巻き込まれた薬師の日常

白髭

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3D-道筋と察知

3D-04 *静かな策謀

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 藤月八日、二度目の銀日。宰相ランベール様に呼び出され、王宮の応接室へと足を運びました。そこにはカンティア侯爵ホリック様、そして久方ぶりに顔を合わせる弟ジャン――ベイノイ男爵の姿。トーマスの代理として王都に滞在していた私は静かに席に着きます。顔ぶれを見れば、議題が北部領に関するものだとすぐに察せられました。

 宰相の言葉通り、話題は病魔。ウオルク領の惨状を前に、誰もが緊張を隠せない。ホリック様は「門を閉じる」と強硬な意見を述べたが、私はそれを最終手段と考えていた。物流を止めれば、王国全体が打撃を受ける。特にパール領にとっては致命的だ。

「病魔は吸血虫を介して広がるが、人から人へは直接伝染するものではございません」

 私はそう告げた。これは重要な事実だ。もし直接伝染するならば、閉門もやむなし。しかし媒介が虫に限られるなら、対策の方向性は変わる。

 ホリック様は「虫を根絶やしにすればよい」と短絡的に言ったが、私は即座に否定した。

「川を止めることはできません。なかでもカンティアの都を横断するオーデル川は、領の命脈そのものにございます」
 現実を直視しなければならない。

 議論が続く中、王が姿を現した。場の空気が一変する。王は静かに話を聞き、宰相に宝物庫の開放を命じられました。さらに、ウオルク領内への偵察、都市における汚水の管理徹底、発熱者の定期報告、検問の強化。次々と物事が決められていきます。王の言葉は重い。私も背筋を伸ばし、改めてこの場の責務を噛みしめた。


 会議が終わり、弟と情報を交わそうとした矢先、王から声をかけられた。
「クリスティーヌ。『賜物』について報告があるのではないか?」
 私は一瞬、息を呑んだ。やはり耳に入っていたか。シャーロット王女からの報告だろう。

「学院のことは学院にお尋ねいただくのが筋にございましょう。我らの任は、彼をこの国に根付かせること。理想は、貴族の庇護下に置き、国外に流出させぬことにございます。彼はすでに魔導師として認められ、学院に在籍しています。パラケルも師弟関係を解消し、対等な仲間として接しています。今の我々は後見人にすぎません。過度な干渉は、彼の居心地を悪くするでしょう」

 王は「自由にさせすぎではないか」と懸念を示したが、私は静かに答えた。

「制御できぬ実力者を生む方が恐ろしいのです。彼はいま、薬師としての職能を真剣に発揮しようとしています。それが本来の専門。研究に没頭させるのが最良の道かと」

 王は納得したように頷き、宰相も「魔導師界隈を刺激する」と憂慮を口にした。だが私は心の中で微笑んでいた。――刺激こそ必要なのだ。

 レッド君が学院の研究生として、宮廷魔導師会を凌ぐ案を出してくれることを私は期待している。王の前で彼らの面子を潰すことができれば、総長の発言力を削ぐ好機となる。宰相も前向きで、王女も彼を評価している。根回しは不要だ。流れはすでに整っている。

 パラケルには上市を急ぐよう伝えよう。治癒の後には回復が必要となる。病魔対策の後詰として、ハイポーションの開示は自然な流れだ。これで総長の権威を一枚剥がせる。彼が自ら一位の座を降りることはないだろうが、少なくともその力を削ぐことはできる。

 ――レッド君。あなたはいま研究に没頭しすぎて、目的を忘れているやもしれません。ですがそれでよろしいのです。君は学位と地位を得れば、自由に動く口実を手に入れられる。存分に働きなさい。私はその背を支える役。必要な時に、必要な道を整えて差し上げますから。その器の根底はパールにあるのでしょう。さらに根を下ろさせるのが私の役目。。それこそが、この国、ひいては私の領を守ることに直結いたします。策を巡らすことこそ、今の私の務めにございます。



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