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3D-道筋と察知
3D-06 治癒と予防の狭間
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藤月八日。休み明けの朝。
自分が魔導塔へ向かうと、研究室の前で男子二人が立ち話をしていた。イゴール君とナイジェル君だ。どうやら自分を待っていたらしい。
「二人とも、どうした? 休み明けの朝から」
「昨日ナイジェルに話をして、同意を貰いました!」
「レッド先生。俺は魔導具教室に入れなかったけど、イゴールと共に魔導具の制作ができると聞きました! 香草学との融合となる開発なんて……しびれます!」
「まだヘンリー先生には伝えてないよ。昨日は休みだったから」
「これから伝えに行きます! 先に相談するので、その後はレッド先生に話が行くと思います! 領主課程の生徒は午後から教室に来るでしょうから」
「わかった、わかった。君らの課題への話となるから、マリア先生、ゲオルク教授も含めて協議するだろう」
研究室に入ると、すでにマリア先生とヘンリー先生が出勤していた。入口の札を見ると、ゲオルク教授も在室しているようだ。この教室では、入室時に自らの札を返すのが決まりである。
「ヘンリー先生。課題で少し相談があります!」
向かいのブースから声が響き、どうやら話が始まったようだ。
「おう? どうした。イゴールもナイジェルも揃って」
「マリア先生の話の中での、課題の相談と難度の件で。マリア先生、ゲオルク教授に相談するのも、ヘンリー先生に失礼かと思いまして」
「うむ。話を聞こう」
自分はリンネと共に研究室の整備をしていたが、やがて三人がこちらにやって来た。どうやら話は終わったらしい。
「レッド先生、少しいいかい? ゲオルク教授の所に行く。一緒に来てくれ。マリア先生も呼ぶ。彼らの話だ」
「リンネ。すまないけど後をよろしく」
「了解。二人とも、キンコンの下処理を手伝って頂戴」
リンネに二人を預け、自分は教授室へと向かった。
「ヘンリー先生、どうした。レッド君も揃って」
「ええ。教授。昨日こういう件が有ったようで……」
ヘンリー先生は、自分たちが商談で偶然イゴール君の下宿先の商会に赴いたこと、商会の勉強のためイゴール君が同席していたこと、そしてその商談内容に彼が強い興味を抱いたことを順を追って説明した。さらにナイジェル君と共に、その意向を課題に反映させたいと願っていることも。
「具体的に事由を知りたいな。レッド君。君の商会の商談に関わることだ。この前の手続きで開示を願いたい」
「レッド君、俺からも頼む。どんな植物をどのように使うのか。君の話を聴きたい」
「そうね。判断ができないわ」
「ご配慮ありがとうございます。契約となれば、安心して開示ができます」
「レッド君。学外の活動の話まで済まないな」
契約を済ませ、自分は口を開いた。
「発端は、『マテリア・ハーバル』に収載されていたピレトラムの項を確認したことです」
##マテリアハーバル2巻39項####
ピレトラム。アティ領に植生を確認する。白い花弁と黄色い花柱が特徴。多年草。虫が多いアティ領内では、庭や畑の淵に植え、農作物への食害を防ぐのに利用される。開花時期は菖の月。領内には野生の白い花が広がる光景が見られる。
図(~略~)
######
「ピレトラムの自生地では畑の周囲に植えると聞きます。記載から推測するに、この植物は虫が嫌がるモノを放散しているのでしょう。キンコンに次ぐ、病魔への有効な手段となり得ると思われます。これは、商会の立場として動く事例と判断しました」
向こうではシロバナムシヨケギクと呼ばれていたもの。別名は除虫菊。含有成分を類推させるピレトラムという名と花の形は特徴的だ。やはり、自分のスキルと『マテリア・ハーバル』の相性は良い。
「なぜ、商会として動く必要があるのかね? 教室の題材としてもよかろう?」
「教室での課題、研究は、『ウオルク熱への、植物を用いた治癒手法の開発』となります。研究の主眼は治癒・治療。今回は忌避。虫に刺される前の予防に関しては、私の研究には含まれません」
題材に重複は無い。教室への貢献はキンコンで十分だ。学外で商会の人間として動くのは正当な権利であり、今回は予防の範囲に収まる。『マテリア・ハーバル』の記載は周知の事実。知り得た情報で、学院外で商売を行っても問題ないと自分は判断した。
「なるほど。確かに私が君に与えた研究内容は治癒のみ。予防に関しては別となろう。さらに君の創意なら学籍外としても問題は無い。あくまでこれは、商会を通す案件ということか?」
「植物を直接扱った製品の作成は、研究としての新規性に乏しいものと考えます」
「工夫が少なければ、学院で扱う意義は確かに薄い。商人の扱いにした方が良いだろう。イゴール君とはどう繋がるのだ?」
「冒険者ギルドへの採取依頼を出したところ、取り扱いは無いと。ギルド長のスプルース様からは、商人ギルドを紹介されました。商人ギルドからはアティ領の商会を斡旋され、斡旋先がイゴール君の実家のアレクノ商会だったのです」
「なるほど。イゴール君とは商会で会ったと。商会としての仕事はどこまでおこなっているのか?」
「現在のところ、テオフラス商会とアレクノ商会が係わります。テオフラス商会は、パラケル師と私が所属する商会ですね。二つの商会は共同事業として、供給と加工を行うよう動き始めました。おそらく近々に製品ができるでしょう」
「テオフラス商会! 様々な新規性のあるものを生み出している気鋭の商会だぞ! 君のところだったか!」
ヘンリー先生は商会名に驚いた。一方で教授とマリア先生は情報を知っているようで、表情は変わらない。
「具体的には、どのような製品を想定しているのだ?」
「お香です。虫が忌避する香を製造します」
「生徒の二人が興味を持った関係性のある課題とは何かしら?」
「次の段階では、他の商会の追従を避けるため改良を施す必要があるのです。学術的には、要素の抽出方法と効果の調査が良い題となり得ましょう。商会が製品化するお香は、当然煙が出ます。使用者からは煙が嫌がられることも想定されます。虫を退けるには仕方が有りませんが、その対策が要素の抽出となると思われます。抽出物を蒸散させれば煙が少なくなるのは容易に想像できます。一定の量を放出する魔導具――例えば加熱の魔導具――の開発が課題となりましょう。病魔への感染の無い、無煙で安全な空間を作る目的です。抽出方法、効果探索と魔導具の開発を、一連の課題として二人に与えてはどうでしょうか? 二人は非常に乗り気になっています」
「ピレトラムには虫が忌避する効果がある……。実際に俺も領に採取に行った。現地の使われ方も見た。食害を抑える目的で畑の周囲に植えていることも。解析の方に夢中で、実際の活用に落とし込む発想が全く無かった……」
「予防と治療の両輪。君から解決策がこうも出てくるとは」
「魔導具としての働きが想像できたわ。煙の無い忌避薬。売れそうね……少なくとも貴族へは」
「私の計画をどのように取り扱いますか? 教授。ウオルク熱に関わる題材とはいえ、研究する植物も、狙いも全く異なります。私も課題を与えられた身です。もう一つは流石に無理でしょう。すでに生徒の案件を含めると二つですから。無理ならば、商会にて研究と開発する案件とします」
「学生には、この課題は難しすぎるのでは? 極短期で成果が求められるわ。少なくとも職員が開発する案件だと思うけど」
「マリア先生。前提として、この研究は来季に向けての対策です。商会として着手し始めた、ピレトラムそのものを使ったお香の作成。これはそれほどに時間がかからない。主に開発するのは、王都にいるパラケル師となります。イゴール君の叔父のウーゴさんと今季に間に合うよう、商品化を進めます。忌避の薬として、今期の対策はこれでよいのです」
「なるほどね。よく考えているわ。今年はお香があればなんとかなるということね」
「はい。私の受け持つ二人も、来季へ向けての対策事項として課題を与えています。ピレトラムはイゴール君の叔父さんから提供されます。材料の確保に関しても心配はありません。二人の課題が頓挫、失敗しても誰も不幸にはなりません。勿論、二つの商会が後援します」
「イゴール君とナイジェル君の興味に即した提案。今の国内の情勢を考えるに、その課題は有りだな。よし。進めよう」
「レッド君。担当教官として、植物の方は問題無いと思う。抽出と評価だろう? 流石に、魔導具は専門外だぞ?」
「またまた――勿論二人への指導ですよ、ヘンリー先生。あなたの恋人のオリガさんが魔導具教室の教員に居るのは周知の事実ですよ? 魔導具の話を散々聞かされているでしょう? ヘンリー先生もかなりの知識があると思っています」
「えっ!? レッド君、なんで知っているの?」
「コカルスという同郷が、魔導具教室の院生に居ますからね。寄宿先も同じですから。彼の課題の悩みを聞いていた時に出てきたのですよ。ちなみに、コカルス君もテオフラス商会の一員。彼も魔導具側で後援、助言できると思います」
「くっ。コカルス君か。聞いたことがある名前だ。レッド君にそのような繋がりがあったとは」
「問題ないな。念のため、フリードには連絡を入れておこう。助言の申し入れ、もしくは共同研究として成り立つように枠組みを作っておく」
「ヘンリー先生。夫婦の共同作業みたいじゃない。仕事場でも組めるなんて羨ましい限りだわ」
「オリガに何を言われるか……」
「勿論、あなた一人ですべて見ても良いのよ。ここまで提示されているなら、まず失敗は無いでしょうし。パテンツの申請となれば、あなたの実績にもなるでしょう」
「実績は欲しいですね。素直にオリガの手を借ります。レッド君。ありがたくもらい受けます」
教授室から離れ、ヘンリー先生の区域に戻ると二人が寄ってきた。
「レッド先生、ヘンリー先生どうでした?」
「ああ、ばっちりだったよ。レッド先生が頑張ってくれた。君が興味を持ったのも解った。教授の許可が降りたぞ」
「レッド先生! ヘンリー先生! ありがとうございます!」
「イゴール君も、ナイジェル君も頑張って。この研究は大変だと思うけど。ヘンリー先生と一緒に会合を開こう。ヘンリー先生。あちらとの設定をお願いしてよいですか?」
「ああ、ここまで段取りを組まされては、自分もしっかりと見させてもらう。……オリガも控えていることだしな」
突然、他の教室の教員の名が出され、二人はきょとんとしていた。だが、すぐにその意味を知ることになるだろう。
自分が魔導塔へ向かうと、研究室の前で男子二人が立ち話をしていた。イゴール君とナイジェル君だ。どうやら自分を待っていたらしい。
「二人とも、どうした? 休み明けの朝から」
「昨日ナイジェルに話をして、同意を貰いました!」
「レッド先生。俺は魔導具教室に入れなかったけど、イゴールと共に魔導具の制作ができると聞きました! 香草学との融合となる開発なんて……しびれます!」
「まだヘンリー先生には伝えてないよ。昨日は休みだったから」
「これから伝えに行きます! 先に相談するので、その後はレッド先生に話が行くと思います! 領主課程の生徒は午後から教室に来るでしょうから」
「わかった、わかった。君らの課題への話となるから、マリア先生、ゲオルク教授も含めて協議するだろう」
研究室に入ると、すでにマリア先生とヘンリー先生が出勤していた。入口の札を見ると、ゲオルク教授も在室しているようだ。この教室では、入室時に自らの札を返すのが決まりである。
「ヘンリー先生。課題で少し相談があります!」
向かいのブースから声が響き、どうやら話が始まったようだ。
「おう? どうした。イゴールもナイジェルも揃って」
「マリア先生の話の中での、課題の相談と難度の件で。マリア先生、ゲオルク教授に相談するのも、ヘンリー先生に失礼かと思いまして」
「うむ。話を聞こう」
自分はリンネと共に研究室の整備をしていたが、やがて三人がこちらにやって来た。どうやら話は終わったらしい。
「レッド先生、少しいいかい? ゲオルク教授の所に行く。一緒に来てくれ。マリア先生も呼ぶ。彼らの話だ」
「リンネ。すまないけど後をよろしく」
「了解。二人とも、キンコンの下処理を手伝って頂戴」
リンネに二人を預け、自分は教授室へと向かった。
「ヘンリー先生、どうした。レッド君も揃って」
「ええ。教授。昨日こういう件が有ったようで……」
ヘンリー先生は、自分たちが商談で偶然イゴール君の下宿先の商会に赴いたこと、商会の勉強のためイゴール君が同席していたこと、そしてその商談内容に彼が強い興味を抱いたことを順を追って説明した。さらにナイジェル君と共に、その意向を課題に反映させたいと願っていることも。
「具体的に事由を知りたいな。レッド君。君の商会の商談に関わることだ。この前の手続きで開示を願いたい」
「レッド君、俺からも頼む。どんな植物をどのように使うのか。君の話を聴きたい」
「そうね。判断ができないわ」
「ご配慮ありがとうございます。契約となれば、安心して開示ができます」
「レッド君。学外の活動の話まで済まないな」
契約を済ませ、自分は口を開いた。
「発端は、『マテリア・ハーバル』に収載されていたピレトラムの項を確認したことです」
##マテリアハーバル2巻39項####
ピレトラム。アティ領に植生を確認する。白い花弁と黄色い花柱が特徴。多年草。虫が多いアティ領内では、庭や畑の淵に植え、農作物への食害を防ぐのに利用される。開花時期は菖の月。領内には野生の白い花が広がる光景が見られる。
図(~略~)
######
「ピレトラムの自生地では畑の周囲に植えると聞きます。記載から推測するに、この植物は虫が嫌がるモノを放散しているのでしょう。キンコンに次ぐ、病魔への有効な手段となり得ると思われます。これは、商会の立場として動く事例と判断しました」
向こうではシロバナムシヨケギクと呼ばれていたもの。別名は除虫菊。含有成分を類推させるピレトラムという名と花の形は特徴的だ。やはり、自分のスキルと『マテリア・ハーバル』の相性は良い。
「なぜ、商会として動く必要があるのかね? 教室の題材としてもよかろう?」
「教室での課題、研究は、『ウオルク熱への、植物を用いた治癒手法の開発』となります。研究の主眼は治癒・治療。今回は忌避。虫に刺される前の予防に関しては、私の研究には含まれません」
題材に重複は無い。教室への貢献はキンコンで十分だ。学外で商会の人間として動くのは正当な権利であり、今回は予防の範囲に収まる。『マテリア・ハーバル』の記載は周知の事実。知り得た情報で、学院外で商売を行っても問題ないと自分は判断した。
「なるほど。確かに私が君に与えた研究内容は治癒のみ。予防に関しては別となろう。さらに君の創意なら学籍外としても問題は無い。あくまでこれは、商会を通す案件ということか?」
「植物を直接扱った製品の作成は、研究としての新規性に乏しいものと考えます」
「工夫が少なければ、学院で扱う意義は確かに薄い。商人の扱いにした方が良いだろう。イゴール君とはどう繋がるのだ?」
「冒険者ギルドへの採取依頼を出したところ、取り扱いは無いと。ギルド長のスプルース様からは、商人ギルドを紹介されました。商人ギルドからはアティ領の商会を斡旋され、斡旋先がイゴール君の実家のアレクノ商会だったのです」
「なるほど。イゴール君とは商会で会ったと。商会としての仕事はどこまでおこなっているのか?」
「現在のところ、テオフラス商会とアレクノ商会が係わります。テオフラス商会は、パラケル師と私が所属する商会ですね。二つの商会は共同事業として、供給と加工を行うよう動き始めました。おそらく近々に製品ができるでしょう」
「テオフラス商会! 様々な新規性のあるものを生み出している気鋭の商会だぞ! 君のところだったか!」
ヘンリー先生は商会名に驚いた。一方で教授とマリア先生は情報を知っているようで、表情は変わらない。
「具体的には、どのような製品を想定しているのだ?」
「お香です。虫が忌避する香を製造します」
「生徒の二人が興味を持った関係性のある課題とは何かしら?」
「次の段階では、他の商会の追従を避けるため改良を施す必要があるのです。学術的には、要素の抽出方法と効果の調査が良い題となり得ましょう。商会が製品化するお香は、当然煙が出ます。使用者からは煙が嫌がられることも想定されます。虫を退けるには仕方が有りませんが、その対策が要素の抽出となると思われます。抽出物を蒸散させれば煙が少なくなるのは容易に想像できます。一定の量を放出する魔導具――例えば加熱の魔導具――の開発が課題となりましょう。病魔への感染の無い、無煙で安全な空間を作る目的です。抽出方法、効果探索と魔導具の開発を、一連の課題として二人に与えてはどうでしょうか? 二人は非常に乗り気になっています」
「ピレトラムには虫が忌避する効果がある……。実際に俺も領に採取に行った。現地の使われ方も見た。食害を抑える目的で畑の周囲に植えていることも。解析の方に夢中で、実際の活用に落とし込む発想が全く無かった……」
「予防と治療の両輪。君から解決策がこうも出てくるとは」
「魔導具としての働きが想像できたわ。煙の無い忌避薬。売れそうね……少なくとも貴族へは」
「私の計画をどのように取り扱いますか? 教授。ウオルク熱に関わる題材とはいえ、研究する植物も、狙いも全く異なります。私も課題を与えられた身です。もう一つは流石に無理でしょう。すでに生徒の案件を含めると二つですから。無理ならば、商会にて研究と開発する案件とします」
「学生には、この課題は難しすぎるのでは? 極短期で成果が求められるわ。少なくとも職員が開発する案件だと思うけど」
「マリア先生。前提として、この研究は来季に向けての対策です。商会として着手し始めた、ピレトラムそのものを使ったお香の作成。これはそれほどに時間がかからない。主に開発するのは、王都にいるパラケル師となります。イゴール君の叔父のウーゴさんと今季に間に合うよう、商品化を進めます。忌避の薬として、今期の対策はこれでよいのです」
「なるほどね。よく考えているわ。今年はお香があればなんとかなるということね」
「はい。私の受け持つ二人も、来季へ向けての対策事項として課題を与えています。ピレトラムはイゴール君の叔父さんから提供されます。材料の確保に関しても心配はありません。二人の課題が頓挫、失敗しても誰も不幸にはなりません。勿論、二つの商会が後援します」
「イゴール君とナイジェル君の興味に即した提案。今の国内の情勢を考えるに、その課題は有りだな。よし。進めよう」
「レッド君。担当教官として、植物の方は問題無いと思う。抽出と評価だろう? 流石に、魔導具は専門外だぞ?」
「またまた――勿論二人への指導ですよ、ヘンリー先生。あなたの恋人のオリガさんが魔導具教室の教員に居るのは周知の事実ですよ? 魔導具の話を散々聞かされているでしょう? ヘンリー先生もかなりの知識があると思っています」
「えっ!? レッド君、なんで知っているの?」
「コカルスという同郷が、魔導具教室の院生に居ますからね。寄宿先も同じですから。彼の課題の悩みを聞いていた時に出てきたのですよ。ちなみに、コカルス君もテオフラス商会の一員。彼も魔導具側で後援、助言できると思います」
「くっ。コカルス君か。聞いたことがある名前だ。レッド君にそのような繋がりがあったとは」
「問題ないな。念のため、フリードには連絡を入れておこう。助言の申し入れ、もしくは共同研究として成り立つように枠組みを作っておく」
「ヘンリー先生。夫婦の共同作業みたいじゃない。仕事場でも組めるなんて羨ましい限りだわ」
「オリガに何を言われるか……」
「勿論、あなた一人ですべて見ても良いのよ。ここまで提示されているなら、まず失敗は無いでしょうし。パテンツの申請となれば、あなたの実績にもなるでしょう」
「実績は欲しいですね。素直にオリガの手を借ります。レッド君。ありがたくもらい受けます」
教授室から離れ、ヘンリー先生の区域に戻ると二人が寄ってきた。
「レッド先生、ヘンリー先生どうでした?」
「ああ、ばっちりだったよ。レッド先生が頑張ってくれた。君が興味を持ったのも解った。教授の許可が降りたぞ」
「レッド先生! ヘンリー先生! ありがとうございます!」
「イゴール君も、ナイジェル君も頑張って。この研究は大変だと思うけど。ヘンリー先生と一緒に会合を開こう。ヘンリー先生。あちらとの設定をお願いしてよいですか?」
「ああ、ここまで段取りを組まされては、自分もしっかりと見させてもらう。……オリガも控えていることだしな」
突然、他の教室の教員の名が出され、二人はきょとんとしていた。だが、すぐにその意味を知ることになるだろう。
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