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2C-幹果と油脂
2C-14 屋台と職人勢
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パラケル爺さんと共に、鍛冶屋ディオスさんの工房を訪れた。
今日は商人ギルドからの正式な依頼――クリスプス屋台の作成のためだ。
休憩室では、細工師のクバナさんとディオスさんが湯気の立つ茶を手に、こちらを待っていた。
「おう。お前ら、待たせたな」
「また面倒くさい仕事を持ち込んだな」
「ようやく来たか」
「アゼルも金払いが良かったぞ。前払いで出資してくれた。孫が開発するってことで、ずいぶん乗り気だ。金貨三百枚の仕事だ」
「ほう……十分すぎるな。材料を惜しまず使えるではないか」
今回の屋台は移動型。
ベンベルクの広場でクリスプスの生地を焼き、その場で提供する。
食材の保管はアイテムボックスがあるため、冷蔵・冷凍品の保存も問題ない。
屋台内での保管が一時的で済むのは、こちらの界ならではの強みだ。
商人ギルドが販売しているリヤカーが設計の基本となる。
販売区域の広さは3×5メートル。評議会とギルドの指示で、区域内に収める必要がある。
事前にアゼル爺からリヤカーを受け取っていたのでイメージは浮かんでいた。
「さあ、見せてもらおうか。レッドよ」
「ご存じの通り、スペースは3×5メートル。周囲の屋台を参考に考えています」
「この区域にうまく詰め込む工夫だよな」
「まずは図面を見よう。レッド、出してくれ」
図面には、円形の焼成スペースと隣接するトッピングスペース。
その奥には保冷とディスプレイを兼ねた収納。
屋台下部には一時保冷スペースを設け、ディスプレイを素早く入れ替えられるようにした。
屋根を付け、直射日光を避ける構造。リヤカーには乗り込めないため、路上での作業を前提とした設計だ。
「ポーションの改良を見てきたから、もっとぶっ飛んだ発想を期待したんだがな。一般的すぎる」
「そうだな。つまらん。これでは俺らの仕事のアピールができん」
「娘が喜んで作ったクリスプスも味わったよ。甘いものは好かんが、あれは斬新だった。娘に大いに期待されているのだ。応えねばならん」
「うーん……どうすればよいですかね?」
「もっとあるだろう?やりたいことが。制限しているのではないか?もっと自分を出せ。本当はどうしたかった?」
「商人ギルドのリヤカーを基本に考えていましたが……区域に収まればよいのですね?」
「ああ。一から作れる我々なら、既製品に縛られる必要はない」
「撤収時はどうします? 大型になると運搬が……」
「馬に引かせればよい。問題ない」
「それなら、このような形で……」
自分は紙に、移動販売車をイメージした図面を描き始めた。
車高を低く、生地作成・トッピング・会計の各工程を分け、客の流れを意識した動線を組み込む。
「確か、摩擦の少ない軸も開発していたな。あれも組み合わせよう」
「ほう、見せてみろ。……魔銀か。これだと消耗が激しいだろう? 魔力を込めれば大丈夫? お前ら錬金術師は何でも魔銀だな!」
ディオスさんは笑いながら図面に上書きを始めた。
「俺が鉄できっちり作ってやる。軽量化? もちろんだ。車台は任せろ。区域ギリギリで作る。お前ら三人は内装を考えておけ」
「ディオス、油の制振器も頼む」
「……ばねか。凝った作りだな。部品ごとに鋳型を作ろう」
2×4の車台に、車輪は4つ。車高はできるだけ低く。
「では、上物は我々だな」
「このサイズなら、俺の家の魔導コンロが載るのでは?」
「今回はクリスプス専用です。汎用性は不要。円柱状の専用台をそのまま搭載します」
温度は150~200℃。天板はフライパンサイズ。
「回転機構は魔石がもったいないので、治具で対応します」
魔銀で作ったスプレッダーは、上部のハンドルを回すと下のトンボが回転する仕組み。
慣れるまではこれで十分だろう。
「作業スペースは見えるようにお願いします」
「見えるように……ガラスだな。お前ら、錬金術師の仕事だな」
側面一面をガラス張りにし、下部に開口を設ける。
1×3メートル強の板ガラスを作るため、ピレネ石とマーロ石を取り出し、風と土魔法で石英分を分離・合成。
魔力を大量に消費し、ポーションで補いながら透明度の高いガラスを生み出す。
「また大型のものを作り出したな。車台に乗せると割れやすくないか?」
「木の枠を作り、サイカスの樹液を挟みます。さらに魔導線を埋め込めば、耐衝撃性も確保できます」
「耐火・衝撃吸収の陣を複合させると大きくならないか?」
「単独で構成し、線を交差させないようにします。左右上部にそれぞれの陣の金属板を貼り付けましょう」
銅と魔導インクで線を張り、パラケル爺さんが魔導盤を選び、サイカスの樹液で貼り付ける。
「クバナ、ガラスは完成した。木枠を頼む。樹液を挟むから、少し余裕を持たせてな」
「おう、わかった。そこに置いておけ。次に進んでくれ」
ストック用の保冷箱、トッピング用の保冷箱、専用魔導コンロ――
あらかじめ作っておいたものを出し、サイズを微調整するだけで済んだ。
「よし、お前らはここまででいい。後は任せろ! 良いように組み込んでやる!」
「完成を楽しみにしておけ! あとは俺たちの仕事だ!」
思いのほか、ディオスさんとクバナさん両名の職人としての意気込みはすさまじかった。
事前の試食、娘や奥様の期待もあるのだろう。
張り切りすぎの予感が否定できない。だが、パラケル爺さんの製造仲間だ。信頼していい。
自分は、静かに図面を巻き、深く息を吐いた。
「……さて、あとは任せましたよ」
この屋台が、どんな姿で完成するのか、今から楽しみでならない。
今日は商人ギルドからの正式な依頼――クリスプス屋台の作成のためだ。
休憩室では、細工師のクバナさんとディオスさんが湯気の立つ茶を手に、こちらを待っていた。
「おう。お前ら、待たせたな」
「また面倒くさい仕事を持ち込んだな」
「ようやく来たか」
「アゼルも金払いが良かったぞ。前払いで出資してくれた。孫が開発するってことで、ずいぶん乗り気だ。金貨三百枚の仕事だ」
「ほう……十分すぎるな。材料を惜しまず使えるではないか」
今回の屋台は移動型。
ベンベルクの広場でクリスプスの生地を焼き、その場で提供する。
食材の保管はアイテムボックスがあるため、冷蔵・冷凍品の保存も問題ない。
屋台内での保管が一時的で済むのは、こちらの界ならではの強みだ。
商人ギルドが販売しているリヤカーが設計の基本となる。
販売区域の広さは3×5メートル。評議会とギルドの指示で、区域内に収める必要がある。
事前にアゼル爺からリヤカーを受け取っていたのでイメージは浮かんでいた。
「さあ、見せてもらおうか。レッドよ」
「ご存じの通り、スペースは3×5メートル。周囲の屋台を参考に考えています」
「この区域にうまく詰め込む工夫だよな」
「まずは図面を見よう。レッド、出してくれ」
図面には、円形の焼成スペースと隣接するトッピングスペース。
その奥には保冷とディスプレイを兼ねた収納。
屋台下部には一時保冷スペースを設け、ディスプレイを素早く入れ替えられるようにした。
屋根を付け、直射日光を避ける構造。リヤカーには乗り込めないため、路上での作業を前提とした設計だ。
「ポーションの改良を見てきたから、もっとぶっ飛んだ発想を期待したんだがな。一般的すぎる」
「そうだな。つまらん。これでは俺らの仕事のアピールができん」
「娘が喜んで作ったクリスプスも味わったよ。甘いものは好かんが、あれは斬新だった。娘に大いに期待されているのだ。応えねばならん」
「うーん……どうすればよいですかね?」
「もっとあるだろう?やりたいことが。制限しているのではないか?もっと自分を出せ。本当はどうしたかった?」
「商人ギルドのリヤカーを基本に考えていましたが……区域に収まればよいのですね?」
「ああ。一から作れる我々なら、既製品に縛られる必要はない」
「撤収時はどうします? 大型になると運搬が……」
「馬に引かせればよい。問題ない」
「それなら、このような形で……」
自分は紙に、移動販売車をイメージした図面を描き始めた。
車高を低く、生地作成・トッピング・会計の各工程を分け、客の流れを意識した動線を組み込む。
「確か、摩擦の少ない軸も開発していたな。あれも組み合わせよう」
「ほう、見せてみろ。……魔銀か。これだと消耗が激しいだろう? 魔力を込めれば大丈夫? お前ら錬金術師は何でも魔銀だな!」
ディオスさんは笑いながら図面に上書きを始めた。
「俺が鉄できっちり作ってやる。軽量化? もちろんだ。車台は任せろ。区域ギリギリで作る。お前ら三人は内装を考えておけ」
「ディオス、油の制振器も頼む」
「……ばねか。凝った作りだな。部品ごとに鋳型を作ろう」
2×4の車台に、車輪は4つ。車高はできるだけ低く。
「では、上物は我々だな」
「このサイズなら、俺の家の魔導コンロが載るのでは?」
「今回はクリスプス専用です。汎用性は不要。円柱状の専用台をそのまま搭載します」
温度は150~200℃。天板はフライパンサイズ。
「回転機構は魔石がもったいないので、治具で対応します」
魔銀で作ったスプレッダーは、上部のハンドルを回すと下のトンボが回転する仕組み。
慣れるまではこれで十分だろう。
「作業スペースは見えるようにお願いします」
「見えるように……ガラスだな。お前ら、錬金術師の仕事だな」
側面一面をガラス張りにし、下部に開口を設ける。
1×3メートル強の板ガラスを作るため、ピレネ石とマーロ石を取り出し、風と土魔法で石英分を分離・合成。
魔力を大量に消費し、ポーションで補いながら透明度の高いガラスを生み出す。
「また大型のものを作り出したな。車台に乗せると割れやすくないか?」
「木の枠を作り、サイカスの樹液を挟みます。さらに魔導線を埋め込めば、耐衝撃性も確保できます」
「耐火・衝撃吸収の陣を複合させると大きくならないか?」
「単独で構成し、線を交差させないようにします。左右上部にそれぞれの陣の金属板を貼り付けましょう」
銅と魔導インクで線を張り、パラケル爺さんが魔導盤を選び、サイカスの樹液で貼り付ける。
「クバナ、ガラスは完成した。木枠を頼む。樹液を挟むから、少し余裕を持たせてな」
「おう、わかった。そこに置いておけ。次に進んでくれ」
ストック用の保冷箱、トッピング用の保冷箱、専用魔導コンロ――
あらかじめ作っておいたものを出し、サイズを微調整するだけで済んだ。
「よし、お前らはここまででいい。後は任せろ! 良いように組み込んでやる!」
「完成を楽しみにしておけ! あとは俺たちの仕事だ!」
思いのほか、ディオスさんとクバナさん両名の職人としての意気込みはすさまじかった。
事前の試食、娘や奥様の期待もあるのだろう。
張り切りすぎの予感が否定できない。だが、パラケル爺さんの製造仲間だ。信頼していい。
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