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幕間
幕間5 精油香る高級石鹸
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「草木灰の溶液は[鹸化]の力が弱い。だから今回入手したカルサイトの力を借ります」
「弱いって、どういうこと?」
ルプラが身を乗り出してきた。興味津々といった様子だ。
「反応が遅いんだ。遅いと脂が残ってしまう。カルサイトを加工して、草木灰の力を強めるんだよ」
「じゃあ、その赤いのは関係あるの?」
「草木灰の原料を調べてみたら、鎮守の森に良い低木があったんだ。海藻灰に近いものが作れる。改良したくなったのも、この低木のおかげだよ」
【*シナンジュ。低木。塩害・乾燥耐性。繁殖力強。錬金材料[赤色素・塩含有]】
赤い色が特徴の低木、シナンジュ。その色素は[酒精温度計]に用いた。灰にするとその赤は消え、別の性質が現れる。思いがけず二次利用ができたのだ。
【*シジュ灰材。錬金材料[ソジウム含有]】
「ほう、シナンジュか。アカシュ渓谷の海側に生えている低木だな」
「よく見つけたわね。鎮守の森でも自生していたわ。里では灰を汚れ落としに使っていた」
自分は紙に工程を書き、パラケル師らに説明した。
######
――草木灰での灰剤の作成――
1. 粉末カルサイトを焼成する。
2.水に溶かし、カルサイト溶液①を得る。
3. 草木灰液②を作る。
4. ①と②を混ぜ、灰液③を得る。これを鹸化に利用。
######
「カルサイトを砕いて火魔法で焼成し、水に溶かして上澄み①を得る。草木灰を焼いて②を作り、①と②を混ぜれば灰液③ができる。これを鹸化に利用する」
草木灰で作る石鹸は柔らかく、カリウム石鹸となる。水を抱え込みやすく、乾燥しても固まりにくい。一方、海藻灰を使えばナトリウム石鹸となり固形化するが、海は遠い。そこでシナンジュの出番だ。シジュ灰材を使用することで、ナトリウム石鹸へと変わるのだ。
作業には危険が伴う。粘膜や皮膚を傷める恐れがある。だが製薬スキルでアイテムボックスを改変できることに気づいた。
【*ドラフトチャンバ。アイテムボックス内を可視化し、作業空間として利用可能。暴露小。各スキル併用可】
黒い遮蔽空間が白く明るい作業領域に変わった。
「ほう、ドラフトチャンバか。錬金術スキルの段が上がったな。ワシも持っている」
「へぇ、一般的なんですね」
「いやいや! パラケル師を基準にするな! 自分は魔導師だが持っていない!」
「そうよ。常識が崩れるわ」
「……すまん。小僧、このスキルは一般的ではない。注意せよ」
自分はドラフトチャンバ内で操作を始めた。火・水・光魔法を併用し、反応を促す。
$$$$$$
――草木灰での反応――
a)粉末カルサイトを焼成する。
CaCO3 → CaO + CO2↑
b)これを水と反応させ、溶液①とする。
CaO +H2O → Ca(OH)2
c)①と草木灰液②を合わせて、灰液を作る。
Ca(OH)2 + K2CO3(草木灰液②) → 2KOH +CaCO3 ↓(沈殿)
できた溶液の鑑定結果を記す。
【ポタシウム液。扱いに注意を要する。錬金材料】
$$$$$$
$$$$$$
――シジュ灰材での反応――
a)粉末カルサイトを焼成する。
CaCO3 → CaO + CO2↑
b)これを水と反応させ、溶液①とする。
CaO +H2O → Ca(OH)2
c)①とシジュ灰材液②を合わせて、灰液を作る。
Ca(OH)2 + Na2CO3(シジュ灰材液②) → 2NaOH +CaCO3 ↓(沈殿)
できた溶液の鑑定結果を記す。
【ソジウム液。扱いに注意を要する。錬金材料】
$$$$$$
白い沈殿は炭酸カルシウム。透明な上澄みはソジウム液。これに油脂を反応させる。
「原料はトリニタ脂と精製ランナか?」
「はい。これにソジウム液を加え、加熱して石鹸にします」
反応が進み、白濁する。続けて[鹸化塩析法]を行う。塩を加え、水を石鹸素地から分離させる。数回繰り返し、純度を高めた。
【ランナ石鹸素地。特級品。ソジウム石鹸】
【トリニタ石鹸素地。一級品。ソジウム石鹸】
ランナは精製度が高く良質。トリニタは不純物が多く、初期の塩析が必要だ。
「本当に固形になった!」
「材料を工夫すれば、鹸化も強化できるのか。面白い」
ルプラが目を輝かせる。
「この石鹸素地に精油を混ぜ、練り上げます」
土魔法で形を整えると、香り高い固形石鹸が完成した。
パラケル師とエリスさんが手を洗い、泡立ちに驚く。
「ほう! これは売れるぞ。アゼルに通信してカルサイトを調達だ!」
「匂いも消えて、精油の香りが心地よいわ。従来の石鹸とは大違い!」
一方でコカルスは震えていた。
「せ、精油?! それもローサ! 超高級品ですよ! 貴族用嗜好品を惜しみなく……!」
「ここにも貴族がいるでしょう。二人も」
「そうだ。ここで作れば安価だ。問題ない」
慌てふためくコカルスが、むしろ普通なのだと自分は再認識した。
石鹸は完成。今日の作業は終わった。皆が解散した後、自分は作業部屋に残る。
――次は難敵。石鹸廃液からの[グリセロール]抽出。ここからが本当の挑戦だ。
「弱いって、どういうこと?」
ルプラが身を乗り出してきた。興味津々といった様子だ。
「反応が遅いんだ。遅いと脂が残ってしまう。カルサイトを加工して、草木灰の力を強めるんだよ」
「じゃあ、その赤いのは関係あるの?」
「草木灰の原料を調べてみたら、鎮守の森に良い低木があったんだ。海藻灰に近いものが作れる。改良したくなったのも、この低木のおかげだよ」
【*シナンジュ。低木。塩害・乾燥耐性。繁殖力強。錬金材料[赤色素・塩含有]】
赤い色が特徴の低木、シナンジュ。その色素は[酒精温度計]に用いた。灰にするとその赤は消え、別の性質が現れる。思いがけず二次利用ができたのだ。
【*シジュ灰材。錬金材料[ソジウム含有]】
「ほう、シナンジュか。アカシュ渓谷の海側に生えている低木だな」
「よく見つけたわね。鎮守の森でも自生していたわ。里では灰を汚れ落としに使っていた」
自分は紙に工程を書き、パラケル師らに説明した。
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――草木灰での灰剤の作成――
1. 粉末カルサイトを焼成する。
2.水に溶かし、カルサイト溶液①を得る。
3. 草木灰液②を作る。
4. ①と②を混ぜ、灰液③を得る。これを鹸化に利用。
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「カルサイトを砕いて火魔法で焼成し、水に溶かして上澄み①を得る。草木灰を焼いて②を作り、①と②を混ぜれば灰液③ができる。これを鹸化に利用する」
草木灰で作る石鹸は柔らかく、カリウム石鹸となる。水を抱え込みやすく、乾燥しても固まりにくい。一方、海藻灰を使えばナトリウム石鹸となり固形化するが、海は遠い。そこでシナンジュの出番だ。シジュ灰材を使用することで、ナトリウム石鹸へと変わるのだ。
作業には危険が伴う。粘膜や皮膚を傷める恐れがある。だが製薬スキルでアイテムボックスを改変できることに気づいた。
【*ドラフトチャンバ。アイテムボックス内を可視化し、作業空間として利用可能。暴露小。各スキル併用可】
黒い遮蔽空間が白く明るい作業領域に変わった。
「ほう、ドラフトチャンバか。錬金術スキルの段が上がったな。ワシも持っている」
「へぇ、一般的なんですね」
「いやいや! パラケル師を基準にするな! 自分は魔導師だが持っていない!」
「そうよ。常識が崩れるわ」
「……すまん。小僧、このスキルは一般的ではない。注意せよ」
自分はドラフトチャンバ内で操作を始めた。火・水・光魔法を併用し、反応を促す。
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――草木灰での反応――
a)粉末カルサイトを焼成する。
CaCO3 → CaO + CO2↑
b)これを水と反応させ、溶液①とする。
CaO +H2O → Ca(OH)2
c)①と草木灰液②を合わせて、灰液を作る。
Ca(OH)2 + K2CO3(草木灰液②) → 2KOH +CaCO3 ↓(沈殿)
できた溶液の鑑定結果を記す。
【ポタシウム液。扱いに注意を要する。錬金材料】
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――シジュ灰材での反応――
a)粉末カルサイトを焼成する。
CaCO3 → CaO + CO2↑
b)これを水と反応させ、溶液①とする。
CaO +H2O → Ca(OH)2
c)①とシジュ灰材液②を合わせて、灰液を作る。
Ca(OH)2 + Na2CO3(シジュ灰材液②) → 2NaOH +CaCO3 ↓(沈殿)
できた溶液の鑑定結果を記す。
【ソジウム液。扱いに注意を要する。錬金材料】
$$$$$$
白い沈殿は炭酸カルシウム。透明な上澄みはソジウム液。これに油脂を反応させる。
「原料はトリニタ脂と精製ランナか?」
「はい。これにソジウム液を加え、加熱して石鹸にします」
反応が進み、白濁する。続けて[鹸化塩析法]を行う。塩を加え、水を石鹸素地から分離させる。数回繰り返し、純度を高めた。
【ランナ石鹸素地。特級品。ソジウム石鹸】
【トリニタ石鹸素地。一級品。ソジウム石鹸】
ランナは精製度が高く良質。トリニタは不純物が多く、初期の塩析が必要だ。
「本当に固形になった!」
「材料を工夫すれば、鹸化も強化できるのか。面白い」
ルプラが目を輝かせる。
「この石鹸素地に精油を混ぜ、練り上げます」
土魔法で形を整えると、香り高い固形石鹸が完成した。
パラケル師とエリスさんが手を洗い、泡立ちに驚く。
「ほう! これは売れるぞ。アゼルに通信してカルサイトを調達だ!」
「匂いも消えて、精油の香りが心地よいわ。従来の石鹸とは大違い!」
一方でコカルスは震えていた。
「せ、精油?! それもローサ! 超高級品ですよ! 貴族用嗜好品を惜しみなく……!」
「ここにも貴族がいるでしょう。二人も」
「そうだ。ここで作れば安価だ。問題ない」
慌てふためくコカルスが、むしろ普通なのだと自分は再認識した。
石鹸は完成。今日の作業は終わった。皆が解散した後、自分は作業部屋に残る。
――次は難敵。石鹸廃液からの[グリセロール]抽出。ここからが本当の挑戦だ。
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