巻き込まれた薬師の日常

白髭

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2D-迷宮と魔具

2D-03 *探索と任務遂行

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 戦闘は、瞬く間に終わった。
 いや、正確には――始まる前に終わっていた。
 エリス様が細剣を抜いた瞬間、空気が変わった。
 風魔法を纏った剣技が空間を裂き、敵の腕を断ち、視界を奪い、気づけば不穏の四人の男たちは地に伏していた。
 我々が盾を構えたのは、ほんの数秒前のことだった。
 この方の実力は、やはり常識の枠に収まるものではない。


「奥まで行くときは御注意ください。素行の悪い4名が屯っています」
 妖精達の報告の通りレックス、レグン、ラブランの3名とすれ違った。2層目の一番奥の広場に到着すると、彼らの忠告の通り後ろから襲撃されたのだ。


 ジョゼと共に、素早く男たちを拘束する。
 息子たちも駆け寄り、手際よく縄を締める。
 エリス様は、淡々とポーションの手配を指示し、傷の手当てを命じる。
 容赦はないが、無益な殺傷もない。
 それが、この方の“戦い方”なのだろう。

「くそ……近くで見ると、エルフの女か。名前はエリス……もしや、戦女神か」
 男の呻きに、エリス様は微笑を浮かべる。
「そうよ。ここの管理者も兼ねているわ。覚えておいてね」
「我々もいる。あとで、ゆっくり話を聞かせてもらおう」
 私は静かに告げる。
 この場での情報は、後ほど整理すればよい。
 今は、任務の遂行が優先だ。

「手前らは何者だ?」
「やっぱり他領の人間だな。領の人間なら、この装備を見れば分かるはずだ。我々はパール家の近衛騎士だ。代理として、迷宮内捜査の資格を持つ。観察させてもらったよ」
「ちっ……運が悪いぜ」
 エリス様が拘束の腕輪を差し出す。
「ミハエル。魔法を使われると面倒だわ。念を入れて」
「はっ、了解しました」

 回収作業は順調に進んでいた。
 ベーガとルンフが、要素板を丁寧に拾い集める。
 コカルスは、エリス様と共に大型魔導具の構造を確認していた。
 だが、その魔導具は、想像以上に巨大だった。
 通常のアイテムボックスでは、到底収まりきらない。
「流石に、この量は無理でしょう。ここから、ここまでですよ?私でも無理です」
 コカルスが困惑気味に言う。
 だが、エリス様は、さらりと答えた。
「何を言っているのかしら?私が収納するのよ。範囲はそこね」

 魔導具は床に金属で固定されていた。
 エリス様は剣と魔法を併用し、強引に剥がし始める。
 コカルスが慌てて懇願する。
「く、くれぐれも、慎重にお願いします!」
「わかっているわよ。中身を壊さないように、ね」
 最後の金具を外し、魔力を通す。
 一瞬で、空間にあった巨大な魔導具が消えた。
 アイテムボックスに収納されたのだ。

 その光景に、息子たちも、敵の男たちも、目を見開いた。
 彼らは、エリス様の魔力量を知らない。
 いや、知っていたとしても、理解はできないだろう。
「この量が入るとは……どれほどの魔力量なのですか!」
「化け物め……こんな相手に、俺らは喧嘩を売ってしまったのか」
「あら?お褒めの言葉をありがとう。反省と後悔は、強制労働で頼むわね」

 エリス様は、いつも通りだった。
 この方にとって、これが“日常”なのだろう。
 我々にとっては、非日常であっても。
 私は、静かに盾を背に戻し、周囲を見渡す。
 任務は、まだ終わっていない。
 だが、確実に一歩、進んだ。

*****

『迷宮』。過去の文明の遺跡
 教会の初等教育で、魔素の流れを教育されます。地下から地上へ、さらに大気へ。
 学院では、魔素の吹き出しが多いところを地脈、龍穴として周知しています。
 遺跡は、そのような魔素が濃い所が多いです。学院は、土地の特性を見越して都市を建設したのではないか?という仮説を立てています。この都市を立てた過去の人々が流れる魔素を利用して、魔導具、さらに都市を動かしていたのではないか、と学院では推測しています。
 魔の森の迷宮層は現在見つかっているだけで2層構造ということが分かっています。
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