいのですか?」
現れたのは一人の壮年の男。教授はすぐに応じた。
「アルナル教授。教授会はお疲れだったな」
「ふん。皆で仲良く食事会か。のんきなものだ。我が治療学教室は忙しいのだぞ。新たな案件も入ったことだしな」
治療学教室――つまりアルナル教授。傲岸不遜な態度に、ようやく顔と名が一致した。彼の視線が自分とリンネに止まる。
「我が研究室を選ばなかった者は、卑賤な者まで同伴か」
「面接ではお世話になりました。興味を持った研究があったので、そちらを優先しました」
「ふん。我が治癒学は魔導の究極。価値が分からぬならそれまでだ。パラケルに師事しておきながら香草学とは。師匠も躾ができなかったか」
「自分が頑固なだけです。師匠は関係ありません。散々迷惑をかけた結果、ここを選びましたから。『身分相応に高め、成果を国に認めさせろ』と」
「せいぜい亜人と共に、使えぬ植物の研究でもするがいい。成果次第では廃室も視野に入れると総長に進言しておこう。無能な諸君。我が教室より優れた案を出せれば、評価してやろうではないか」
吐き捨てるように言い残し、アルナル教授は去っていった。
講師陣は怒りに震え、リンネも険しい顔をしている。だが、ゲオルク教授と助教は共に平然としていた。
「言いたいことを言わせておけばよい。彼も学者だ。意見があるのは当然。我々は自分の仕事を果たし、実績で反論すればよい」
教授の静かな言葉に、張り詰めた空気が少し和らいだ。
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