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3D-道筋と察知
3D-08 令嬢達の研鑽
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二人が課題に集中している間に、自分は現在係わっている研究課題を整理した。
ウオルク熱に対する植物を用いた治癒手法の開発。これは自分自身の課題であり、当面の目標はキンコンからのクィニン抽出となる。
苦味を有する香草と要素における服用法の開発。これはユリアーネさんとシャーロットさんの課題で、二つ程度の候補に絞り、開発を誘導したい。
ピレトラムからの要素抽出と魔導具化。これは研究室のイゴール君とナイジェル君に任せた。
ピレトラムの商品化は、パラケル師とアレクノ商会のウーゴさんが主となり進めている。
冷乾魔導具の稼働調整。直接は関わらないが、コカルス君の進捗も気になるところだ。
#####
――進捗把握すべきもの――
一.ウオルク熱に対する植物を用いた治癒手法の開発(主)
二.苦味を有する香草と要素における服用法の開発(副)
三.ピレトラム香の商品化(助)
四.ピレトラムの効果探査と忌避要素を放出する魔導具の開発(助)
五.冷乾魔導具の稼働調整(助)
######
さて。ずっと二人に課題をやらせるわけにもいかない。午後いっぱい考え続ければ飽きてしまう。そろそろ体を動かしてもらうか。
「今日の課題はここまでにしよう。少しずつ進めていけばいい。後半は自分の研究課題を手伝ってもらう。……前回の続きだ。ポーションの抽出の成果を見せてもらおうか」
今の魔術操作と彼女らの錬金術への考えでは、まだ役に立たない。指摘を受けた後に、どこまで改良を加えているかで判断したい。
「先生、あれから二人でレッド先生の実演を再現してみました。分からなかったところは教室のみんなのメモを合わせて考えました。共通授業の時間に香草学教室だけ集まっていたから、目立っちゃって。マーカーもラッセルも興味津々でした」
「要点を思い出して、皆で共有してくれると助かる。特に秘匿しているわけでもないからね」
ポーションの改善だけでも、学院生同士で教え合ってくれるのはありがたい。少しの改善でもよい。自己研鑽は任意なのだ。少しのうねりが大きな流れを生む。貴族の子から貴族社会へ。それをパラケル師達は狙っている。
「レッド先生。これから作成させていただきます。見てください」
シャーロットさんは土魔法でポーション瓶を作り、水魔法で魔力を通して不純物を除去する。アルテミ草を乾燥させ、手袋をはめて茎を外し、風魔法で粉砕。水に浸し、そのまま沸騰させて抽出。土魔法と水魔法で固液分離し、瓶に注ぐ。流れるような操作だった。前に比べると随分と改善されている。
「最後に鑑定っと……一級ね。あれ? おかしいわ。なぜかしら?」
「シャーロット。抽出のところね。今までの作成との違いを皆で話し合ったでしょう? 水から煮出したら等級が下がるわ」
「……失敗したわね」
「次は私の番」
ユリアーネも同様に操作を行う。自分の実演をほぼ模倣し、再現していく。素晴らしい手腕だった。
「最後に鑑定して……やったわ! 特級よ」
「……先生、もう一回やって良いかしら?」
ユリアーネの指摘と再現を見て、悔しそうにするシャーロットさん。もちろん許可する。
「いいですよ。もう一度挑戦してみましょう」
再度行ったシャーロットさんは、見事に特級品の作成に成功した。ようやく自分の中での出発点に立ったのだ。二人の成長を感じる。
「二人とも、よく頑張ったね」
「レッド先生のおかげで、魔力回路も滑らかに魔力が流れるの。阻まれるものが無い感じ。何といえばいいのかしら」
「おそらく“抵抗”という言葉が合うと思う。授業で習ったと思うが、自分達の体には無数の血管がある。体内の魔力器官に貯められた魔素は、血管を通じて全身に行き渡る。それを魔力という出力で外部に発現させるのが魔法と自分は考える。これからも魔力循環は日課にしなさい。怠るとすぐに滞るだろう」
二人はすでに宮廷魔導師や家庭教師、親族が施術を行った後のようだった。強制循環の施術は、滞っていた血管の魔素回路を開放させる。どこまでの血管を開放するかは門外不出の技術だろう。彼女たちは、その後の魔力循環を怠ったのが問題だった。毎日刺激させないと、せっかくの活性が失われてしまうのだ。
「「はい!」」
「よし。それでは始めよう。リンネ、ドラフトチャンバを出してくれ」
「レッド先生、了解したわ」
リンネは慣れた魔術操作でドラフトチャンバを展開する。ムカージ先生の教室訪問が刺激となり、リンネは習得に意欲を燃やした。教員をはじめ、研究生でも全員持っていたのだ。彼女もまた成長している。パラケル師に願い、教授を受け、自分に無い錬金スキルを学んでいたのだ。展開された空間は十分で、二人程度なら並列して操作できる。ムカージ先生の研究生と比べても遜色ない立派なスキル操作だった。
「え!? リンネさんもドラフトチャンバ持ちなの?」
「パラケル師に習い、試したらできたの。レッド先生とはスキル系統が異なるけど、私のは錬金スキル。レッド先生は製薬のスキル。先生は本当にすごい。追いついたと思ったのに、また進化していた……」
「それほどでもないさ。施用者が暴露しないようになったくらいだ。今の素材では必要ないけどね」
「もはやドラフトチャンバでもないでしょう!? 最初見た時は驚いたわ。アイソレータだったかしら?」
「派生させただけだよ。素材を隔離したい時に使うためだ」
「是非、ヴィトリオールの作成の時はお願いします。私のスキルでは手に臭いが残るから」
手の匂いを嗅ぎながら、こちらにサルファを渡してくる。
「ユリアーネ。錬金スキルはさらに先があるみたいね」
「私達も、第一の目標はドラフトチャンバの習得にしましょう。あるのと無いのとでは効率が違うわ。個別の空間が確保できるのは大きいわ」
ある程度話が済んだところで、再開だ。
「それでは実際に、キンコンからの要素――クィニンの抽出試験に入る。リンネ、用意を頼む。二人はまず見学だ。後ろでしっかり見て、メモを取っておいてくれ。見学後には実際に作業してもらうから、油断せずに見ておくように」
ウオルク熱に対する植物を用いた治癒手法の開発。これは自分自身の課題であり、当面の目標はキンコンからのクィニン抽出となる。
苦味を有する香草と要素における服用法の開発。これはユリアーネさんとシャーロットさんの課題で、二つ程度の候補に絞り、開発を誘導したい。
ピレトラムからの要素抽出と魔導具化。これは研究室のイゴール君とナイジェル君に任せた。
ピレトラムの商品化は、パラケル師とアレクノ商会のウーゴさんが主となり進めている。
冷乾魔導具の稼働調整。直接は関わらないが、コカルス君の進捗も気になるところだ。
#####
――進捗把握すべきもの――
一.ウオルク熱に対する植物を用いた治癒手法の開発(主)
二.苦味を有する香草と要素における服用法の開発(副)
三.ピレトラム香の商品化(助)
四.ピレトラムの効果探査と忌避要素を放出する魔導具の開発(助)
五.冷乾魔導具の稼働調整(助)
######
さて。ずっと二人に課題をやらせるわけにもいかない。午後いっぱい考え続ければ飽きてしまう。そろそろ体を動かしてもらうか。
「今日の課題はここまでにしよう。少しずつ進めていけばいい。後半は自分の研究課題を手伝ってもらう。……前回の続きだ。ポーションの抽出の成果を見せてもらおうか」
今の魔術操作と彼女らの錬金術への考えでは、まだ役に立たない。指摘を受けた後に、どこまで改良を加えているかで判断したい。
「先生、あれから二人でレッド先生の実演を再現してみました。分からなかったところは教室のみんなのメモを合わせて考えました。共通授業の時間に香草学教室だけ集まっていたから、目立っちゃって。マーカーもラッセルも興味津々でした」
「要点を思い出して、皆で共有してくれると助かる。特に秘匿しているわけでもないからね」
ポーションの改善だけでも、学院生同士で教え合ってくれるのはありがたい。少しの改善でもよい。自己研鑽は任意なのだ。少しのうねりが大きな流れを生む。貴族の子から貴族社会へ。それをパラケル師達は狙っている。
「レッド先生。これから作成させていただきます。見てください」
シャーロットさんは土魔法でポーション瓶を作り、水魔法で魔力を通して不純物を除去する。アルテミ草を乾燥させ、手袋をはめて茎を外し、風魔法で粉砕。水に浸し、そのまま沸騰させて抽出。土魔法と水魔法で固液分離し、瓶に注ぐ。流れるような操作だった。前に比べると随分と改善されている。
「最後に鑑定っと……一級ね。あれ? おかしいわ。なぜかしら?」
「シャーロット。抽出のところね。今までの作成との違いを皆で話し合ったでしょう? 水から煮出したら等級が下がるわ」
「……失敗したわね」
「次は私の番」
ユリアーネも同様に操作を行う。自分の実演をほぼ模倣し、再現していく。素晴らしい手腕だった。
「最後に鑑定して……やったわ! 特級よ」
「……先生、もう一回やって良いかしら?」
ユリアーネの指摘と再現を見て、悔しそうにするシャーロットさん。もちろん許可する。
「いいですよ。もう一度挑戦してみましょう」
再度行ったシャーロットさんは、見事に特級品の作成に成功した。ようやく自分の中での出発点に立ったのだ。二人の成長を感じる。
「二人とも、よく頑張ったね」
「レッド先生のおかげで、魔力回路も滑らかに魔力が流れるの。阻まれるものが無い感じ。何といえばいいのかしら」
「おそらく“抵抗”という言葉が合うと思う。授業で習ったと思うが、自分達の体には無数の血管がある。体内の魔力器官に貯められた魔素は、血管を通じて全身に行き渡る。それを魔力という出力で外部に発現させるのが魔法と自分は考える。これからも魔力循環は日課にしなさい。怠るとすぐに滞るだろう」
二人はすでに宮廷魔導師や家庭教師、親族が施術を行った後のようだった。強制循環の施術は、滞っていた血管の魔素回路を開放させる。どこまでの血管を開放するかは門外不出の技術だろう。彼女たちは、その後の魔力循環を怠ったのが問題だった。毎日刺激させないと、せっかくの活性が失われてしまうのだ。
「「はい!」」
「よし。それでは始めよう。リンネ、ドラフトチャンバを出してくれ」
「レッド先生、了解したわ」
リンネは慣れた魔術操作でドラフトチャンバを展開する。ムカージ先生の教室訪問が刺激となり、リンネは習得に意欲を燃やした。教員をはじめ、研究生でも全員持っていたのだ。彼女もまた成長している。パラケル師に願い、教授を受け、自分に無い錬金スキルを学んでいたのだ。展開された空間は十分で、二人程度なら並列して操作できる。ムカージ先生の研究生と比べても遜色ない立派なスキル操作だった。
「え!? リンネさんもドラフトチャンバ持ちなの?」
「パラケル師に習い、試したらできたの。レッド先生とはスキル系統が異なるけど、私のは錬金スキル。レッド先生は製薬のスキル。先生は本当にすごい。追いついたと思ったのに、また進化していた……」
「それほどでもないさ。施用者が暴露しないようになったくらいだ。今の素材では必要ないけどね」
「もはやドラフトチャンバでもないでしょう!? 最初見た時は驚いたわ。アイソレータだったかしら?」
「派生させただけだよ。素材を隔離したい時に使うためだ」
「是非、ヴィトリオールの作成の時はお願いします。私のスキルでは手に臭いが残るから」
手の匂いを嗅ぎながら、こちらにサルファを渡してくる。
「ユリアーネ。錬金スキルはさらに先があるみたいね」
「私達も、第一の目標はドラフトチャンバの習得にしましょう。あるのと無いのとでは効率が違うわ。個別の空間が確保できるのは大きいわ」
ある程度話が済んだところで、再開だ。
「それでは実際に、キンコンからの要素――クィニンの抽出試験に入る。リンネ、用意を頼む。二人はまず見学だ。後ろでしっかり見て、メモを取っておいてくれ。見学後には実際に作業してもらうから、油断せずに見ておくように」
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