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1D-窯業と産業
1D-01 インクと課題
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会議は無事に終了した。
代行とはいえ、貴族との繋がりができたのは大きい。自分も大事業の一端を担う役割を与えられた。外出先から戻れば、進捗を確認されることになるだろう。だからこそ、パラケル爺さんから出された課題を一つ一つ整理しておく必要があった。
第一優先は備蓄用の大甕の作成。
第二優先は領主から依頼された備蓄ポーションの製造。
第三は磁器に合う釉薬の開発。
釉薬についてはジュアンさんの準備もあるだろうから、いったん保留にする。まずは大甕と瓶の作成を進める。父が用意してくれた素材を使えば、瓶の製造は問題ない。薬草五百本の依頼は父から村長に伝えてあり、村長は有志を募って採取を進めている。薬草の確保には時間がかかるため、その間に大甕と瓶を仕上げ、続けて釉薬の研究に取りかかる。薬草が揃えば、ポーションの製造を並行して進めるつもりだ。
瓶と大甕の製作は魔力を使って工程を短縮する。配合割合はすでに検討済みで、作成自体は問題ない。ジュアンさんと作業するときは、ろくろや型、治具を併用することになるだろう。製造は順調に進むはずだ。
ただし、ポーション瓶の絵付け工程はまだ課題が残っている。魔法陣を人の手で描けば時間も費用もかかり、生産性が落ちる。貴族向けの磁器皿なら費用を惜しまなくてもよいが、ポーション瓶は違う。できる限り手間を減らす必要がある。
そこで、爺さんが作った版画の型を使うことにした。幸い、意匠部分はまだ彫られていない。そこを追加で掘り起こす。向こうの世界では細かい図柄に銅板転写法が使われていた。銅板に刻んだ模様を薄紙に印刷し、転写してから釉薬に浸す方法だ。こちらでも製本と印刷は進んでおり、商店には用途別の紙が揃っている。試作は可能だ。今回は凸版の版画で試してみる。
ポーション瓶は小さい。転写範囲は魔法陣と意匠だけだ。陣は正確さが重要だが、版画なら問題ない。紙に印刷したインクを素地に移す割合を調整しなければならない。魔力回路と発色を兼ねる金属粉末、魔石、そして定着用のアルカリ成分としてアルテミ草の灰を使う。再利用だ。インクの定着度合いと焼成後の発色を見極めるのが狙いだ。
乳鉢と乳棒を取り出す。乳棒も磁製で、あらかじめ作っておいた。魔法と手作業を併用して素材を粉砕し、少し粘り気のある濃度に調整する。色は濃褐色。版板に塗布して紙に印刷し、線の太さを微調整する。乾燥後、皿に貼り付けた。
魔石を付けて壁に投げつける。壊れることなくバウンドし、不思議な現象と共に魔法陣が発動した。成功だ。蓋と魔導回路はまだ手作業だが、版画方式の治具を作れば解決できるだろう。ガラス釉薬に浸し、魔力で乾燥させて焼成すれば完成する。
試行錯誤を繰り返し、版画に適し、剥がれにくく、発色の良い条件を探る。銅粉末と魔石粉末の割合は1:1を基準に、灰の割合を変えて試験した。
######
――金属粉末と魔石粉末と灰の配合試験――
銅粉末:魔石粉末:灰
a)1:1:1 定着△ 発動〇 灰割合;1/3
b)3:3:1 定着〇 発動〇 灰割合;1/7
c)5:5:1 定着△ 発動〇 灰割合;1/11
d)7:7:1 定着× 発動× 灰割合;1/15
e)9:9:1 定着× 発動× 灰割合;1/19
######
定着しない試作品は発動しなかった。だが、発色は濃褐色から鮮やかな青へと変化した。3:3:1付近に最適な条件があるようだ。定着には全体の1/7ほどの灰が必要らしい。
さらに割合を絞り込み、発動回数も試験に加える。魔石は同じ由来のものを使い、一メートルの高さから落として発動回数を確認した。
######
――金属粉末と魔石粉末と灰の配合試験その2――
銅粉末:魔石粉末:灰 灰割合;1/7
2a)5:7:2 定着〇 発動回17 発色〇
2b)6:6:2 定着〇 発動回17 発色◎
2c)7:5:2 定着〇 発動回20 発色◎
2d)8:4:2 定着〇 発動回17 発色◎
2e)9:3:2 定着〇 発動回11 発色○
######
結果、7:5:2が最も良好だった。魔力と発色を兼ねるため粉末の量が増えたのだろう。割合が大きく崩れると魔力の通りが悪くなる。記録を残し、次の製造に活かす。
封印紙も必要数を製造した。こちらはパラケル爺さん特注の魔導回路用インクを使用する。磁器瓶は破損や規格外を考慮して150個ほど作成した。
続いて大甕用の版画を取り出す。水魔法による乾燥と破損防止の二種の付与を施す。蓋の魔石も同様だ。意匠の追加はないため、裏表二ヶ所に分けて印刷・転写した。数が少ないので、その他の線は手書きで補った。後に線専用の版画を作るつもりだ。ホーミィー村用に十個、城郭都市用に十個、計二十個を完成させ、大甕の作成は終わった。
「もうできたのか。早いな。十個もできるとは上出来だ。これを持って城郭都市に交渉してこよう」
パラケル爺さんは満足そうに大甕を眺めた。明日には都市へ打ち合わせに行くという。
自分は次の準備に取りかかる。
明日からはジュアンとの釉薬研究だ。まずは素焼き用の皿百枚を作成し、研究の土台を整える。陶石はほとんど底をついていた。
代行とはいえ、貴族との繋がりができたのは大きい。自分も大事業の一端を担う役割を与えられた。外出先から戻れば、進捗を確認されることになるだろう。だからこそ、パラケル爺さんから出された課題を一つ一つ整理しておく必要があった。
第一優先は備蓄用の大甕の作成。
第二優先は領主から依頼された備蓄ポーションの製造。
第三は磁器に合う釉薬の開発。
釉薬についてはジュアンさんの準備もあるだろうから、いったん保留にする。まずは大甕と瓶の作成を進める。父が用意してくれた素材を使えば、瓶の製造は問題ない。薬草五百本の依頼は父から村長に伝えてあり、村長は有志を募って採取を進めている。薬草の確保には時間がかかるため、その間に大甕と瓶を仕上げ、続けて釉薬の研究に取りかかる。薬草が揃えば、ポーションの製造を並行して進めるつもりだ。
瓶と大甕の製作は魔力を使って工程を短縮する。配合割合はすでに検討済みで、作成自体は問題ない。ジュアンさんと作業するときは、ろくろや型、治具を併用することになるだろう。製造は順調に進むはずだ。
ただし、ポーション瓶の絵付け工程はまだ課題が残っている。魔法陣を人の手で描けば時間も費用もかかり、生産性が落ちる。貴族向けの磁器皿なら費用を惜しまなくてもよいが、ポーション瓶は違う。できる限り手間を減らす必要がある。
そこで、爺さんが作った版画の型を使うことにした。幸い、意匠部分はまだ彫られていない。そこを追加で掘り起こす。向こうの世界では細かい図柄に銅板転写法が使われていた。銅板に刻んだ模様を薄紙に印刷し、転写してから釉薬に浸す方法だ。こちらでも製本と印刷は進んでおり、商店には用途別の紙が揃っている。試作は可能だ。今回は凸版の版画で試してみる。
ポーション瓶は小さい。転写範囲は魔法陣と意匠だけだ。陣は正確さが重要だが、版画なら問題ない。紙に印刷したインクを素地に移す割合を調整しなければならない。魔力回路と発色を兼ねる金属粉末、魔石、そして定着用のアルカリ成分としてアルテミ草の灰を使う。再利用だ。インクの定着度合いと焼成後の発色を見極めるのが狙いだ。
乳鉢と乳棒を取り出す。乳棒も磁製で、あらかじめ作っておいた。魔法と手作業を併用して素材を粉砕し、少し粘り気のある濃度に調整する。色は濃褐色。版板に塗布して紙に印刷し、線の太さを微調整する。乾燥後、皿に貼り付けた。
魔石を付けて壁に投げつける。壊れることなくバウンドし、不思議な現象と共に魔法陣が発動した。成功だ。蓋と魔導回路はまだ手作業だが、版画方式の治具を作れば解決できるだろう。ガラス釉薬に浸し、魔力で乾燥させて焼成すれば完成する。
試行錯誤を繰り返し、版画に適し、剥がれにくく、発色の良い条件を探る。銅粉末と魔石粉末の割合は1:1を基準に、灰の割合を変えて試験した。
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――金属粉末と魔石粉末と灰の配合試験――
銅粉末:魔石粉末:灰
a)1:1:1 定着△ 発動〇 灰割合;1/3
b)3:3:1 定着〇 発動〇 灰割合;1/7
c)5:5:1 定着△ 発動〇 灰割合;1/11
d)7:7:1 定着× 発動× 灰割合;1/15
e)9:9:1 定着× 発動× 灰割合;1/19
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定着しない試作品は発動しなかった。だが、発色は濃褐色から鮮やかな青へと変化した。3:3:1付近に最適な条件があるようだ。定着には全体の1/7ほどの灰が必要らしい。
さらに割合を絞り込み、発動回数も試験に加える。魔石は同じ由来のものを使い、一メートルの高さから落として発動回数を確認した。
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――金属粉末と魔石粉末と灰の配合試験その2――
銅粉末:魔石粉末:灰 灰割合;1/7
2a)5:7:2 定着〇 発動回17 発色〇
2b)6:6:2 定着〇 発動回17 発色◎
2c)7:5:2 定着〇 発動回20 発色◎
2d)8:4:2 定着〇 発動回17 発色◎
2e)9:3:2 定着〇 発動回11 発色○
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結果、7:5:2が最も良好だった。魔力と発色を兼ねるため粉末の量が増えたのだろう。割合が大きく崩れると魔力の通りが悪くなる。記録を残し、次の製造に活かす。
封印紙も必要数を製造した。こちらはパラケル爺さん特注の魔導回路用インクを使用する。磁器瓶は破損や規格外を考慮して150個ほど作成した。
続いて大甕用の版画を取り出す。水魔法による乾燥と破損防止の二種の付与を施す。蓋の魔石も同様だ。意匠の追加はないため、裏表二ヶ所に分けて印刷・転写した。数が少ないので、その他の線は手書きで補った。後に線専用の版画を作るつもりだ。ホーミィー村用に十個、城郭都市用に十個、計二十個を完成させ、大甕の作成は終わった。
「もうできたのか。早いな。十個もできるとは上出来だ。これを持って城郭都市に交渉してこよう」
パラケル爺さんは満足そうに大甕を眺めた。明日には都市へ打ち合わせに行くという。
自分は次の準備に取りかかる。
明日からはジュアンとの釉薬研究だ。まずは素焼き用の皿百枚を作成し、研究の土台を整える。陶石はほとんど底をついていた。
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