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1B-修練と改良
1B-12 村のかたち
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汗ばむ陽気が続き、季節は春から初夏へと移ろい始めていた。
レッド少年が降下したのも春だった。
この世界にも、春夏秋冬があるらしい。
穏やかな気候の中、魔力枯渇と魔力制御の訓練は、日々コツコツと続けていた。
火魔法の訓練は、パラケル爺さんの言葉から始まった。
「何もない場所から発火できるかどうかが分岐点だ。まずは種火からの延焼、次に火打石からの燃焼。最終的には、無からの発火と制御の強化だ」
風魔法で圧縮した空気を摩擦させるイメージでも、発火は可能だった。
だが、火魔法は「熱を生み出し、制御する魔法」。
風魔法の支援がなくても、原子間の振動を制御することで熱を生み出せる。
そう理解してからは、火魔法の習得も進んだ。
土魔法は、最初が難関だった。
土の構成要素が多すぎるのだ。
ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム――
それらが酸素と結びついた化合物の集合体。
さらに、窒素やリン酸、有機物、水分、炭素も含まれる。
魔力を浸透させた後、それらを一つの“集団”として認識しなければ、頭も魔力も持たない。
構成要素をざっくりと分類し、それらの集団を「ホーミィー土」と名づけて割り切る。
細かく分ければ魔力の流れは良くなるが、制御は膨大になる。
見極めが肝要だ。
今日は魔導具店の休み。
村全体が週に一度の休息日を迎えている。
自宅の庭で、土魔法の反復練習を始めた。
周囲の土に魔力を浸透させ、まずは皿の作成。
水と風魔法で水分を与え、圧力をかけて捏ねる。
形を整えた後、風魔法で乾燥。
火魔法で焼成し、風魔法で冷却。
すべての属性魔法を使える今、練習には最適だ。
いくつか素焼きの皿や壺を作っていると、見物人の気配に気づいた。
「あら、レッド。いいものができてるじゃない」
洗濯物を取り込みに来た母ジーナと妹マリンだった。
「そのまま食事に使えそうなくらい綺麗ね」
ジーナ母さんは城郭都市出身。
かつて商人ギルドの受付を務めていたが、父サルタンとの結婚を機に退職。
今はベルナル商店の切り盛りを担っている。
妹マリンも、初等教育を受けながら店の手伝いをしている。
両親の指導で、物の良し悪しを見極める目を養っている。
村では、食器は木工品か金属製が主流。
陶器は手間がかかる分、高価な品だ。
絵付けされたものは王都から流通するが、すぐに売り切れる。
セット品の一部が流れてくることもあるが、それでも価値は高い。
「ねえ、レッド。どのくらい作れそう?釉薬と本焼きをすれば、商品として十分に成立するわ」
母の目は完全に商人モード。
少し圧を感じる。
「魔力次第ですが、専従でやれば日に百枚くらいでしょうか。粘土質の石があれば、もっと品質も上がると思います」
「陶石ね。たしか、あそこで閲覧できたわよね…自由に試作品が作れるように手配するわ。釉薬も探すから、このまま練習をお願いね」
母は洗濯物をパパッと片付け、家の中へ。
おそらく、父と話すつもりだろう。
取り残された妹は、庭の土を使って遊び始めた。
たまには付き合うのもいいか――
久しぶりに、違った土いじりを楽しむことにした。
妹はコップに土を入れ、逆さにして地面に家の形を作る。
「これはうちね。形が違うから…こうして削っちゃおう」
木の棒で少しずつ削り、家の形に整えていく。
「で、こっちがローズちゃん家。あっちがフローラちゃん家」
近所の家も作り始める。
妹は、ホーミィー村の配置を再現しているようだ。
「じゃあ、自分はパラケル爺さんの家を作ろう」
土魔法で土を集め、水分を加え、店と住居、納屋を簡単に整形して置いた。
「あ~! 魔法はずるいよ。私の出番がなくなっちゃう」
「じゃあ、川とか森とか畑とか、印をつけてよ」
「それいいかも。ここが村長の家で、ここが教会で…」
妹はコップで土を置き、整形していく。
自分も手伝いながら、村のパーツが徐々に完成していく。
「よし、これで完成だね。でも雨が降ったら流れちゃうよ? 兄ぃ、どうする?」
「それなら、焼いてしまおう」
土魔法で建物の中をくりぬき、地面を固め、圧力をかけて圧縮。
水分を抜き、火魔法で焼成。
風魔法で粗熱を取って、完成。
「ふう、これで完成だね。ホーミィー村の立体地図」
「兄ぃ、すごいね…本当に魔力操作できてる…」
失敬な。これでも、パラケル爺さんにしっかり習っているのだよ。
翌朝。
庭で洗濯物を干そうとした母が、立体地図に気づき、
「サルタン!ちょっと来て!」
と父を呼ぶ声が響き渡った。
さて、どうなることやら――。
レッド少年が降下したのも春だった。
この世界にも、春夏秋冬があるらしい。
穏やかな気候の中、魔力枯渇と魔力制御の訓練は、日々コツコツと続けていた。
火魔法の訓練は、パラケル爺さんの言葉から始まった。
「何もない場所から発火できるかどうかが分岐点だ。まずは種火からの延焼、次に火打石からの燃焼。最終的には、無からの発火と制御の強化だ」
風魔法で圧縮した空気を摩擦させるイメージでも、発火は可能だった。
だが、火魔法は「熱を生み出し、制御する魔法」。
風魔法の支援がなくても、原子間の振動を制御することで熱を生み出せる。
そう理解してからは、火魔法の習得も進んだ。
土魔法は、最初が難関だった。
土の構成要素が多すぎるのだ。
ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム――
それらが酸素と結びついた化合物の集合体。
さらに、窒素やリン酸、有機物、水分、炭素も含まれる。
魔力を浸透させた後、それらを一つの“集団”として認識しなければ、頭も魔力も持たない。
構成要素をざっくりと分類し、それらの集団を「ホーミィー土」と名づけて割り切る。
細かく分ければ魔力の流れは良くなるが、制御は膨大になる。
見極めが肝要だ。
今日は魔導具店の休み。
村全体が週に一度の休息日を迎えている。
自宅の庭で、土魔法の反復練習を始めた。
周囲の土に魔力を浸透させ、まずは皿の作成。
水と風魔法で水分を与え、圧力をかけて捏ねる。
形を整えた後、風魔法で乾燥。
火魔法で焼成し、風魔法で冷却。
すべての属性魔法を使える今、練習には最適だ。
いくつか素焼きの皿や壺を作っていると、見物人の気配に気づいた。
「あら、レッド。いいものができてるじゃない」
洗濯物を取り込みに来た母ジーナと妹マリンだった。
「そのまま食事に使えそうなくらい綺麗ね」
ジーナ母さんは城郭都市出身。
かつて商人ギルドの受付を務めていたが、父サルタンとの結婚を機に退職。
今はベルナル商店の切り盛りを担っている。
妹マリンも、初等教育を受けながら店の手伝いをしている。
両親の指導で、物の良し悪しを見極める目を養っている。
村では、食器は木工品か金属製が主流。
陶器は手間がかかる分、高価な品だ。
絵付けされたものは王都から流通するが、すぐに売り切れる。
セット品の一部が流れてくることもあるが、それでも価値は高い。
「ねえ、レッド。どのくらい作れそう?釉薬と本焼きをすれば、商品として十分に成立するわ」
母の目は完全に商人モード。
少し圧を感じる。
「魔力次第ですが、専従でやれば日に百枚くらいでしょうか。粘土質の石があれば、もっと品質も上がると思います」
「陶石ね。たしか、あそこで閲覧できたわよね…自由に試作品が作れるように手配するわ。釉薬も探すから、このまま練習をお願いね」
母は洗濯物をパパッと片付け、家の中へ。
おそらく、父と話すつもりだろう。
取り残された妹は、庭の土を使って遊び始めた。
たまには付き合うのもいいか――
久しぶりに、違った土いじりを楽しむことにした。
妹はコップに土を入れ、逆さにして地面に家の形を作る。
「これはうちね。形が違うから…こうして削っちゃおう」
木の棒で少しずつ削り、家の形に整えていく。
「で、こっちがローズちゃん家。あっちがフローラちゃん家」
近所の家も作り始める。
妹は、ホーミィー村の配置を再現しているようだ。
「じゃあ、自分はパラケル爺さんの家を作ろう」
土魔法で土を集め、水分を加え、店と住居、納屋を簡単に整形して置いた。
「あ~! 魔法はずるいよ。私の出番がなくなっちゃう」
「じゃあ、川とか森とか畑とか、印をつけてよ」
「それいいかも。ここが村長の家で、ここが教会で…」
妹はコップで土を置き、整形していく。
自分も手伝いながら、村のパーツが徐々に完成していく。
「よし、これで完成だね。でも雨が降ったら流れちゃうよ? 兄ぃ、どうする?」
「それなら、焼いてしまおう」
土魔法で建物の中をくりぬき、地面を固め、圧力をかけて圧縮。
水分を抜き、火魔法で焼成。
風魔法で粗熱を取って、完成。
「ふう、これで完成だね。ホーミィー村の立体地図」
「兄ぃ、すごいね…本当に魔力操作できてる…」
失敬な。これでも、パラケル爺さんにしっかり習っているのだよ。
翌朝。
庭で洗濯物を干そうとした母が、立体地図に気づき、
「サルタン!ちょっと来て!」
と父を呼ぶ声が響き渡った。
さて、どうなることやら――。
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