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プロローグ:はじまりの雨
プロローグ:お天気雨にはご注意を
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「わ、お天気雨だ」
大学から家までの近道をしようと神社の境内を歩いていると、ポツポツと空から雫が降ってくる。
あまりにも辺りが明るかったせいで一瞬雨だとは認識出来なかった。
“雨に濡れると髪の毛が絡まるんだよね”
少し明るい茶色へ染めた髪。
元からくせっ毛のこの髪は、湿気ですぐにボリュームを増し髪同士が絡まってしまう。
ほどくだけでギシギシと傷むため、雨自体はあまり強くはなかったが濡れることを嫌悪し石畳を小走りで駆けた――時だった。
「ひゃっ!?」
濡れた石畳で靴が滑り、私は思い切り前のめりに転んでしまって――……
――シャラン、シャランと音がする。
“え、なに?”
さっきまでの空気とは違い、どこか張りつめた……まさに凛とした雰囲気に包まれた境内。
さっきより明るく、だがさっきより空気が張りつめて思わずごくりと唾を呑んだ私の目の前に現れたのは。
「花嫁行列……?」
ふと、思い出す。
“そうだ、お天気雨って確か別称があったんだ”
白無垢の花嫁を囲うように沢山の人たちが傘も差さずに列を成す。
そんな彼らには、何故かふわりとした尻尾が見え隠れしていた。
さっきまでと同じ場所、同じ景色。
けれどさっきとは明らかに変わってしまったこの光景と雰囲気から、決して同じ場所とは思えない。
そんな行列の中の一人が口を開くと、ギラリとした牙と言えそうなほどの八重歯が見えた。
「おや、紛れ込んだのかね。珍しい」
少し八重歯が鋭く見えるが、ちゃんと見慣れた人間の顔。
けれど人にはない大きな三角の獣耳。
「――狐の、嫁入り……?」
現実にはあり得ないと思いつつも何故かそうだと確信した誰に伝えるでもないそんな言葉が、私の口から溢れ落ちたのだった。
大学から家までの近道をしようと神社の境内を歩いていると、ポツポツと空から雫が降ってくる。
あまりにも辺りが明るかったせいで一瞬雨だとは認識出来なかった。
“雨に濡れると髪の毛が絡まるんだよね”
少し明るい茶色へ染めた髪。
元からくせっ毛のこの髪は、湿気ですぐにボリュームを増し髪同士が絡まってしまう。
ほどくだけでギシギシと傷むため、雨自体はあまり強くはなかったが濡れることを嫌悪し石畳を小走りで駆けた――時だった。
「ひゃっ!?」
濡れた石畳で靴が滑り、私は思い切り前のめりに転んでしまって――……
――シャラン、シャランと音がする。
“え、なに?”
さっきまでの空気とは違い、どこか張りつめた……まさに凛とした雰囲気に包まれた境内。
さっきより明るく、だがさっきより空気が張りつめて思わずごくりと唾を呑んだ私の目の前に現れたのは。
「花嫁行列……?」
ふと、思い出す。
“そうだ、お天気雨って確か別称があったんだ”
白無垢の花嫁を囲うように沢山の人たちが傘も差さずに列を成す。
そんな彼らには、何故かふわりとした尻尾が見え隠れしていた。
さっきまでと同じ場所、同じ景色。
けれどさっきとは明らかに変わってしまったこの光景と雰囲気から、決して同じ場所とは思えない。
そんな行列の中の一人が口を開くと、ギラリとした牙と言えそうなほどの八重歯が見えた。
「おや、紛れ込んだのかね。珍しい」
少し八重歯が鋭く見えるが、ちゃんと見慣れた人間の顔。
けれど人にはない大きな三角の獣耳。
「――狐の、嫁入り……?」
現実にはあり得ないと思いつつも何故かそうだと確信した誰に伝えるでもないそんな言葉が、私の口から溢れ落ちたのだった。
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