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1C-試行と結果
1C-09 習得と分岐
しおりを挟む父は陶石の確保のため近隣へ旅立ち、母は村の運営会議へ。
今日も自分はベルナル商店の店番だ。
パラケル爺さんの魔導具店には「本日休業。御用の方はベルナル商店へ」と張り紙を出しておいた。
どうせ客など来ない。誘導させておけば問題はない。
パラケル爺さんからの課題は、「ポーションの劣化を防ぐための改良」。
その一環として、今日は光魔法の習得に取り組むことにした。
教本によれば、光魔法は“自然の光を見ながら、指先から放出することを心像とせよ”とある。
ランプや日差しの明るさを参考にせよ、とも。
ポーションの劣化要因として、仮説を立てたのは「光」。
自然光による劣化を再現するには、太陽光でもよい。
だが、天候に左右されるのは試験条件として不安定すぎる。
一定の強度で、安定した光源が必要だ。
ならば、自ら光を生み出すしかない。
光魔法を習得し、人工的に劣化を促進する。
これが、保存性の検証の第一歩となる。
光の性質を思い出す。
ランプ、太陽光、白熱電灯、LEDライト――
向こうの世界では、光は日常に溢れていた。
光は波であり、粒子でもある。
電磁波としての波長の違いが、紫外線や赤外線、可視光を生む。
光子としての性質も持ち、物理学では「波と粒子の二重性」として知られていた。
光魔法は、原子の振動によって光を生み出す魔法。
火魔法が原子間の振動なら、光魔法はその延長線上にあるのかもしれない。
本を閉じ、魔力を練り上げる。
ペンライトのような青色の単波長光をイメージ。
指先から、一直線に青い光が放たれ、店内の商品を照らす。
まるでLEDライトのようだ。
次に、太陽光を模倣した白色光。
十万ルクス相当の明るさをイメージし、出力。
店内の一区画が眩しく輝く。
サングラスが欲しくなるほどだ。
客がいなくてよかった。
さらに、紫外線と赤外線も試す。
紫外線は目に見えず、効果は不明。
赤外線は膝に向けると、じんわりと温かさを感じた。
成功しているようだ。
白色光は、太陽光の十倍の明るさまで出力できた。
だが、試験に使うには一時間の照射が必要。
魔力が持たない。
木箱で範囲を限定し、出力量を抑えるのが良さそうだ。
明日から仕切り直そう。
箱は店の商品棚にある。家族価格で失敬すればいい。
魔導具化も視野に入れておきたい。
闇魔法を習得した後も、応用できるはずだ。
ふと、光の一種であるマイクロ波を思い出す。
レーダーに使われる波長。
小刻みにパルスを送って、反射を検知する。
目を閉じ、指先から一点に向けて放出。
店内の商品に当たり、反射が返ってくる。距離五メートル。
縦方向に数回、仰角90度で九箇所。
水平90度を10度刻みで9×9。
さらに270度分を加えて、9×9×4=324回の同時出力。
頭の中で、反射波と距離情報を重ね合わせていく。
ドーム型に出力し、さらに倍の648。
これが今の出力限界だ。
理想は一秒ごとの連続出力。
だが、情報量が多すぎて頭がパンクする。
処理に慣れるための訓練が必要だ。
外出までには、ぜひとも習得したい。
護身用に常時発動できれば理想的だ。
余計な発動で、今日の魔力は残りわずか。
だが、「レーダー魔法」と名付けたこの魔法は、
今後、自分を守るために必要になるだろう。
ふと、店番中だったことを思い出す。
両親に言われていた品出しを、すっかり忘れていた。
省エネLEDライトのイメージで光魔法を使いながら、慌てて商品の補充を始めた。
魔術は、ただの力ではない。
生活を支え、商売を助け、命を守る技術だ。
今日の学びは、確かにその一歩だった。
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